トリシェ前ECB総裁:G7に通貨合意の好機-インタビュー

トリシェ前欧州中央銀行(ECB)総裁は、 世界的な通貨切り下げ競争を回避するため、日米欧の先進7カ国(G 7)にとって今が新たな通貨合意を取りまとめる「好機」だとの考えを 示した。

パリでインタビューに応じたトリシェ氏は、「全てのことを考慮す れば、自国通貨が下落するのが望ましく、いずれにせよ上昇はしてほし くないと、ほぼ誰もが言っているようだ」と指摘。その上で、「主要な 交換可能通貨の安定関係では、恐らくこれまでよりもっと踏み込む一種 の好機が到来している」と語った。

今年は、円とユーロの相場下落を受け、政策当局がインフレ率押し 上げの手段として通貨安を利用している可能性があるとして、新たな 「通貨戦争」が勃発しつつあるとの声が上がっている。

さらにドル高を背景に、ドルで資金を借り入れたり、インフレ高進 を避けたいと望んだりする一部の新興市場諸国は圧力にさらされてい る。

トリシェ氏は「このような状況は1970年代初頭のブレトンウッズ体 制崩壊以降、見たことがない」と述べ、「日本、英国、米国、欧州のい ずれもが以前にも増して自国・地域の通貨の対外的な価値に注意を払っ ている」と付け加えた。

米国がドル高をどう受け止めるかに事態の多くが左右されることに なりそうだ。ルー米財務長官は10月29日にヨハネスブルクで、強いドル はリスクを及ぼすというよりも、経済強化の兆候だと話した。連邦準備 制度の当局者の間では、ドル高に伴う問題について見解の相違がある。

SDR通貨を念頭

フランス財務省当局者としての立場を皮切りに、30年間にわたり先 進7カ国財務相・中央銀行総裁会議に臨んだ経験を持つトリシェ氏は、 自身の提案は国際通貨基金(IMF)の特別引き出し権(SDR)の構 成通貨を念頭に置いたものだと説明した。

SDRの価値はドル、ユーロ、円、ポンドの通貨バスケットに基づ いて決められており、人民元は含まれていない。

トリシェ氏は、これら通貨を管轄する各国・地域の中銀の間で「考 え方が同じ方向に向かっている」ことが新たな通貨合意の機運が高まっ ていると考えられる理由だと分析。具体的には、いずれの中銀も2%程 度のインフレ目標を実質的に採用し、金融リスクの抑制・銀行検査にも 同様の慣行が見られるようになっているほか、記者会見を通じた意思伝 達といった方法でも類似点が増えているとしている。

来年はドル相場の押し下げを図った85年のプラザ合意から30年。87 年にはドル相場を支えるためのルーブル合意が取りまとめられたが、1 日当たり5兆3000億ドル(約638兆円)もの取引が行われる外国為替市 場でできることには限界があるとして、各国・地域の通貨当局が直接的 な介入に訴えることはその後激減している。

トリシェ氏はフランス銀行(仏中銀)総裁として2000年のユーロ防 衛、11年にはECB総裁として円相場押し下げ介入の決定にそれぞれ関 与した。

原題:Trichet Sees G-7 Opportunity Window for Currency Accord: Economy(抜粋)

--取材協力:Guy Johnson.

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