世界の名だたる高層ビルに投資-巨大政府系ファンドの舞台裏

落ち着いた物腰でほほ笑むとえくぼ ができるリム・チョー・キアト氏(44)は、自身の習慣を守る人物とし て知られている。

友人や同僚らが覚えている限りでは、リム氏のヘアスタイルはずっ と以前から短髪で、いつも四角い黒縁眼鏡を掛けている。同氏はシンガ ポールの政府系ファンド(SWF)、シンガポール政府投資公社( GIC)の最高投資責任者(CIO)だ。

「子供のころも全く同じ外見だったのではないだろうか」。GIC を退社する2004年までリム氏の隣のデスクで勤務していたオクタゴン・ キャピタル・マネジメント(シンガポール)の共同創設者、ラン・ポー ミン氏はそう語る。オクタゴンはアジアで創設された先駆的クオンツヘ ッジファンドの一つだ。

ところが、リム氏のGICでの最近の役割は、既存のスタイルを塗 り変えることの連続だ。同氏の上司であるGICのリム・ショングアン 社長(67)は、投資リターン向上を目指してかじを取っている。ブルー ムバーグ・マーケッツ誌2015年1月号が報じている。

GICは10年間にわたって継続してきた投資モデルから移行。その 過程で世界有数の積極的なSWFの一つとなった。今では、今年初めの 米ニューヨーク市にある高層ビル「タイム・ワーナー・センター」への 投資のように、好機が到来すれば逃すことなくつかむことができる。

高齢化

他のあらゆる種類の投資家同様に、GICも世界の経済成長鈍化や 低金利と闘っている。さらに、シンガポールの人々の退職年金の原資と なる中央積立基金の一部を運用するGICは、人口動向の圧力にもさら されている。

シンガポールの高齢化は急速なペースで進んでいる。同国政府人 口・人材局によれば、国民の年齢の中央値は、11年には39歳だったが30 年までに47歳に上昇する見通しだ。

シャンムガラトナム財務相は7月に国会で「年金基金の投資に関 し、個々人に対して適正なリターンを提供する一方で、耐えられないリ スクにさらすのを避けるのが課題だ」と語った。

シンガポールの初代首相を1990年まで31年間にわたって務めたリ ー・クアンユー氏が81年に設立したGICは、世界のSWFのうち上 位10位以内に入るまでに拡大している。

特異な機会

調査会社ソブリン・ウェルス・センター(ロンドン)によれば、 GICの規模は世界のSWFのうち6位、ソブリン・ウェルス・ファン ド・インスティチュート(ラスベガス)によると8位。両社によれば、 GICの運用資産は3150億-3200億ドル(約37兆7000億-約38兆3000億 円)と推計されている。GICは、「1000億ドルを大幅に上回る」とし か公表していない。

ソブリン・ウェルス・センターのディレクター、ビクトリア・バー バリー氏の話では、GICは1-6月に33件、総額46億5000万ドル相当 の直接投資を行った。同氏は「新たな投資の枠組みに沿ってGICは特 異な機会を探している」と指摘。「GICは信じられないほど洗練され ている。他のSWFの一部と比較して群を抜いている」と述べた。

不動産への投資機関として既に世界10位以内に入っているGIC は2013年末以降、タイム・ワーナー・センターの権益の一部のほか、英 シティー(ロンドンの金融街)の中心に位置するブロードゲートのオフ ィス街権益の50%、「パシフィックセンチュリープレイス(PCP)丸 の内」のオフィス部分を相次いで取得している。

原題:Singapore Fund Seeking Higher Returns Bets on Trophy Real Estate(抜粋)

--取材協力:Linus Chua.

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