一生に一度きりのパーフェクトな波に乗る-お値段は1500万円

モルディブに着いて2日目の朝、私はこの国 でよく見かける帆船「ドーニー」に乗り込み、サーフポイント「ジェイ ルブレークス」で下船した。「ジェイルブレークス」という名は近くの ヒマフシ島にかつて監獄(ジェイル)があったことに由来しており、バ レル状の波がレギュラー(岸に向かって右側)に崩れていくリーフブレ ーク(海底が岩やサンゴ礁)のポイントだ。この海域でのサーフィンは 禁止されていたが、同監獄が飲酒者の一種の矯正施設に変わった90年代 後半に解禁された。イスラム教スンニ派を国教とする同国ではアルコー ルは禁止されている。ただし旅行者はリゾート島などで飲酒することが できる。

モルディブの首都マレの空港に到着した私を待ち受けていたのは持 ち込み禁止品のリストだった。アルコール、麻薬、豚肉(加工品を含 む)、水中銃、犬などだ。宗教上の禁止品は別にして、そのほかの物は 今回の私の旅にはそもそも不必要なものばかりだ。今回のツアーは、パ ーフェクトな波を独り占めできる穴場を探し求める会社トロピックサー フによる企画であり、高級リゾート、フォーシーズンズ・クダフラでド ラゴンフルーツのカクテルを楽しんでいる時間など残されてない。

ジェイルブレークスでは次第に波のうねりが強くなってきた。トロ ピックサーフの創設者、ロス・フィリップス氏は次々にアドバイスをく れる。私が1つの波に乗り終えて、パドルをしながら沖に戻ってきた時 に、「今のは前の足に少し加重し過ぎていたんじゃないかい?」と声を 掛けてきた。

確かに私は海中に見えたサンゴに目を奪われ、立ち上がる時に前足 の加重を減らしてこれから進むラインを見るのを忘れていた。フィリッ プス氏は私がバイクを運転した際に初めて学び、人生にも役立つ教訓を 再び口にした。「行きたい方向を見ろ」。

きっかけ

トロピックサーフは人口34万5000人のモルディブで誕生した。年間 の観光客数は人口の約2倍だ。生まれ育ったオーストラリアのヌーサ・ ヘッズでサーフィンスクールを経営していたフィリップス氏は1999年、 サーフィンに適した穴場を求めて客をフィジーやモルディブに連れて行 くこともあった。一緒に行った人たちはフィリップス氏のコーチには満 足したものの、宿泊施設には不満を口にした。このため、クダフラ島の リゾートが「フォーシーズンズ」という名に変わった時、フィリップス 氏はサーフィンの後に訪れてみることを思い立った。

フィリップス氏は初めて訪れた時を振り返り、「顔中が日焼け止め クリームだらけで、髪はごわごわ、桟橋に現れた時はびしょ濡れだっ た」と語る。ひょっとしたら追い返されるのではないかとびくびくしな がら部屋を見せてほしいとホテルのコンシェルジュに言うと、冷たい飲 み物を勧めてくれ、その後、運転手付きのバギー車で部屋を一通り見せ てくれたという。見掛けで判断せず丁寧に応対してくれたことにフィリ ップス氏は感激し、その半年後、今度はきちんとした身なりでホテルを 訪れ、ゼネラルマネジャーとの面会を求めた。

15ドルすら払えない

フィリップス氏はサーフィンのガイドとして同リゾートに常駐させ てもらい、宿泊客が周辺のワールドクラスのサーフポイントを回るのを 助けたいと提案した。しかしゼネラルマネジャーは笑いながら、サーフ ァーにはその金額を支払う余裕はないと語ったという。フィリップス氏 は、確かに当時はまだ「豪華なサーフィンツアーの市場は存在しておら ず、1回のレッスンに15ドルだって払おうとしなかった」と説明した。

現在、顧客はトロピックサーフのガイドによる3時間のレッスン に150-495ドル(約1万8000-5万9000円)を支払っている(経験やロ ケーション、必要な器具によって金額は変わる)。レッスンはフォーシ ーズンズが運営する5つのリゾートを含め、世界の14のリゾートで行わ れている。クダフラから水上飛行機でサーフポイントを回るツアーは1 万ドルだ。さらに豪華クルーズ船、「フォーシーズンズ・エクスプロー ラー」に1週間滞在し、一生に一度しか出会えない波を探して回る13万 ドル(約1500万円)のツアーも人気だ。トロピックサーフは今やフォー シーズンズに欠かせない存在となった。

フォーシーズンズの現在のゼネラルマネジャー、ランディ・シマブ ク氏はトロピックサーフのおかげで同リゾートは有名になったと語っ た。

エンドレスサマー

1994年のドキュメンタリー映画「エンドレスサマー2」に主演した 1人であるロバート・ウィングナット・ウィーバー氏は年に平均2回は トロピックサーフのツアーに参加するという。トロピックサーフは「ど んな問題でも解決し、常に最高のサーフィンができるよう動き回ってく れる」と話す。

サーフィンの爆発的人気は衰える兆しが見えない。そして限られた 資源を求める人が増え続ける状況においては、うまく立ち回ることが必 要だ。私たちは夜にはニューヨークへの帰途に就くが、それまでの間、 ヤシの木が茂る小島の沖でビッグウエーブを待ち続けた。

原題:Surfers Spend $130,000 Seeking Perfect Waves on Superyacht (抜粋)

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