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【クレジット市場】黒田目標あと2-3年、価格ギャップ鍵-渡辺教授

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日本銀行の黒田東彦総裁が目指す2%の物価 目標はあと2-3年で達成。消費者物価の実証分析で知られる東京大学 大学院の渡辺努教授は、その鍵を本来あるべき水準と高止まりした価格 とのギャップ縮小にあるとみている。

全国消費者物価指数(生鮮食品を除いたコアCPI)の伸び率は2 月まで7カ月連続で鈍化。10年物の固定利付国債と物価連動債の利回り 格差(ブレークイーブンレート、BEI)で示す予想インフレ率は1% 前後と日銀の物価目標の約半分にとどまる。

渡辺教授によると、日銀が異次元緩和を2年続けても物価の上昇が 鈍いのは、消費増税や原油安の影響もあるが、1995年からのデフレで蓄 積した価格ギャップが原因。企業はバブル崩壊後も大がかりな賃下げや 解雇が難しかったため、値下げに消極的だった。価格ギャップを正確に 計測することは困難だが、「乖離(かいり)は1-2%のオーダーでは なく、解消はそれほど簡単ではない」と言う。

同時に渡辺教授は、価格ギャップは異次元緩和によって「それなり に埋まってきている」とも指摘。消費者物価が上昇する中で「予想イン フレ率が持続的に2-3%にアンカーされるには、あと2-3年はかか る」と読む。「金融政策では価格ギャップのほうが需給ギャップより重 要」であり、「解消するまで辛抱強く待つしかない」と語る。

渡辺教授は全国約300店舗のスーパーマーケットが取り扱う約35万 点の販売データで毎日算出する東大日次物価指数プロジェクトの代表も 務める。20日のインタビューでは価格ギャップの解消状況を検証するに は、総務省の消費者物価指数を構成する600近い品目ごとの上昇率につ いて「分布図の変化が非常に重要だ」と語った。

インフレ期待を叩き込む

渡辺教授の分析によると、消費者物価の内訳で上昇率がゼロ%近傍 の品目は安倍晋三内閣の発足時と昨年3月でほぼ変わらず、全体の5割 超に上る。「昔は20%程度だったが、90年代後半に急増。マネタリーの コントロールに失敗した」と指摘。「人々の脳に『ゼロ近傍』が染み込 んで、据え置きがある種のデフォルトになってしまった」ため、「よほ どの事情がないと値段は上がらない」と述べた。

品目別の分布図は「人々の相場観を反映しており、一番良いのは2 -3%辺りが最も多くなることだ」と言う。そのためには「ゼロ近傍予 想の人々の頭に物価は上がるんだというインフレ期待を叩き込んでいく ことが重要」で、低金利で実体経済を刺激する余地が乏しい中では「期 待の上昇が先に来ないといけない」と語った。

日銀は2%の物価目標を達成するためマネタリーベースを積み増す 「量的・質的金融緩和」を13年4月に導入した。昨年10月末の追加緩和 では、増加ペースを従来の年60兆-70兆円から約80兆円に高めた。それ でも、全国コアCPIは2月に前年比2%の上昇にとどまり、昨年4月 の消費増税の影響を除くと伸び率ゼロの状態だ。

足元では原油安に加え、円安進行も一服。日銀は15年度を中心とす る期間に2%程度に達する可能性が高いとの見解を堅持している。一方 、ブルームバーグが集計したCPIの市場予測では、今年は0.9%、16 年は1.25%と日銀の目標達成には時間がかかるとみられており、追加緩 和に関しても大半が10月末までの実施を予想している。

ドイツ証券の山下周チーフ金利ストラテジストは、「日本では1% のインフレならともかく、2%を安定的に達成するのは不可能だ」とみ る。「モノの値段はグローバリゼーションを背景に世界的に簡単には上 がらない。人を使ったサービス分野で約2割を占める家賃は米国とは違 って上がらない」と指摘。「残りの3割で全体を2%押し上げるには毎 年6.6%も上がらないといけない」と説明する。

日本特殊論くみせず

「日本特殊論のような考えにはくみしない」。渡辺教授は日本が抱 える物価問題について、「構造問題が主なのか、インフレ期待が低すぎ るのか。ほぼ後者で説明が付くというのが結論だ」と述べ、リーマンシ ョック後の米国も不況の長さこそ日本より短かったが、「同じロジック だ」と続けた。価格の硬直性についても、日本は比較的柔軟な米国と値 下げに消極的な欧州の中間だと説明した。

コアCPIは日銀による量的・質的緩和が始まった13年4月にマイ ナス0.4%だったが、消費税率引き上げの翌月に当たる昨年5月には事 実上1.4%程度と08年10月以来の水準に上昇。足元まで2年近くプラス 圏を維持している。

原田泰日銀審議委員は26日の就任会見で「2%というコミットが重 要」だが、物価目標を2年で達成できない原因が原油安なら「非常に大 きな問題とするべきではないのではないか」と発言。追加緩和は「物価 が上がらず、人々のデフレマインドがさらに強くなる」場合には必要だ との見解を示した。

債券ファンドを運用する米パシフィック・インベストメント・マネ ジメント(PIMCO)は27日、アジア太平洋地域の経済見通しを公表 した。ピムコジャパンのポートフォリオマネジメント責任者、正直知哉 氏は日本の消費者物価は円安の押し上げ効果もあり、来春までに1%程 度に回復するが2%には届かないと予想。日銀は量的・質的緩和を少な くとも続けるし、追加緩和もあり得るとした。

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