イエレン議長率いる米金融当局、世界経済の救援に打つ手限定

イエレン議長が率いる米連邦準備制度理事会 (FRB)は今回、世界経済の救援に駆けつけることができないかもし れない。

ロシア危機が世界経済に動揺をもたらした1998年、当時のグリーン スパンFRB議長は3度の時宜を得た利下げで対応。通貨ルーブルの切 り下げと同国のデフォルト(債務不履行)に打ちひしがれた金融市場の 秩序を回復し「英雄」となった。

そして現在。原油安に伴う市場のうろたえを受け、ロシア中央銀行 は98年の危機以来の大幅利上げに踏み切り、同国は投資家にとって再び 問題の核心に急浮上している。

だが、仮にパニックが広がり、米経済と世界経済全体を脅かす事態 となったとしても、グリーンスパン氏が投資家を落ち着かせるために活 用したのと同じような「火力」はイエレン議長にはない。

米金融当局は2008年12月以降、事実上のゼロ金利政策を続けてお り、一段の利下げ余地はない。再度、資産購入策に訴えることもできな くはないが、このような量的緩和(QE)をめぐっては金融当局内部に も依然論争があり、野党共和党の議員らはインフレ高進を招きかねない として攻撃している。

QEの効果も限界

米投資会社ブリッジウォーター・アソシエーツの創業者であるレ イ・ダリオ氏らは、米連邦準備制度や他国・地域の中銀にとって、景気 刺激のための選択肢が乏しくなっていると懸念を表明してきた。だ が、11日にニューヨークで開かれた会議に臨んだ同氏自身、そうした状 況が顕在化するのは今ではなく、1年ないし2年先と予想していた。

元FRB当局者でノーザン・トラストのチーフエコノミスト、カー ル・タネンボーム氏は「もし世界的な力学によって極めて深刻な情勢と なった場合、世界中の中銀は適切な対応を講じる上で困難に直面するだ ろう」と指摘。「主要中銀の大半は過去5年間にわたり非常に積極的に 量的緩和策を活用してきており、この手段の効果も限界に達したと当局 者の多くは考えている」と語った。

一方で、ルネサンス・マクロ・リサーチのエコノミスト、ニール・ ダッタ氏は16日の顧客向けリポートで現状に関し、米株価が下落し、ロ シアとアジアの新興市場の成長が「崩壊状態」にあった98年の状況から は「程遠い」と指摘している。

米金融当局は16、17両日に連邦公開市場委員会(FOMC)を開 催。11月の非農業部門雇用者数が前月比32万1000人増と約3年ぶりの伸 びとなり、同月の小売売上高が同0.7%増と8カ月ぶりの急増を記録す るなど、米経済は活況を呈している。

前回、ロシア危機に見舞われた98年7-9月(第3四半期)にも、 米国内総生産(GDP)は年率5.3%増と力強い伸びを示していた。た だ、当時のフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標は5.5%で、グ リーンスパン氏には現在のイエレン議長よりもはるかに大きな利下げ余 地が残されていた。

原題:Yellen’s Fed Cavalry Low on Ammo as Global Concerns Spread (1)(抜粋)

--取材協力:Steve Matthews.

    最新の情報は、ブルームバーグ端末にて提供中
    LEARN MORE