ソニー:腕時計型ファッション端末を開発、電子ペーパー利用

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ソニーが、電子ペーパーを使って文 字盤とバンドの模様を変えられる腕時計型デバイスを開発していること が分かった。平井一夫社長が新設した新規事業創出部の成果の1つで、 来春にも発表される予定だ。

事情を知る3人の関係者が、発表前のため匿名で語った。関係者の 1人によると、この時計は腕の動きに合わせて模様が変わるといい、機 能よりもファッション性を重視したものになるという。

かつてブラウン管テレビやウォークマンで世界に名を馳せたソニー はいま、長期化する構造改革と人員削減の中で技術革新に向けたモチベ ーションを高める模索を続けている。新しい腕時計型端末ではそうした 取り組みの成否が試される。

特許庁の知的財産アドバイザーで一橋大学イノベーション研究セン ターの長岡貞男教授は「ソニーにはいいアイディアがたくさんあるが、 長期的なリストラでリスクを取る資金が減っている」と指摘している。

韓国サムスン電子や米アップルより先に腕時計型のウエアラブル端 末を発売したソニーは、2010年に「ライブビュー」を発売しており、そ の後「スマートウォッチ」を販売しているが、市場シェアは後発のサム スンを下回っている(調査会社スマートウォッチグループ調べ)。こう した中、ソニーは従来の事業部の枠組みを超えた新規事業創出に4月か ら着手し、ファッションアクセサリーという異なる切り口から新商品を 開発した。

収益で「四苦八苦」

平井社長は4月1日付で新規事業創出部を新設。これまでにソニー 不動産が8月から事業を開始した。電子ペーパーを使った腕時計型端末 も同部のプロジェクトだ。ほかに発光したり音を出す電子ブロックを無 線通信でつないで製品プロトタイプを考案する用具「MESH(メッシ ュ)」の開発も支援している。

「ソニーでは、新しいビジネスを考える際に、まずこんな技術があ ればいいな、こんな商品やサービスをつくろう、といった観点から入る という印象」があり、「その後で、どう商売にするか、誰をターゲット にするか、どこから収益を上げるかで四苦八苦してしまう」と、10月ま で新規事業創出部を担当していた十時裕樹氏は社内報「ソニーファミリ ー」7月号で述べている。

ソニーは新端末でデザインに着目することで、機能重視の腕時計型 端末と差別化できる可能性がある。野村総合研究所が2013年に消費者を 対象に実施したアンケート調査結果によると、腕時計型端末では、デザ インが値段と重さに次いで3つ目に重視されるポイントとして挙げられ ている。

デザイン重視

同研究所の中山太一郎主任コンサルタントは、「いまスマートウォ ッチでできることは結局全てスマホでできてしまう」ため、斬新な使い 方が求められていると述べた。さらに、消費者が現在着けている時計を 端末に替えるにはブランドとデザインが決め手だと指摘した。関係者に よると、新しい端末はソニーブランドを使わない可能性もあるという。

ウエアラブル端末の世界市場規模は14年度に2209万台となる見通し で、5年後には5倍の1億台超に伸びる(MM総研調べ)と予想されて いる。その約半数が腕時計型で、「フィットビット」のように脈拍を測 れるゴム製バンド型活動計端末から、価格が高級時計並みの「ヴェル ト」端末まで競争を繰り広げている。

新規事業創出部では平井社長直轄で社内ベンチャー育成の「SAP (シード・アクセラレーション・プログラム)」も始動させた。部門間 の垣根を越えて社員がアイデアを経営トップに提案できる場を設け、ス ピーディーに実行し、いち早く収益に結び付けるのが狙いだ。

新しい原動力

SAPは社内のアイデアを吸い上げるために3カ月に1度のオーデ ィションを行う。ソニー社外の人員も含め最大5人1チームで応募する ことができ、書類選考、ビデオ審査、そして経営陣や専門家らによる選 考にパスすれば6カ月間の事業立ち上げ期間が与えられ、所属する事業 部から離れて新規事業に専念できる。

ソニーの社内報によると6月に実施した第1回のオーディションに は187組の応募があり、80組が書類選考を通過した。関係者の話では最 終的に3組が事業立ち上げ段階に入ったという。

同社の広報担当、倉田幸治氏はコメントを避けた。

平井社長はこの取り組みについて「新しいソニーの原動力となっ て、将来的な事業の柱がいくつも育つことを期待している」と5月の経 営方針説明会で述べた。

一方、SAPに参加するためには直属上司への事前報告が必要であ るため、応募しても落選した場合に元の職場では気まずい立場になると SAPに応募したあるソニーの若手社員が匿名を条件に述べた。応募し た時点でもう後戻りはできないという覚悟が必要だという。

「ソニーの問題はイノベーションに限らない。マネジメントや企業 統治にも問題がある」とソウル大学経済学部の李根教授は話す。「社内 の事業部間の壁を取り払い、知恵を共有する場を設けることは回復へ向 かう1つの手段になるかもしれない」と述べた。李教授はサムスンがい かにしてソニーにキャッチアップできたかを著書で分析している。

ソニー株は前日終値比1.3%安の2548.5円で取引を終えた。

(更新前の記事は日付が間違っていたため訂正済みです)

--取材協力:Yuji Nakamura、Jason Clenfield.

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