【クレジット市場】ソフバンク、劣後債で二兎追う-資金需要と信用力

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米携帯電話3位のスプリント買収な ど事業拡大で負債が膨らんでいるソフトバンクは、日本の事業会社とし て初の個人向け劣後債を発行する。合併・買収(M&A)などに伴う旺 盛な資金需要と信用力維持という2つの財務戦略の両立を図る。

19日提出の発行登録書によると、劣後債は4000億円で7年債、利率 は仮条件で2.3-2.8%。12月3日に発行条件を決定する。残存期間7年 の国債利回りは0.22%。2006年の英ボーダフォン日本法人に続き、13年 にはスプリントを買収。多額の資金調達でソフバンクの自己資本比率は 低下している。

米当局の反発でTモバイルUS買収協議は8月に打ち切ったが、イ ンドに100億ドル(約1兆1800億円)の投資方針を打ち出し、なお資金 需要は大きい。米格付け2社が昨年に投機的等級に格下げする中、資金 需要と財務健全性を同時に満たせる手段が劣後債だった。

メリルリンチ日本証券の上田祐介チーフクレジットストラテジスト は、劣後債が銀行など債権者にとってバッファーになると説明。同社保 有のアリババ株上場に伴う持分変動利益5000億円もあり、「より借金し てM&Aがしやすくなった」と指摘する。劣後債は調達コストが高い が、普通社債に比べて返済優先順位が低い。

発行登録書によると、調達資金のうち、2000億円を優先出資証券の 償還に、残りを戦略的投融資に充当するという。広報担当の小寺裕恵氏 は、「将来の事業拡大に向けたM&Aをしようとなったときに迅速に対 応できるように安定的な資金調達をすることが目的」と説明。「劣後性 を有する調達を図ることで、財務の安定性を図る」と語った。

個人向け

ブルームバーグ・データで遡れる1999年以降で、事業会社が個人向 け劣後債を起債するのは例がない。

同社は「犬のお父さん」などキャラクター人気にもあやかり、個人 向け社債での調達を活発化。13年には個人向け社債を7000億円発行し、 今年は今回の劣後債を含めると1兆1000億円と、1兆円の大台を突破す る。

ジャパン・クレジット・アドバイザリーの大橋英敏社長は、今回 の4000億円規模の起債について「機関投資家のマーケットでそこまでは けるのは難しい」と指摘。BNPパリバ証券の中空麻奈チーフクレジッ トアナリストは、「孫正義社長やソフトバンク自身の人気が高い」た め、個人向け社債での調達が可能であり、「劣後債の割には極めて上乗 せ金利が少なくてよい」と、好条件での調達だと話す。

個人投資家サイドから見ても、「ソフトバンク債は日本国債よりも スプレッドが乗っている」ことが大きな利点と、中空氏は話す。今回の 社債よりも年限の長い10年物国債の終値は25日、0.45%だった。

買収と財務

ソフトバンクは4日、今期(15年3月期)の連結営業利益予想を従 来の1兆円から9000億円に下方修正。顧客減少に苦しむ米子会社スプリ ントの業績不振が理由だ。メリルの上田氏は、スプリントのテコ入れの ため、グループとして新たに資金調達し設備投資を増やす可能性がある とし、「その準備という意味でも劣後債発行は大事だ」と語った。

3月末時点の有利子負債は7兆7903億円で、13年同月末の2兆1076 億円の3.6倍に膨らんだ。スプリント買収を背景に格付け会社は同年7 月、格下げに動き、スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)はBB プラス、ムーディーズ・インベスターズ・サービスはBa1とし、とも に投機的等級に引き下げた。日本格付研究所(JCR)はAマイナス (投資適格の下から4位)としている。

ジャパン・クレジット・アドバイザリーの大橋社長は、JCRの格 付けが下がれば、ソフトバンク債は債券インデックスのNOMURA- BPIの対象銘柄から外れてしまい、「見通しがネガティブになるだけ でスプレッドはかなりワイド化する」との見方を示した。野村証券のウ ェブサイトによると、組み入れ基準はA格相当以上とされている。

劣後債は格付け評価上、一部が資本とみなされることが多いが、 JCRの主任格付けアナリストの本西明久氏は、今回の劣後債は年限が 7年と「期限ある劣後なので、資本性はない」とし、「普通社債と比べ て、格付け上何か影響が出るということはない」と指摘。社債の増加自 体よりも、「調達したものを何に使うかで評価していく」と話した。

--取材協力:Pavel Alpeyev.

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