銀座に世界のカクテル愛好家集う-客も知らない望みの酒を提供

銀座にある何の変哲もないオフィ スビル。そのビルの4階にあるバーにやって来たオーストラリア人のバ ーテンダーはドア脇にある看板に触れ、「ついにここに来たんだ」と感 慨深げにつぶやいた。

「バー ハイ・ファイブ」を見つけるのは少しばかり難しい。だが 秘密の場所ではない。毎晩、世界中からカクテル愛好家が訪れる。世界 のベストバーの1つとして選ばれることもたびたびだ。取材での東京滞 在を機に、その理由を知るために私も訪れてみることにした。

高い評価の理由がマスターの上野秀嗣氏であることは明らかだ。上 野氏は銀座にある「スタア・バー」で働いていたときにその名を知られ るようになった。客が店内に入ると上野氏はメニューを渡す代わりに好 みを知るため幾つか質問を投げ掛ける。スイートかドライか、ウイスキ ーか日本酒か、トールかショートか。上野氏もしくはヘッドバーテンダ ーの倉上香里氏がいったん顧客の好みをつかめば、客自身も知らなかっ たお望みのカクテルを正確に作ってくれる。

1杯ごとに2人は私の好みをつかみ、私にふさわしいカクテルを提 供してくれた。その晩、たまたま写真に収めたカクテルはよく覚えてい る。ニッカウヰスキーの北海道の蒸留所で生まれたスモーキーな10年物 のシングルモルトをグリーンティーリキュールと合わせ、上野氏自らが 緑茶の苦みを加えたものだ。日本のウイスキーがベースで、フルーツな しのドライカクテルというのが、私の注文だった。氷が輝くこのカクテ ルは美しかった。上野氏が手で削る氷の美しさは有名で、倉上氏もその 技をマスターしている。

ハイ・ファイブの魅力は、カクテルの質の高さだけではない。訪れ た晩、客同士のおしゃべりの背後にはジャズとバグパイプの音楽が流れ ていた。その日の遅い時間には、マスターを慕う国際色豊かな目を輝か せた親しげなバーテンダーのグループでいっぱいになった。彼らは氷の 形や温度について非常に詳しい質問をし、上野氏が洗練された動きをす るたびに敬意をもって何度もうなずいていた。大きな黒いメガネをかけ た上野氏は、パリッとした白いシャツにサスペンダーをまとい、全てを 上品にこなしていた。

2人のごく若い日本人ビジネスマンが楽しそうにグラスを傾けてい るのに気付いた。上野、倉上両氏と言葉を交わす以外、さほど話もしな い。2人は両氏をよく知っているようで、たまたま立ち寄ったのではな いことが分かった。常連客で毎週のようにこの店に足を運んでいるの だ。それだけのことだが、こんなにもうらやましいと思ったことはな い。(テジャル・ラオ)

*T

バー ハイ・ファイブ 104-0061

東京都中央区銀座7丁目2-14 第26ポールスタービル4階 予約:電話 03-3571-5815  もしくは barhighfive.com.

(ラオ氏はブルームバーグ向けに記事を執筆するニューヨークのレ ストラン批評家です。ツイッターは@tejalrao、インスタグラム は@tejalra、連絡先はtrao9@bloomberg.net.です)

原題:High Five, You Found One of the World’s Best Bars in a Tokyo Office Tower

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