【米経済ウオッチ】フルタイム就業者15万人減、統計の真実

米労働省が5日に発表した11月の雇 用統計ではヘッドラインの非農業部門の雇用者数が32万1000人増えたこ とから、市場では米経済に対する強気の見方が勢いを得ている。しか し、ヘッドラインの数値に集中するあまり「木を見て森を見ず」の過ち を犯す恐れがる。

特に現在のように景気拡大局面が5年半も続いているときには強い 数値の背後に隠されている真実に目を向ける必要があろう。上記の数値 は雇用統計の事業所調査に基づくものである。

もう一つのヘッドラインである失業率は5.8%で横ばいだったと発 表された。しかし、小数点以下3桁まで計算すると、11月は5.825%と なり、10月の5.756%から0.06ポイント上昇している。

こちらは家計調査に基づいており、事業所調査とはまるで別世界の 様相を呈している。事業所調査では雇用者数が30万人以上も増えている が、家計調査に基づく就業者(自営業を含む)は4000人増と、ほとんど ほぼ横ばいにとどまった。

家計調査は事業所調査に比べサンプル数が少ないため、月間の振れ は大きいが、全体のトレンドと雇用の細目を分析する上では大きな力を 発揮する。特に、パートタイムの労働者が増えている現状で、雇用の実 態を見極めるためには、フルタイムを含む雇用形態別に集計されている 家計統計が貴重な手掛かりを提供する。

雇用のピークは景気循環の山

11月は毎週35時間以上働いたフルタイムの就業者数は前の月に比べ て15万人も減少して、1億1948万2000人となった。過去20年間を振り返 ってみると、2007年11月の1億2187万5000人が米国史上最高記録だ。そ して、今月の水準はちょうど7年前のピークを240万人近くも下回って おり、フルタイム就業者は米国経済の衰退化を如実に表している。

しかも、雇用統計は景気一致指標とされ、7年前にフルタイム就業 者数が史上最高水準に上り詰めた翌月に大恐慌以来最悪と言われる深刻 な景気後退(グレートリセッション)に突入している。

それから7年後の今年11月にフルタイム就業者数はマイナスに転じ た。09年6月を谷とする今回の景気拡大局面を見ると、今年10月の1 億1963万2000人がこれまでのピークとなっている。無論、10月の水準か ら再び増加に転じる可能性はある。しかし、来年には景気拡大が6年目 に入ることから、ピークを見極める努力はますます重要性を増す。

山頂から谷底へ

この見極め作業を怠ると、米金融政策当局の予想に振り回されて、 来年中ごろの初回利上げ見通しが独り歩きすることになりかねない。金 融政策を決める連邦公開市場委員会(FOMC)参加者は経済統計次第 と繰り返している。しかし、経済統計は過去の活動を記録したものであ る。景気循環を忘れ、景気一致指数のヘッドラインに集中していると、 拡大局面が永遠に続くように見えてくる。

特に景気悪化で希望するフルタイム職に就けずにパートタイムに甘 んじている労働者が増え、さらに二つのパートタイム職でどうにか家計 を維持している雇用者を2人とカウントする事業所調査のみに集中して いると、景気の山を見極めるのは不可能に近い。気が付いた時には谷底 に向かって落下しているということになりかねない。過去の歴史を振り 返ってみると、その繰り返しであった。

前回のグレートリセッションの時には、既に景気後退入りから9カ 月目に当たる08年8月5日のFOMC定例会合で、「会合メンバーは次 の行動が引き締めになるとの見方でおおむね一致していた」(議事録) のである。その約1カ月後にリーマン・ショックが発生した。

(【FRBウオッチ】は記者個人の見解です)

ワシントン 山広 恒夫 +1-202-624-1968 tyamahiro@bloomberg.net 記事についてのエディターへの問い合わせ先: ニューヨーク 千葉 茂 +1-212-617-3007 schiba4@bloomberg.net;

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