与党「絶対安定多数」焦点、過半数割れなら退陣と首相-衆院選

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安倍晋三首相が「アベノミクス解 散」と名付けた今回の衆院選。自民、公明の連立与党が過半数を維持し ても、どの程度議席を上積みできるかで政権の求心力は変わる。とりわ け、全常任委員会で委員長ポストを独占し、委員の数でも野党を上回っ て法案審議をスムーズに運べる「絶対安定多数」の266議席以上の維持 が焦点となる。

安倍首相は勝敗ラインを与党で過半数に設定している。1日の日本 記者クラブでの会見で、もう少し高く設定する考えはないかと問われる と、「選挙というのは常に命懸けの戦い。思い通りにはならない。慢心 した方が必ず負ける」と語った。「自公で過半数の上に1議席でも多く 積み上げできるように全力で頑張っていきたい」と表明した。

小選挙区で「0増5減」が適用される今回の選挙での定数は475。 野党第1党の民主党が決定した公認候補予定者は11月29日現在、178人 で過半数の238議席を大幅に割り込んでいる。自民党が同月28日までに 発表した公認候補予定者は小選挙区で282人、比例代表単独で56人で 計338人。公明党は12月1日午後5時現在、小選挙区9人、比例代表単 独42人で計51人の擁立を決めている。

政治評論家の森田実氏は衆院選の勝敗ラインについて「安倍首相が 言っている目標は低いという批判があるが、連立で過半数なら政権は存 続できる」と語った。同氏は与党が「そんなに減る情勢ではない」とし ながらも、仮に過半数ぎりぎりだった場合は党内に不満が出て、来年9 月に予定されている自民党総裁選で対抗馬を擁立する動きが出る可能性 もあると指摘した。

低投票率

共同通信が11月20日に配信した世論調査によると、衆院選に「大い に関心がある」と「ある程度関心がある」の合計は66.1%で、2012年衆 院選調査の78.2%を下回った。

明治大学国際総合研究所の奥村準客員研究員は、与党で300議席の 獲得もそれほど困難ではないと予測。同氏は、今回の選挙は低投票率と なり、それが結果的に創価学会などの組織票を持つ与党を利すると話し た。

安定した政権運営を可能とするための目安の一つが、「絶対安定多 数」の確保だ。定数475議席の今回の選挙では266議席となる。解散時の 自民、公明両党の勢力は議長を含め326議席。共同通信によると、自 民、公明の幹事長は同月19日の会合で、議席獲得目標を絶対安定多数を クリアする「270程度」に設定している。

自民党の谷垣禎一幹事長は同月28日、ブルームバーグ・ニュースな どとのインタビューで選挙の手ごたえについて問われ、「安定した政治 をやってほしいという声はある」と指摘。「油断をしないで脇をしめて いくことに尽きる」と話した。

民主党の福山哲郎政策調査会長は同月25日のインタビューで、「単 独で過半数を立てているわけではないので、とにかく1議席も多くとい うのが現状」と話した。

自民党総裁選

安倍首相は11月18日の会見で、「与党で過半数が得られなかった場 合、アベノミクスが否定されたことになるから私は退陣する」と表明し た。ただ、仮に与党が過半数を獲得して首相が政権を維持できた場合で も、大幅に議席を減らせば来年の自民党総裁選の動向に影響を与える可 能性がある。

上智大学法学部の三浦まり教授は、衆院議員の残り任期2年を残し て解散を決断した首相に対し、自民党内には不満が生まれていると話 す。背景には、当初自民党が予想した以上に野党間の選挙協力が進み、 選挙情勢がより厳しくなっている事情があると解説する。

村上誠一郎元行革担当相は同月21日、取材に対して「絶対安定多数 を取れないようなら責任問題」と批判している。仮に公明党が前回並み の31議席を確保した場合は、自民党は単独過半数(238)をぎりぎりで 割る235程度でも連立与党で「絶対安定多数」の266に届く。

民主党

野党では小沢一郎氏が率いる生活の党や11月28日付で解党したみん なの党の一部前職や、2012年の衆院選で比例北海道から議席を獲得した 新党大地の前職が民主党公認で立候補することになり、衆院選を前に流 動化が始まっている。

民主党の大塚耕平政策調査会長代理は同月26日のインタビューで、 同党の獲得議席数について「希望的観測では3ケタ、現実的観測では70 -80」との見通しを示した。今回の次の選挙での政権交代の実現性につ いては、今回の選挙での議席数が「3ケタになればその可能性はある」 と語った。

福山氏は同月25日のインタビューで、今回の解散を受けて野党が解 党や合流を重ねている結果として、「段階的な野党の再編にはなりつつ ある」と指摘。野党第2党の維新の党と「選挙区調整がかなり進んだこ とは大きな前進」と述べた。

維新の党

民主党と維新の党は同月21日、同一労働同一賃金法の制定など5項 目の共通政策を発表している。ただ、同月30日のフジテレビの番組で は、維新の党の橋下徹共同代表は公務員給与の削減について「民主党で は絶対できません」と発言。これに対し、民主党の海江田万里代表は 「民主党とは何ですか。人をあおるような言い方は良くない」と指摘す る場面もあった。

NHKによると、11月の調査で自民党の支持率は36.6%、民主党 は7.9%。12年12月の衆院選期間中に行われた調査では、自民党 は26.6%、民主党は16.1%だった。

--取材協力:下土井京子、アンディ・シャープ、広川高史.

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