ノーベル経済学賞受賞者、ポール・ クルーグマン氏の訪日予定を耳にした際、本田悦朗内閣官房参与は、再 増税をめぐる議論を慎重派に有利な方向に導く好機が到来したと思っ た。

安倍晋三首相にとって、消費税率を2015年10月に10%に引き上げる ことの是非を決断する期限が近づきつつあった。今年4月の8%への引 き上げの影響で、日本の景気は四半期ベースとして世界的な金融危機以 降で最も深刻な落ち込みに見舞われ、その後の回復の足取りもおぼつか ない状況だった。

安倍首相と30年来の知己である本田氏(59)は、4月の増税反対に 続き、15年の増税延期を首相に助言。そこに登場することになったの が、自身のコラムで日本の増税延期が必要な理由を説いていたクルーグ マン氏だった。

本田氏は20日、オフィスを構える首相官邸でインタビューに応じ、 「あれが安倍総理の決断を決定づけたと思う。クルーグマンはクルーグ マンでした。すごくパワフルだった。歴史的なミーティングと呼べるも のだった」と、首相とクルーグマン氏の会談を振り返った。

助っ人

帝国ホテルから官邸への高級車の車内で本田氏は、安倍首相との会 談がいかに重要かをクルーグマン氏(61)に説明した。増税延期で首相 を説得する手助けをクルーグマン氏にしてもらえる可能性があった。

クルーグマン氏は今月6日の首相との会談について、自身が首相の 決断に及ぼした役割の大きさには控えめな態度を示す。同氏は20日の電 話インタビューで「首相の質問には明確に答えられたと願う。私がこれ まで書いてきたようなことうまく説明できたと思うが、首相の考えにど こまで影響があったかは分からない」と話した。その上で、増税延期の 決定を「歓迎する」と語った。

海外の著名経済学者の助けを借りたいと考えていた本田氏は、クル ーグマン氏が東京での講演のため訪日することを偶然知った。「クルー グマンならと思っていたが、ミーティングのためにわざわざ日本に来て れくれないと思っていたら、たまたま日本に来ることを聞いてこれを使 わない手はないと思った」と明かす本田氏は、首相とクルーグマン氏 の20分間の会談のお膳立てに成功。会談は予定時間の倍近くに及んだ。

会談に同席した本田氏によると、クルーグマン氏は冒頭、アベノミ クスを高く評価。唯一の問題は消費増税だと訴えた。会談が終わるまで には、首相は延期を決めるだろうと本田氏は確信を持ったという。

官邸での会談

やはり会談に臨んだ浜田宏一内閣官房参与は18日のインタビュー で、「安倍首相はクルーグマン氏の説明をとても注意深く聞いていた」 と振り返り、「恐らく首相の決断を手助けしたのではないか」との認識 を示した。

安倍首相はNHKで「先般、ノーベル経済学賞受賞者のクルーグマ ン教授と話した」と言明。「彼の意見は、アベノミクスを支持する。し かし今度の消費税引き上げは慎重にいくべきだ。そうしなければ景気が 腰折れしてしまう。となればデフレから脱却できず、経済再生、財政再 建もおぼつかないという話だった。私もその通りだと思う」と述べた。

クルーグマン氏は17年4月の10%への引き上げをめぐっては、「あ る時点で歳入の拡大を図る必要がある点は理解する」とした上で、「私 としては『インフレ率が2%程度に達してから引き上げる』といった条 件付きの延期の方が望ましいと考えるが、そうした可能性がないことも 理解している」と語った。

原題:Abe Listening to Krugman After Tokyo Limo Ride on Abenomics Fate(抜粋)

--取材協力:アンディ・シャープ、高橋舞子、Isabel Reynolds.

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