【クレジット市場】最優秀エコノミストは言う、日銀に追加緩和不要

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市場関係者からの評価が最も高いエコノミス トは大方の予想に反し、日本銀行の黒田東彦総裁はもはや追加緩和する 必要はないと言う。

BNPパリバ証券の河野龍太郎チーフエコノミストは、原油安は物 価を押し下げるが景気には追い風であり、安倍晋三内閣は今や円相場の 安定を望んでいると説く。河野氏は、日経ヴェリタスが毎春実施する人 気エコノミスト調査で3年連続首位、過去7年間で6回も1位に選ばれ た。2012年には日銀審議委員の候補にも指名された。

最近のブルームバーグ・ニュースの調査では、エコノミスト33人中 26人が10月末までの追加緩和を予想した。金融取引を仲介するメイタン ・トラディションによると、将来の物価見通しを映すインフレスワップ の10年物金利は今週に入り0.74%に低下。異次元緩和が導入される約2 年前の水準に逆戻りしており、追加緩和予想の背景になっている。

河野氏は「インフレ率は4月にもマイナスに転じる見通しだが、原 油安は輸入国である日本には大規模な減税と同じ景気浮揚効果がある」 と指摘。「さらなる円安進行は経済・社会への悪影響が大きいと、官邸 も理解している」と読む。「追加緩和はないだろうし、すべきでない」 と言い、現行の国債買い入れで「金利は十分に低下していく」と語っ た。

円安倒産が急増

黒田総裁は昨年10月末の追加緩和時に消費増税後の景気停滞と原油 安を「デフレマインドの転換が遅延するリスク」の主因に挙げた。だが 先週の会見では、原油安は経済にプラスだと発言したほか、物価目標の 達成時期に多少影響を与える可能性に言及した。甘利明経済再生相は今 週、円安や円高の行き過ぎは歓迎しないと表明。帝国データバンクの調 査によると、円安の影響で倒産した企業は14年に前年の2.7倍に当たる 345件に膨らんだ。

ニューヨーク原油先物相場は29日に一時1バレル=43.58ドルと昨 年6月の高値から約6割下落した。円相場は先月8日に約7年ぶりの安 値1ドル=121円85銭を付け、足元では118円前後で推移している。全国 平均のレギュラーガソリン小売価格は26日時点で1リットル=136円20 銭と27週連続で下げ、約4年ぶりの安値を付けた。

日銀が注視する全国消費者物価指数(生鮮食品を除いたコア CPI)は昨年12月に前年比2.5%上昇と5カ月連続で鈍化。4月に実 施され た消費増税の影響を除くと0.5%程度で、物価目標の4分の1程度 だ。10年物の固定利付国債と物価連動債の利回り格差(ブレークイーブ ンレート、BEI)が示す市場の予想インフレ率は0.7%台と、原油高 だっ た昨年6月に付けた高値1.395%を大きく下回っている。

16年度には2.6%

2%の物価目標を2年程度で達成するために日銀がマネタリーベー スを積み増す「量的・質的金融緩和」を導入したのは13年4月。それか ら1年半後には残高増のペースを従来の年60兆-70兆円から約80兆円に 高める追加緩和が実施された。

金融市場への資金供給手段である長期国債買い入れ額は、政府の15 年度市中発行額152.6兆円に対し、年換算で最大9割超にも及ぶ計算と なり、市場金利を下げる大きな圧力となっている。

国庫短期証券(TB)の利回りは昨年9月、流通市場で初のマイナ ス圏に突入。先月の2年債に続き、今月に入り5年債もマイナス金利を 付けたほか、新発10年債利回りが0.195%と過去最低を更新し、20年債 は一時1%を割り込んだ。

河野氏は、巨額の国債買い入れは利回り抑制とマイナスの実質金利 で公的債務の圧縮を図る「金融抑圧」を続けるのにも「十分過ぎるほど の規模だ」と指摘。日本経済はすでに完全雇用の領域に入っており、コ アCPIが15年度の0.7%から16年度には物価目標を上回る2.6%に達す ると見込む。

甘利再生相の理解

足元までの景気停滞について、河野氏は「12年末に国内総生産(G DP)の2%程度あったスラック(需要不足)が安倍内閣の景気刺激策 によって1年間でほぼ解消し、約0.3%の潜在成長率並みにしか成長で きなくなった」と分析。「消費増税と円安が家計から実質購買力を奪っ たが、原油安と円安休止の景気押し上げ効果がこれから表れてくる」と 語った。

米連邦公開市場委員会(FOMC)は28日公表した声明で、景気・ 雇用判断を引き上げ、エネルギー安は家計の購買力を押し上げるとの見 方を示した。金融当局が注視する個人消費支出(PCE)価格指数は31 カ月連続で目標の2%を下回っているが、声明はインフレ率の鈍化は一 時的で「中期的に2%に向けて徐々に上昇する」とした。

甘利再生相は9日、原油安は日本経済にはプラスだが物価の下げ要 因にもなると発言。日銀が物価予想を見直す1週間前の13日には、15年 度中の目標達成は難しいとの見解を示した。27日には物価目標について 「政府も日銀も厳格な期限にコミットしているわけではない」と言明。 原油安を考慮し、中心的な見通しから幅を持って見るべきだと語った。 為替については限りない円安、円高はともに適切ではないと述べた。

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