「速過ぎる」円安、120円前後がいったん底か-115円まで調整との声も

日本銀行のサプライズ緩和以降に加 速した円安はいったん調整局面を迎え、年内はテクニカル上の節目でも ある1ドル=120円前後が円の底になるとの見方が市場で出ている。

日銀が予想外の追加緩和に踏み切った先月末以降、円は対ドルで 7%下落。20日には一時2007年8月以来の安値となる118円98銭を付け た。麻生太郎財務相は21日、円の下落テンポが速過ぎると述べた。

三菱UFJモルガン・スタンレー証券の植野大作チーフ為替ストラ テジストは、「ここまで来てしまうと整数節目の119円と5の倍数節目 の120円ぐらいしかない」とし、「年内に1回120円を見に行く可能性は ある」と指摘。ただ、「定着するかどうかは別問題」だとし、日銀緩和 からの円の下げ方を考えれば「5円ぐらいの調整はある」と話した。

円相場の120円台は2007年7月が最後。当時は相対的に金利が低い 円を借り入れ、高金利の外貨で運用する円キャリートレードが全盛だっ た。過去の高値と安値から戻りのめどを判断するフィボナッチ分析によ ると、1998年8月の円安値147円66銭から2011年10月に付けた戦後最高 値75円35銭までの円の上昇幅の61.8%戻しは120円04銭となる。

クレディ・スイスのアナリスト、ジェームズ・リム氏(シンガポー ル在勤)は、「120円では値固めか調整する可能性がある」とし、調整 した場合のターゲットは115円50銭になると指摘。さらに同水準は維持 され、その後ドル・円の上昇トレンドが再開するとの見方を示した。

円は売られ過ぎ状態

ブルームバーグ・データによると、相場の勢いを判断するRSI (相対力指数、14日ベース)は10月末以降、70を上回り、円が売られ過 ぎの状態にあることを示している。短期と長期の移動平均線の乖離(か いり)から相場の転換点などを探るMACD(移動平均収束拡散法)は 足元、1998年以来の高水準にある一方、右肩上がりから横ばいとなりつ つあり、ドル・円の上昇トレンドの行き詰まりを示唆している。

クレディ・スイス・グループの元自己勘定部門トレーダーで、現在 は自身のヘッジファンドを運用するチャーリー・チャン氏は、円売りポ ジションの整理を目指している。チャン氏は、「120円を突破するかも しれないが、その水準は長続きはしない」と予想。「誰もが非常に簡単 なトレードだと思えば、この先は利益確定の動きが出てくるだろう」と 話した。

麻生財務相が円安けん制

麻生財務相は21日の閣議後会見で、この1週間の相場について「円 の下がり方のスピードのテンポは速過ぎる」と指摘。円安や円高の急激 な変動について「歓迎すべきではない」とする一方、為替は市場が決め るとして「介入してどうのこうのという話ではない」とも話した。

みずほ証券の鈴木健吾チーフFXストラテジストは、来年に向けて は円安を想定しているものの、財務相発言を受けて「直近の過熱した動 きについてはいったん調整が入る可能性が出てきた」と指摘。「山高け ればで、5円ぐらいの幅でそれなりの調整が入る可能性はある。あと2 -3円の120円よりも調整局面に入ったときのドル下落を警戒する必要 が短期的には出てきた」とみる。

財務相発言を受け、21日の東京外国為替市場で円は反発。対ドルで は117円台まで値を戻している。

ウエストパック銀行の市場ストラテジスト、イムリー・スパイザー 氏(オークランド在勤)は、財務相の発言で多少円高に振れるかもしれ ないが、「政府が介入で何かしない限り、アクションは言葉よりも強力 で、アクションとはQE(量的緩和)だ」と話した。

衆議院が21日午後、解散した。12月2日公示・14日投開票となる衆 院選では、安倍晋三首相が進めてきた経済政策「アベノミクス」を継続 するかどうかなどが争点となる。

三菱UFJモルガン証の植野氏は、「自民党が大幅に議席を減らす ような状況になれば、一時的にはアベノミクスの政権基盤が揺らぐとい うことで円高方向の材料になる可能性はある」と指摘。ただ、そこは 「絶好の押し目」になるとし、年内の120円定着は難しいが、「今のよ うな日米金融政策の違いが続き、来年いっぱいあるいは消費増税延期に よって16年いっぱいまで日銀が緩和を続けるような状況になれば、いず れ120円が主戦場になってくる」とみる。

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