「根拠なき熱狂」が問題なのは、私たちをお金持ちにするからだ

18年前の12月5日、アラン・グリー ンスパン米連邦準備制度理事会(FRB)議長が問い掛けた言葉は、当 時も今も同じように時代を映し出す。山高帽をかぶってウォール街のボ タンウッドの木陰に集まっていた1792年のバンカーらにも通じるだろ う。

「根拠無き熱狂が資産価格をいつ過度に膨らませ、過去10年間に日 本で発生したような予期せぬ長期的な経済収縮につながるのか誰が予測 できうるだろう」と、1996年12月5日のワシントン、アメリカン・エン タープライズ・インスティテュートでの夕食会でマエストロは聴衆に答 えを求めずに問いかけた。

当時の株式市場の熱狂はこのような感じだ。ハイテク大型株で構成 するナスダック100種指数は年初から45%上昇し、過去最高値付近にあ った。ナスダック総合指数は年初来24%高、S&P500種株価指数は 同21%値上がりしていた。

熱狂の根拠の度合いを測る指標としては、株価売上倍率(PSR) はナスダック総合指数で1.22倍と、その年記録した過去最高の1.28倍に 近く、1992年末の水準の3倍近くに上昇していた。同指数は6年も弱気 市場を経験していなかった。

グリーンスパン氏はこの時、テーブルを叩いて根拠なき熱狂への警 告を発したわけではない。実際、ドットコム・バブルの最中に同氏はそ うすべきだったと、後から批判する者は多い。そうした批判をする者は また、同氏が後に講じた利下げが行き過ぎであり、住宅バブルを招いた として批判するのだ。

3300語

この有名な「根拠なき熱狂」という問いかけは、4300語から成るス ピーチの3300語目あたりに登場する。スピーチの多くは、米連邦準備制 度理事会(FRB)ができる前からある「FRB不要論」の歴史につい てだった。

この言葉をきっかけに夕食会で固いチキンをたいらげた後すぐに株 式投資を引き揚げるべきだったかと言えば、実はそうではない。ナスダ ックは当時の水準から4倍近くに跳ね上がり、2000年に天井を付ける。 S&P500種は2倍を超えた。

18年が経過した現在、ナスダック総合指数のPSRは2.28倍と、96 年の水準の2倍に近い。同指数はもう6年近く、弱気市場を経験してい ない。

消費者物価指数(CPI)は当時、前年比で3.3%上昇、現在 は1.7%上昇。フェデラルファンド(FF)金利誘導目標は当 時5.25%。現在は事実上のゼロ%だ。

フリートウッド・マック

96年当時、ビル・クリントン氏が大統領選挙を戦う際に使ったテー マソング、フリートウッド・マックの名曲「ドント・ストップ」には 「明日への思いを止めてはならない」という歌詞がある。そしてヒラリ ー・クリントン氏のキャンペーンソング「スタンド・ウィズ・ヒラリ ー」は甘ったるいカントリーだが、まったく違う理由で名曲となりそう だ。

そしてもういちど今、私たちは自分らに問い掛ける:「根拠無き熱 狂が資産価格をいつ過度に膨らませるか誰が予測できうるだろう」と。

熱狂というものは実に見つけやすい。根拠の無さも、多少主観的で はあるが見つけやすいと思う。しかし両方とも大量のマネーの源泉とな る。根拠ありと根拠無しの転換点を見極めるのが難しいところだ。

ビリニー・アソシエーツは過去5回の長期強気市場における「熱狂 フェーズ」を検証し、「強気市場の終了を明確に示すサインがあらかじ め出されることはほとんどない」という結論に至った。

禁酒法

「市場というものには何一つ同じものはなく、強気市場の終了に 『つながる』あるいは終了を『引き起こす』要因は無限にある:ファン ダメンタルズや経済、FRB、金利、通貨問題、金融の問題噴出、戦 争、バブル、国外の問題などだ」と、ビリニーのアナリスト、ケビン・ プラインズ氏は5日の顧客リポートで説明した。「しかしこうした危機 は強気市場の異なる段階に登場し、その深刻度合いもまちまちだ」と続 けている。

12月5日はもう一つ別に、留意しておきたい記念日でもある。1933 年のきょう、ユタ州は憲法修正第21条を批准し、これをもって禁酒法が 廃止された。大いなる熱狂に見舞われたが、まったく根拠のある熱狂だ った。

原題:The Problem With ‘Irrational Exuberance’ Is It Can Make You Rich(抜粋)

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