1998年を生きたヘッジファンド運用者が警告-痛み覚悟せよ

1997年1月上旬のある日、スティーブン・ジ ェン氏はモルガン・スタンレーの新任のアジア為替ストラテジストとし て香港の空港に降り立った。

間もなく、投資家がドルにペッグされたアジア通貨を攻撃し始め、 同氏は寝る暇もない忙しさとなった。この攻撃でまず、同年7月にタイ が倒れた。売りはアジア中に広がった後、ブラジルやロシアへと飛び火 していった。最後にはヘッジファンドのロング・ターム・キャピタル・ マネジメント(LTCM)が倒れ、米連邦準備制度理事会(FRB)が 救済を取りまとめることになった。

台湾生まれの48歳、米マサチューセッツ工科大学(MIT)からの 博士号を持つジェン氏がこのところ疲れて見えるのには理由がある。今 日、新興市場を担当しているアナリストの多くは1990年代の終わりのこ とを思い出すには若過ぎることを同氏は心配している。今のアナリスト らはブラジル、ロシア、インド、中国のBRICsが一本調子で繁栄へ と突き進んでいた時代に仕事を覚えた。

「多くは『BRICs』という言葉が2001年にできた後に新興市場 担当アナリストになった人々だ。深刻な危機を体験したことがない」 と、今はロンドンのヘッジファンド、SLJマクロ・パートナーズを率 いるジェン氏は言う。

若い世代に学習の時がやってきた。ジェン氏は1997、98年の再来が 近づいているかもしれないと感じている。

投資家は今朝目を覚まして、ロシアが午前1時にルーブル防衛のた め大幅利上げをしたことを知った。ベネズエラがデフォルト(債務不履 行)する可能性は高まりつつあり、タイやブラジル株は売られている。 米金融当局がまだ利上げを開始してもいないのにだ。

ジェン氏はさらなる痛みに対して身構えている。「ある時点で、新 興市場の一部が破裂するリスクが急激に高まるだろう」と同氏は述べ た。

現時点でブラックリストを作成したくはないとしながらも同氏は、 為替相場が新興市場の危険を白日の下に曝すと指摘する。ロシア・ルー ブル、ブラジル・レアル、メキシコ・ペソ、トルコ・リラ、南アフリ カ・ランド、インドネシア・ルピア、これらは皆、大きく下落した。

米国の成長加速見込みはドルを上昇させ新興市場から資金を吸い上 げるだろう。国際決済銀行(BIS)はドル上昇が世界経済に「深遠な 影響」を及ぼし得ると警告。国際通貨基金(IMF)も今月のリポート で、米金融政策の引き締めサイクルの開始前後はソブリン債危機の頻度 が15%高まると指摘した。

「新興市場通貨についての私のかねてからの考えは、とにかく累積 的な資本流入の規模が余りにも大きいためにメルトダウンが起こり得る というものだ。米経済が回復し続ける限り、新興市場国・地域が何をや っても、この起こり得る資金流出を止めることはできない」とジェン氏 は話した。

原題:Hedge Fund Manager Who Remembers 1998 Rout Says Prepare for Pain(抜粋)

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