東京商品取引所の江崎格社長は、2016年4月 に予定されている電力小売りの全面自由化をにらみ、電力先物に加えて 発電燃料となる液化天然ガス(LNG)や石炭の先物も上場させたい考 えを明らかにした。燃料と電力の先物を上場することで、電力の小売り 事業者に発電事業の利ざやを固定化する機会を提供する。

28日にブルームバーグとのインタビューで述べた。江崎社長は「電 力事業では燃料価格と販売価格との利ざやが一番問題になる。両方を手 当てすることで、利ざやをある程度安定させたいというニーズが当然出 てくる」と指摘。「電力の先物だけでなくて燃料になるLNGや石炭な ども上場させて2-3年のうちに総合エネルギー市場にしたい」と述べ た。

16年をめどに家庭向けも含めた電力小売りを完全に自由化する改正 電気事業法が昨年6月に成立。同時に先物取引の対象に電力を追加する ための商品先物取引法も改正され、電力先物上場への道筋が整った。 LNGと電力の価格差(スパークスプレッド)や石炭と電力の価格差 (ダークスプレッド)の取引はすでに米国や欧州の電力事業者などに活 用されている。

取引所を所管する経済産業省も交えて、電力会社のほか発電事業を 手掛けているセメントや製紙、鉄鋼会社など市場参加が見込まれる関係 業界と商品設計などについての協議を始めていく方針。「少なくとも電 力の先物市場は16年にはスタートしたい」と述べた。

東商取は14年3月期まで単体決算で6期連続の赤字。個人投資家の 勧誘規制強化で出来高の低迷が続いたが、足元では出来高も回復傾向に ある。昨年10月以降、1日当たりの平均出来高が今期の損益分岐点とす る10万枚(枚は取引単位)を超えている。1月も27日時点での平均出来 高は11万526枚となっている。

プロップハウスが貢献

出来高増加について江崎社長は「昨年9月から円安が進んだことに 加えて原油や金などの商品のボラティリティが非常に大きくなった」と 指摘。自己資金で運用する海外からのプロップハウスの市場参加も寄与 していると述べた。

プロップハウスは自己の資金で高頻度取引を行っており、市場間の 価格のわずかな差を狙い、大量の裁定取引注文を出すことで利益を確保 する。東商取は海外市場との裁定取引を行いやすいよう制度を変更した り、取引時間を延長するなどした結果、「国際的な商品のボラティリテ ィの高まりがすぐに反映する仕組みになった」という。

江崎社長によると現在、米国やアジア、国内などのプロップハウス が約7社、東商取市場に参加している。1社で全体の取引高の1割程度 を占めるプロップハウスもあるという。

統合費用負担が重し

ただ、昨年8月までの出来高が低迷していたため、現状の出来高水 準が続いたとしても今期(15年3月期)の最終黒字化は難しい状況。来 期は大阪取引所との取引売買システム統合に向けた初期投資の費用負担 もあり、損益分岐点は上がる。1日当たり12万-13万枚の出来高を目指 す。プロップハウスだけでなく国内の個人投資家や当業者の参加を増や すことで「来期は黒字化したい」と述べた。

16年中に予定するシステム統合が実現すれば、営業費用の6割を占 めるシステム経費の割合が4割にまで下がる見通しも明らかにした。

経産省と農林水産省は23日、商品先物取引法を改正し、外国為替証 拠金取引などの投資経験者や、65歳未満で年収が800万円を超える人な どを対象に勧誘規制の対象から外すこと決めた。施行日は6月1日。

江崎社長は「従来は勧誘規制強化の一辺倒だったが、初めて緩和の 方向に動き出した点では大きい」と評価。一方で「今回の措置の効果は 予測しにくい」と慎重な見方も示した。条件付きの緩和であることに加 えて、商品取引会社で営業を担う外務員の数が03年と比べて約9割減 の2000人程度にまで減少している点を挙げた。

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