伊藤教授:消費増税と日銀の同時引き締めがリスク、早急に成長戦略を

伊藤隆敏政策研究大学院大学教授 は、安倍晋三首相が日本経済の実力を高める成長戦略に早急に取り組ま なければ、2017年4月の消費増税と日本銀行による異次元緩和の手じま いが重なり、マイナス成長となる恐れがあるとみている。

伊藤教授は19日のインタビューで、消費増税の先送りは当面の景気 回復には追い風となり、日銀が2%の物価目標を「達成できる確率は高 まった」と指摘。財政と金融の同時引き締めになった場合、潜在成長率 を成長戦略で引き上げておかなければ、低成長なのに物価は上がる「ス タグフレーションに陥りかねない」と懸念を示した。

消費増税の先送りで「時間を買った」以上、景気のテコ入れを図る だけでなく、平均的な成長率の水準自体を高める必要があると主張。今 後2年程度で取り組むべき重要課題は「財政出動がなくても1.5-2% の成長が持続的になり、異次元緩和が将来なくなっても安定的に2%イ ンフレが達成できる世界を作ることだ」と述べた。

安倍首相が4月に消費税率を5%から8%に引き上げた後、国内景 気は低迷。7-9月期の実質国内総生産(GDP)速報値は前期比年 率1.6%減と予想外の2四半期連続マイナス成長となった。安倍首相 は18日、来年10月に10%へ再増税する予定を1年半延期すると表明。景 気次第で増税を回避できる景気判断条項を撤廃し、財政健全化の方針は 堅持する姿勢を示した。

相当まずい事態

伊藤教授はこれに先立つ4日、政府が消費増税を予定通り実施した 場合の影響について有識者・専門家42人に意見を聞く点検会合の第1回 に出席し、予定通りの消費増税を支持。終了後に記者団に対し、国民全 員が「生活水準を上げるには生産性の上昇しかない」と述べ、来年の通 常国会は成長戦略の実現に費やすべきだと話した。

今回のインタビューでは、消費増税の先送りは「財政再建にとって 良くない方向」としながらも、「日本国債の信認が直ちに揺らいだり、 金利が急騰することはない」と予想。その間の景気支援に成功すれば 「行く先は同じ別の道」になると述べ、増税延期に一定の理解を示し た。ただ、17年4月に再延期となれば「相当、相当まずい事態になる」 とも語った。

国債・借入金・国庫短期証券(TB)を合わせた国の債務残高は、 9月末に1038.9兆円と名目GDPの2倍超に達している。財務省の試算 では、消費税率を予定通り10%に引き上げ、平均3%の名目成長と歳出 の効率化が実現できても、予算総額から国債費を除いた基礎的財政収支 (プライマリーバランス)は20年度に6.6兆円の赤字。国際公約でもあ る同年度のPB黒字化には一段の対策が必要となる。

長期金利の指標となる新発10年物国債利回りは20日に0.465%。日 銀が2%の物価目標を達成するため、長期国債の買い入れを保有残高が 年間約80兆円に増加するよう進めている中、スイスに次ぎ世界で2番目 の低水準で推移している。

GPIF改革

伊藤教授は公的・準公的資金の運用・リスク管理を見直す政府の有 識者会議で座長を務め、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF) などの運用とガバナンス(組織統治)両面での改革を昨年11月に提言。 今月4日に始まったGPIFのガバナンス改革を検討する厚生労働省年 金部会の作業部会でも座長代理を務めている。

19日のインタビューでは、GPIFを複数の常勤理事による合議制 に改編するための法改正を「来年の通常国会で通してほしい」と発言。 増税延期法案などの審議に時間が費やされ、GPIF改革を含む成長戦 略が進まなければ「増税までに潜在成長率の引き上げが間に合わない」 と説明した。

伊藤教授は来年1月1日付で、米コロンビア大学国際公共政策大学 院の教授に就任する。政策研究大学院大教授は兼任し、夏季のみ日本で 集中講座を開く方向だ。

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