医療や介護にしわ寄せも、消費増税先送りで「社会保障の充実」に遅れ

安倍晋三首相が消費税率の10%への 引き上げを1年半先送りしたことで、高齢者介護など社会保障に充てる 財源の確保も遠のくことになり、医療・福祉関係者から懸念の声が出て いる。

日本医療政策機構の宮田俊男エグゼクティブディレクターは、医療 改革や高齢者ケアの在宅シフトなどは「消費税増税による財源を当て込 んでおり、実現がかなり難しくなるかもしれない」と述べ、取り組もう としている勤務医や開業医、看護師、薬剤師にしわ寄せがいくだろう、 とみている。

消費税率は今年4月に8%に上げた後、来年10月に10%に引き上げ ることにより、2017年度には国・地方合わせて約14兆円の税収増が見込 まれていた。財務省の資料によると、このうち社会保障の充実に2.8兆 円程度が使われる予定だったが、消費税率が8%のままだとこの額 が1.35兆円程度にとどまり1.45兆円程度が不足する計算だ。

麻生太郎財務相は21日の会見で消費増税について「延期する以上は 社会保障の充実も見直さざるを得ない。引き上げ延期中はその範囲の中 で具体的な予算編成を優先順位をつけてやっていかざるを得ないという ことだ」と述べた。

4月の8%への消費税率引き上げに伴う増収分はほとんどが基礎年 金の国庫負担引き上げ分に充てられている。10%への引き上げによる税 収は、地域医療や認知症対策、在宅医療の推進などにより充てられるこ とになっていた。菅義偉官房長官は19日の会見で、「予算編成の中でで きることは最大限努力してできるだけ近づけていきたい」と述べた。

東大医科学研究所先端医療社会コミュニケーションシステム社会連 携研究部門の上昌広特任教授は、増税先送りは「社会保障の意味ではマ イナスだが、政治的には仕方がなかった」とみる。同時に「増税しても 赤字国債削減に使われ、実際に診療報酬はそれほど伸びない」と予想。 財源がある自治体は「高齢者を地域や在宅でみるため」人材確保などを 進められるが、できない地域の高齢者は実質的に見捨てられることにな りかねないという。

消費税率を10%に引き上げても社会保障費には「焼け石に水」と指 摘するのは慶応義塾大学の池尾和人教授。「2020年代から30年代に団塊 の世代が後期高齢者入りする。爆発的に増大する財政需要に耐えられる 財政構造にしなければならない。財政再建の中長期プランを出さないの は政治的に無責任だ」と話している。

--取材協力:下土井京子、高橋舞子.

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