福井地方裁判所(樋口英明裁判長)は14日午 後、地元住民らが関西電力高浜原子力発電所3、4号機の運転差し止め を求めた仮処分の申請で、住民側の主張を認める決定を下した。

原告の弁護団代表(河合弘之弁護士と海渡雄一弁護士)がウェブサ イト上に掲載した決定文書要旨によると、他の原発でも2005年以降4つ の原発で5回、想定を上回る地震動が測定されており、福井地裁は関西 電力が高浜原発で想定している地震動の規模を信頼することはできない と指摘。

さらに、原子力規制委員会の新規制基準が「緩やかにすぎ」、基準 に適合しても「原発の安全性は確保されていない」ことから合理性を欠 いていると指摘。事故が起きれば原告が「取り返しのつかない損害を被 る」恐れがあると、決定判断の根拠について説明した。

周辺住民9人で構成する原告団は14年12月、高浜原発3、4号機の 再稼働が切迫しているとして、運転差し止めの仮処分を申し立ててい た。高浜原発3、4号機は今年2月に規制委から新規制基準への適合を 認められており、関電は11月の再稼働を目指していた。

関西電力は福井地裁の決定について「当社の主張を理解いただけ ず、誠に遺憾」との見解を文書で発表。「速やかに」不服を申し立て て、仮処分決定の取り消しを目指して両機の安全性立証に全力を尽くす 考えを示しており、主張が認められるまでは再稼働できないことから計 画していた稼働時期が遅れる可能性が生じている。

2例目の判断

東京電力の福島第一原発事故以降、裁判所が原発の運転の再開を認 めない事例は2例目。樋口裁判長は昨年5月、関電大飯原発3、4号機 の再稼働を認めない判決を出していた。

住民の弁護団代表は決定後に声明文を発表。昨年5月の判決でも明 らかになっていたにも関わらず、「この判決を無視して国と電力会社が 原発の再稼働を進めようとしたことは、露骨な司法軽視」だとし、「三 権分立という日本の統治制度の根幹を揺るがしかねない」と主張。「国 と電力会社は、今度こそ司法の判断を厳粛に受け止めるべき」との見解 を示した。

弁護団共同代表の1人河合弘之弁護士は会見で、新規制基準を「設 定し直しなさいというのが裁判所のメッセージ」だとし、規制委と原子 力規制庁に対し、15日昼までに新規制基準の作り直しと安全審査の停止 を申し入れる考えを明らかにした。

再稼働見通し不透明

大和証券の西川周作アナリストは、11月の両機の再稼働可否につい て、「非常に見通しが立ちにくい」と述べた。同社が申請している再値 上げが政府に認められれば、今期(16年3月期)については高浜原発が 全く動かなかなくても、「大きく利益を出すことは難しいが、再値上げ の効果で赤字を脱却できる可能性が高い」と指摘した。

SMBC日興証券の塩田英俊シニアアナリストは今期の再稼働が厳 しくなり、配当などに影響が出るとの見方を示した。今回の福井地裁の 決定は、「ほかの判決には影響は及ばない」とし、原子力規制委員会が 安全性を認めた原発を再稼働していくという政府の方針が大きく変わる ことはないとの見方を示した。

菅義偉官房長官は14日午後の会見で、「独立した原子力規制委員会 が十分に時間をかけて世界で最も厳しいと言われる新基準に適合するか どうかという判断をした。政府としてはそれを尊重して再稼働を進めて いくという方針に変わりはない」と述べた。さらに、関電の今後の対応 を注視する考えを明らかにした。

脱原発弁護団全国連絡会によると、全国で係争中の原発稼働関連の 裁判は少なくとも28件ある。九州電力川内原発1、2号機に対する周辺 住民の再稼働差し止めの仮処分申し立ても、今月22日に鹿児島地裁で決 定を控えている。

--取材協力:高橋舞子.

最新の情報は、ブルームバーグ端末にて提供中 LEARN MORE