日銀は原油安でも1月は追加緩和見送りの公算、先行きに自信

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日本銀行は景気・物価の先行きに自 信を深めており、現状程度の原油価格の下落であれば、経済・物価情勢 の展望(展望リポート)の中間評価を行う来年1月の金融政策決定会合 で、追加緩和を見送る可能性が高まっている。

関係者によると、景気については生産や輸出が持ち直しつつあり、 先行き円安と原油安の好影響が出てくること、物価についても企業の間 で賃上げに向けた動きが出始めており、原油安の影響が剥落する来年度 後半からは上昇幅を拡大する公算が大きいことから、日銀内ではさらな る追加緩和に慎重な見方が強い。

また、10月31日の追加緩和に反対した審議委員が慎重姿勢を崩して ないほか、執行部の間でも、原油が下落すれば機械的に追加緩和を行う との見方が定着するのを避けたいという意向もある。さらには、国債の 大量買い入れが限界に近づいているとの見方も内部から上がっている。 2%の物価目標を早期に実現する上で、日銀は来春の賃金交渉が決定的 な影響を及ぼすとみており、当面、春闘の行方を見極める構えだ。

もっとも、関係者によると、7-9月のマイナス成長を受けて今年 度成長率見通しの下方修正は必至で、消費者物価(CPI)の見通しも 原油下落で下方修正される可能性が高まっている。このため、原油下落 を主な理由として追加緩和に踏み切った10月31日の判断との整合性を問 われる可能性もあり、日銀は市場との対話に苦慮しそうだ。

大和証券の野口麻衣子シニアエコノミストは12日のリポートで、 「10月末以降、原油価格が2割以上下落したことで、早ければ中間評価 を行う1月にも、見通しのさらなる下方修正が避けられないとみられる 中、金融政策に対する先行き不透明感が高まりそうだ」と言う。

再三の見通し下方修正は必至

日銀は10月31日の金融政策決定会合で、「このところ、消費税率引 き上げ後の需要面での弱めの動きや原油価格の大幅な下落が、物価の下 押し要因として働いている」と指摘。「短期的とはいえ、現在の物価下 押し圧力が残存する場合、これまで着実に進んできたデフレマインドの 転換が遅延するリスクがある」として追加緩和に踏み切った。

日銀は同日公表した展望リポートで、消費者物価指数(除く生鮮食 品、コアCPI)前年比の見通し(委員の中央値)について、追加緩和 の効果を織り込んだ上で、2014年度は1.3%上昇から1.2%上昇へ、15年 度は1.9%上昇から1.7%上昇に引き下げた。

ドバイ原油価格は11日現在、1ドル=61.67ドルと、日銀が追加緩 和に踏み切った10月31日から29%下落しており、中間評価があった7 月15日から10月31日までの下落率(20%)を上回っている。

RBS証券の丹治倫敦チーフ債券ストラテジストは日銀が期待イン フレの上昇を特に重視していることや、短期的な物価の下振れがデフレ マインドの転換を遅延させるリスクに対応する形で追加緩和を実施した ことなども考慮すれば、「インフレ見通しの下方修正を行う時には、同 時に追加緩和が行われる可能性は高いと見るべきだろう」と言う。

4委員は引き続き追加緩和に慎重

第一生命経済研究所の熊野英生首席エコノミストも「原油下落は消 費者物価が1%割れしてマイナス方向に作用するから、一定のインフレ 予想を維持するため、追加緩和によって円安=輸入物価の押し上げで応 じるという姿勢になった。この理屈が首尾一貫して継続すれば、再び一 段の原油下落が進めば追加緩和で対処せざるを得なくなる」という。

日銀が短期間での追加緩和に慎重な理由の1つに、10月31日の追加 緩和が薄氷の決定だったこともある。木内登英、佐藤健裕、森本宜久、 石田浩二の4審議委員が反対した。関係者によると、これらの委員は引 き続き原油安を理由に追加緩和に踏み切ることには慎重姿勢を続けてお り、追加緩和を強行すれば再び僅差の決定になる可能性が高い。

日銀は追加緩和で、国債の市中発行額のほぼすべてを買い入れる決 定を行った。関係者によると、国債買い入れはほぼ限界に達しており、 仮に追加緩和が必要になったとしても、国債を大量に買い続ける現在の 枠組み以外の手段を追求すべき、との声が日銀内からも上がり始めてい る。

逐次投入はせず

三井住友アセットマネジメントの武藤弘明シニアエコノミストは、 1月の中間評価では「原油価格がマクロ的にはプラスに働くであろうこ とと、物価見通しの修正は微修正であることを主張し、追加緩和は見送 る」とみている。

みずほ証券の上野泰也チーフマーケットエコノミストも、日銀は 「市場の見方よりも引き続き高い予測数値を提示するだろう。戦力の逐 次投入はしないという黒田総裁のスタンスを考えると、1月や4月の時 点では追加緩和には直結せず、15年度下期入りする10月の展望レポート 時に追加緩和がある」と予想している。

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