日銀総裁:原油安は物価押し上げに-前年比の影響いずれ剥落

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日本銀行の黒田東彦総裁は19日午後の金融政 策決定会合後の記者会見で、原油価格の下落が物価に与える影響につい て「前年比でみた影響はいずれ剥落していく」とした上で、経済活動に 好影響を与えていくことで、「やや長い目でみると物価を押し上げる方 向に作用する」との見方を示した。

黒田総裁は「原油が相当大幅に下がっているということは事実だ。 これは石油をほぼ100%輸入している日本にとっては経済を押し上げる 効果を強く持つ」と指摘。一方で、 「足元の物価上昇率には、特に短 期的には押し上げ要因として働いてくる」と述べた。

その上で、原油価格の下落は「前年比でみた影響はいずれ剥落して いく性質のものであり、原油価格の下落が経済活動に好影響を与えてい くということで、基調的に物価を押し上げる要因になり得る」と指摘。 「もちろん原油価格の動向によって不確実な面はあるが、やや長い目で みると原油価格の下落は物価を押し上げる方向に作用する」と語った。

ドバイ原油価格は追加緩和が行われた10月31日から3割下落してい る。日銀は19日の金融政策決定会合で、政策方針の現状維持を1対8の 賛成多数で決めた。日銀は10月31日に原油価格の下落を主な理由として 追加緩和に踏み切っており、足元の原油価格の下落に対しどのような評 価をしているかについて、市場の関心が集まっていた。

来年前半には物価は加速しにくい

黒田総裁は消費者物価の前年比について「15年度を中心とする期間 に物価目標である2%に達する可能性が高いとみている。ただ、足元で 原油価格が下がっているので、来年の前半には物価上昇率が加速してい くことは考えにくいかもしれない」と述べた。

さらに、「これも原油価格、為替、需給ギャップの影響、そして何 より重要な賃金の動向にも左右されるので、もう少し様子をみてみない といけないと思う」としながらも、「基本的な物価の見通し、つまり15 年度を中心とする期間に物価目標に達する可能性が高いという見通しに は変わりはない」と語った。

金融政策運営については「何らかのリスク要因によって見通しに変 化が生じ、物価目標を実現するために必要になれば躊躇(ちゅうちょ) なく調整を行う方針に変わりはない」と述べた。

日銀は10月31日の決定会合で、消費増税後の需要の弱さと「原油価 格の大幅な下落が、物価の下押し要因として働いている」と指摘。「短 期的とはいえ、現在の物価下押し圧力が残存する場合、これまで着実に 進んできたデフレマインドの転換が遅延するリスクがある」として追加 緩和に踏み切った。

黒田総裁は追加緩和について「原油価格の下落そのものに対応した というよりも、物価の基調的な要因、広い意味での予想物価上昇率への 影響を考慮した」と説明した。

日銀の決意はしっかり伝わった

予想物価上昇率については「市場の指標やエコノミストなどの調査 を見ていくことはもちろん必要だが、それだけではなくて企業や家計の 物価観、その下での行動の変化をとらえることが重要だ」と指摘。「こ の点、量的・質的緩和拡大後、金融市場は大きく反応しており、日銀の 2%物価目標実現に向けた決意はしっかり伝わった」と述べた。

さらに、「来春の賃金交渉に向けて、連合は2%以上のベアを要求 する方針で、政労使の取り組みでは経済界は賃上げに最大限の努力を図 る方針が明記された」と指摘。「市場のブレークイーブンインフレ率は 若干低下しているが、家計、企業、エコノミストなどのサーベイ調査で は中長期的な予想物価上昇率は総じて維持されている」と語った。

また、「短観では企業は引き続き物価上昇率の高まりを予想してお り 、人々のデフレマインドの転換は着実に進んでいるようだ」と指 摘。「そうであれば、原油価格下落は経済活動や物価を基調的に押し上 げる効果が次第に発揮され、短期的な物価押し下げ効果が減衰するに従 って現実の物価上昇率も上昇していく」と述べた。

ETF買い入れは所期の効果を発揮

日銀の指数連動型上場投資信託(ETF)の大量買い入れが株式市 場の価格形成を歪めているのではないか、との質問に対しては「これま でのところ、ETFの買い入れはリスクプレミアムの低下を促すという 所期の効果を発揮している」と指摘。

その上で、「市場の価格に影響が出るのではないかということだ が、リスクプレミアムの低下を促すという意味で、影響が出るというの は、まさに政策の効果だ」と語った。さらに、金融政策が「金融市場に おいて金融資産の売買を通じて政策を行っている以上、ある意味で当然 のことだ」と述べた。

為替は安定して推移が望ましい

為替相場については「円安は輸出増加やグローバル企業の収益改 善、株価上昇といったプラス効果を持つ一方、輸入コスト上昇から非製 造業、中小企業の収益、家計の実質所得の押し下げ圧力として作用する 面もある。円安の影響は経済主体によって異なり得る」と述べた。

さらに、「この点、短観結果をみると、確かに一部素材などで慎重 な動き見られるが、景況感は総じて良好な水準を維持しており、収益、 設備投資などの事業計画もしっかりした姿となっている」と指摘。「い ずれにしても為替相場はファンダメンタルズを反映して安定して推移す るのが望ましい」と述べた。

ロシアのルーブルが大幅に下落していることについては「ロシアは 経常収支の黒字は依然として続いており、外貨準備も相当高い水準にあ るので、1998年の時のようなことは誰も繰り返されるとは思っていない と思う」と言明。

その上で、「日本経済への直接的な影響は、貿易投資面での取引が 極めて小さいためあまりないと思うが、欧州経済や国際資本市場への影 響はみていきたい」と語った。

--取材協力:James Mayger、淡路毅.

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