日本取引所グループ(JPX)は、 現物株の取引時間拡大を見送る。国際金融センターとしての機能を強化 するため、海外に比べ短い日本の取引時間を拡大しようと議論、検討を 重ねてきたが、実務負担の増加につながる証券界の一部とのギャップを 埋め切れなかった。

日本取引所の斉藤惇グループ最高経営責任者(CEO)が25日の定 例会見で明らかにした。斉藤氏は、「現状では市場を開設できるほどに は機が熟していないと判断せざるを得ない。個人として、この結論は残 念」と述べた。

斉藤氏は、「取引所の立場と取引業者との立場に差がある」ことを 明らかにし、社外取締役からは非常に残念との強い意見を出された、と 言う。今後については、引き続き討議を重ねていく意向で、「近い将 来、IT技術開発が進んであらためて検討することになるのではない か」との見通しを示した。

日本取引所傘下の東京証券取引所では、日本株の魅力向上のため、 ことし2月から7月まで証券界、有識者を交えた「現物市場の取引時間 拡大に向けた研究会」を開催。7月30日に「まず夜間取引の実現の可能 性について検討をしていくことが望ましい」との報告書をまとめた。

対面証券中心に反対強い

東証が示していた夜間取引案では、午後9時から午後11時をコアタ イムとして設定。午後3時の終値を基準値段として、昼間の取引以上に 投資家保護を重視、急激な価格変動を抑制する売買精度を導入すること などが示されていた。夜間市場は昼間の延長ではなく、金融商品取引法 上の別市場として位置付けた。

会見した東証の清田瞭社長は夜間案について、「対面証券を中心と した根強い反対があった」と言う。「コスト、人員含めいろいろな負担 を強いられるが、今の段階でスタートしてもコストに見合うだけのマー ケット規模が見込めない、反対であると多数寄せられた」とし、「公正 な価格形成を担保するだけの多様な投資家が参加した取引が見込めな い」と判断したとしている。

東証では夜間案の検討を断念した後、夕方案や単純な時間延長案に ついても再検討を行った。しかし、夜間に比べ「夕方の方が優れている という意見はなかった」と清田氏。単純な時間延長についても、「終値 が後ずれし、開示情報が遅れる可能性が高い。投資信託など機関投資家 の資産評価について支障が生じると極めて消極的な意見が強い」状況だ ったと同氏は説明した。

プラス効果は限定的の声

政府の成長戦略を受け発足した「金融・ 資本市場活性化有識者会 合」は昨年12月、東京市場の魅力向上へ取引時間の拡大に取り組む必要 があると提言。日本取引所は昨年3月に示した中期経営計画の中で、新 指数の開発などと並び、「夜間現物市場の整備に係る検討本格化」を明 記していた。

現物株の取引時間はロンドンが8.5時間、ニューヨーク6.5時間で、 アジアではシンガポールが8時間、韓国6時間、香港5.5時間となって いる。東証は5時間にとどまる。

三菱UFJ投信・戦略運用部の石金淳チーフストラテジストは。取 引時間拡大を「行えば、もちろん利便性や流動性の面で多少プラスにな っただろうが、株式市場全体にはさほど影響は出ないだろう」と指摘。 時間拡大は証券会社側の問題も大きく、「結局のところ、時間を拡大す ればデメリットの方が多い。コストが合わないということが言われてい る」と話した。

--取材協力:竹生悠子.

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