GPIF合議制導入、監督執行分離は年金部会に結論委ねる

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年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF )のガバナンス(組織統治)改革を検討してきた社会保障審議会の作業 班は17日、運用計画などの意思決定を理事長の独任制から複数の理事に よる合議制に改編すべきだとの見解で合意した。実現には法改正が必要 で、議論の舞台は同審議会の年金部会(部会長:神野直彦東大名誉教授 )に移る。

作業班の座長を務める東京大学大学院の植田和男教授は6回目とな る17日の会合で、座長代理の伊藤隆敏政策研究大学院大学教授ら出席し た8人の委員と意見を取りまとめた。ただ、理事会・執行部の構成につ いては合意に至らず、座長と座長代理がこれまで出た意見をまとめたも のを委員らと確認の上、年金部会に結論を持ち越した。

持ち越したのは、A)理事会による監視機能を強める観点から、C EOなど執行部は理事会メンバーになれないが、説明のために出席可能 B)CEOは理事となるが、理事会の議長にはなれない。CEO以外の 執行部メンバーは理事会に出席し担当業務について説明するが、理事に はなれないC)理事会と執行部の意思疎通を円滑にするため、CEOは 無条件に理事会メンバーとし、CEO以外の執行部も2名程度理事とす る-の3つの案。

同案について委員らに複数回答で賛成意見を求めたところ、A案が 4、B案が6、C案が3だった。年金部会は作業班が今回取りまとめて 提出した見解を踏まえてGPIFの組織改革案を討議し、結果を塩崎恭 久厚生労働相に答申する。作業班の委員10人は25人で構成される年金部 会の委員も務めている。

作業班の設置

政府・日銀が経済活性化とデフレ脱却策を進めるのに伴い、GPI Fは将来の金利上昇で評価損の恐れがある国内債券への偏重見直しやリ スク資産の拡大による収益向上、高度な運用を支えるガバナンス改革を 求める圧力を受けていた。堀江貞之委員によると、10月末の同法人の資 産構成見直しは、三谷隆博理事長も出席したが、運用委員会(委員長: 米沢康博早稲田大学大学院教授)のメンバーらの投票で決まった。

GPIFは資産構成見直しとともに、ガバナンス体制の強化も発表 した。運用委員会の下に「ガバナンス会議」を設置し、投資原則と行動 規範の策定・監視のほか、コンプライアンス(法令順守)の責任者も任 命。先月20日には三谷理事長が新設の最高投資責任者(CIO)に、同 法人運用委員会の委員で英プライベートエクイティ(PE)投資会社コ ラー・キャピタルの水野弘道パートナーを任命すると発表した。

作業班はGPIFの資産構成見直し発表の翌営業日に当たる11月4 日、初会合を開いた。運用見直しに続いて組織再編でも、公的・準公的 資金の運用・リスク管理を見直す政府有識者会議の1年前の提言に沿っ た改革が進む可能性が高まった。

年金部会は8月20日、公的年金制度の持続可能性を点検した財政検 証の結果を踏まえ、年内をめどに議論を整理する年金制度改革の一環と して、GPIFのガバナンス強化を挙げた。政府有識者会議の提言はリ スク資産への本格投資には専門知識や経験が豊富な複数の常勤理事によ る合議制が必要だと主張。監督と執行の分離が望ましいとした。

GPIFを所管する塩崎厚労相は、運用見直しとガバナンス改革は 「車の両輪」だと主張し、来年初からの通常国会での法改正を目指して いる。10月15日には年金部会に出席し、GPIF改革は「アベノミクス の最重要改革の1つ」だと述べた上で、政治的圧力からの独立と国民に 対する受託者責任を果たすためにも必要だと語った。年金部会は同日、 大臣発言を受けて作業班の設置を決めた経緯がある。

作業班の議論

植田座長は4月までGPIF運用委員会の委員長だった。伊藤座長 代理は政府有識者会議で座長を務めた。現在、同法人運用委員会の委員 長代理の堀江野村総合研究所上席研究員とJPモルガン証券の菅野雅明 チーフエコノミストも有識者会議から作業班の委員に選ばれた。

伊藤座長代理は初会合で、理事長の独任制は望ましくないとし、6 -8人の理事による合議制を提案。厚労省の独立行政法人評価委員会で 委員長を務める横浜国立大大学院教授の山口修委員は、GPIFが独自 にリスクを取るべきではないと述べ、リスク抑制の重要性を述べた。

第2回会合ではGPIFが政治圧力による株価下支え(PKO)を 余儀なくされる可能性や情報漏えいに議論が集中した。堀江委員は、現 在の独任制では政治圧力で株式比率を上げることも制度上は可能だと指 摘。日本投資顧問業協会会長の岩間陽一郎委員はPKOリスク、政治圧 力の排除が一番大事だと指摘した。

GPIFは国内債の目標値を従来の60%から35%に下げる一方、内 外の株式は12%ずつから25%ずつに、外債は11%から15%へ引き上げて いる。5%だった短期資産の区分は廃止。国内株比率の上限は従来の18 %から34%に高まっている。

作業班の議論では、運用失敗時の責任の所在も俎上(そじょう)に 上った。11月14日の会合では菅野委員が、最終的に厚労相が負う全責任 と、年金財政から課せられた目標と制約の下でGPIFが持つべき運用 執行の独立性と説明責任は異なると指摘した。山口委員はGPIFへの 政治圧力を抑えるには大人数の合議制が有用だとして、複数の合議制へ の改編に賛意を示した。

今月1日の前回会合では合議制の導入で大筋合意した上で、理事会 と執行部の構成や役割分担を検討した。堀江委員が理事会の常任メンバ ーは理事だけに絞るべきだと述べる一方、ライフネット生命保険で会長 兼CEOを務める出口治朗委員は理事会には日本銀行を参考にCEOや CIOなどを執行部から入れるのが一案だと指摘した。

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