日銀逆行安、追加緩和後の株高ラリーに乗れず-副作用を懸念

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日本銀行による追加金融緩和を起爆剤に7年 ぶりの高値を付けた日本株相場とは逆行し、当の日銀の出資証券価格が 低迷している。デフレ脱却へ量的・質的緩和に踏み切った昨春をピーク に反落、下値を切り下げる背景には購入資産の将来的な含み損リスクな ど異次元政策の副作用に対する警戒感がある。

ことしの日銀証券の高値は1月の6万円。その後じりじりと下が り、10月17日には4万7000円の安値を付けた。16日終値は4万7500円 で、年初来騰落率はマイナス13%。日銀緩和後に為替市場で円安が進 み、企業業績の改善期待からプラス3.9%となっているTOPIXとは 対照的だ。東証1部33業種の中でもさえない東証銀行業指数のマイナ ス7.5%に対しても劣っている。

日銀の下落理由に2つの要因があるとみる岡三オンライン証券の伊 藤嘉洋チーフストラテジストは、1つは「政府が消費税増税を先送り し、世間では財政健全化の遅れを懸念する声が出ている。個人は安倍政 権の政策に対し疑心暗鬼を感じているのかもしれない」と分析。2つ目 には「個人投資家全体が日本株を売却している流れがある」と話す。

日銀は日本銀行法に基づく「認可法人」で、資本金は1億円、政府 が55%、民間が45%出資する。出資の持ち分を表す有価証券の「出資証 券」を発行、同証券は東京証券取引所のジャスダック市場に上場してい る。ベルギー国立銀行やギリシャ銀行、スイス国立銀行などと並び、世 界でも数少ない上場する中央銀行だ。

出資者には議決権の行使が認められず、解散した場合の残余財産の 分配は、上限が払込金額および特別準備金の合計までに制限されてい る。配当は払込出資金額に対し年5%以内とされ、2013年度の配当金総 額は500万円だった。

富裕層の収集品

日銀の設立は1882年にさかのぼり、当時の資本金は1000万円。翌年 から明治新政府の預金、国庫金取り扱いを開始し、85年から日本銀行券 の発行を始める。大和証券の木野内栄治チーフテクニカルアナリスト は、日銀証券に関し「設立するときの出資の段階から持っている富裕層 が多いと言われていた」とし、市場ではかつて徳川家や天皇家などが保 有しているとの観測もあったと言う。

岡三オンライン証の伊藤氏は、「株式投資に興味のある人で、日銀 を保有している人の話は昔から聞いたことがない」と指摘。政府が半分 以上を保有、決して倒産しないため、「切手収集のように富裕層が趣味 で購入するケースが多い。経営を引退した友人は昔、日銀証券を額に入 れて飾っていた」と振り返る。

日銀の民間出資比率45%の内訳は個人39.6%、金融機関2.2%、公 共団体等0.2%、証券会社0.1%、その他法人2.9%。流動性が低く、少 ない売買で価格が左右されやすい構図で、伊藤氏は「個人が多く保有し ているため、日銀証券価格の変動はそのときの日本の世相を表してい る」との認識を示した。

東証の投資部門別売買動向によると、個人投資家は11月に日本株を 1兆9837億円売り越した。売越額は昨年11月(2兆372億円)以来の高 水準で、ことしは11月までに3兆4000億円余り売り越している。

異なる価格メカニズム

みずほ証券の銀行アナリストで、日銀出身の西原里江氏は「民間銀 行は利益が上がると資本に内部留保として積むか、株主に配当として還 元するか、成長投資に振り向ける」が、日銀の場合は「日銀法にあるよ うに、一定以上の利益が出ると国民の財産として国庫に納入する。増配 や自社株買いがない点が民間銀行の株式投資と異なる」と言う。このた め、業績に基づき「普通の価格メカニズムで株価が動くというものでは ない」とした。西原氏は、日銀証券を調査対象としていない。

12年末にアベノミクス相場が始まって以降の日銀証券の最高値は、 日銀が異次元緩和に踏み切る直前の昨年3月19日の9万4000円で、その 後は下落傾向が続く。西原氏は、「追加緩和を行うとそれだけ国債を買 い入れるため、金利上昇に脆弱なバランスシートになることが株価に反 映されているとも考えられる」とみる。

日銀は1949年4月に当時の東京、大阪、名古屋の3証券取引所への 上場を決め、東証には同年5月に上場。60年5月に3取引所での上場が 廃止された。63年2月には日本証券業協会の店頭取扱銘柄として指定さ れ、83年11月に同登録銘柄になり、04年12月の市場創設と同時に現在の ジャスダックに移った。

17日の日銀証券価格は前日比1.1%安の4万7000円まで下げ、2カ 月ぶりに52週安値に並んだ。午後1時30分すぎの段階で出来高は200 口、売買単位は100口で、2件の約定があった。

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