GPIF:初代CIOに水野弘道氏、コラー・キャピタル幹部

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年金積立金管理運用独立行政法人( GPIF)の三谷隆博理事長は最高投資責任者(CIO)のポストを新 設し、英プライベートエクイティ(PE、未公開株)投資会社コラー・ キャピタルの水野弘道パートナーを任命する。

GPIFが公表した資料によると、水野氏(49)は来年1月5日付 で理事とCIOに就任する予定。GPIFの理事は1人と法律で定めら れており、厚生労働省出身の大久保要氏は同時に退任することになる。

GPIF企画部の森新一郎企画課長によると、水野氏は投資に関す る責任者・投資部門にいる運用スタッフを束ねる役割を担う。最終的な 意思決定者は引き続き理事長であり、CIOがどれだけ権限を持つかは 今後検討していく方針だ。任期は三谷理事長が退任する来年3月までで 、続投するには新理事長からの任命が必要だと言う。

公的・準公的資金の運用・リスク管理を見直すための政府の有識者 会議(座長:伊藤隆敏教授)は昨年11月の報告書で、GPIFがリスク 資産への本格的な投資に乗り出すには、金融に関する高度な知識と運用 経験を持つ専門家が必要だと指摘。厚労省年金部会のGPIF組織改革 に関する作業班では、複数の常勤理事による合議制での運営が望ましい との方向で議論が進んでいる。

GPIFは先月末、資産構成の見直しと同時にガバナンス体制の強 化を発表。運用委員会の下に「ガバナンス会議」を設置し、コンプライ アンス(法令順守)の責任者も任命した。GPIFを所管する塩崎恭久 厚労相は、運用見直しとガバナンス改革は「車の両輪」だと主張し、来 年初からの通常国会での法改正を目指している。

実務経験

水野氏は1965年生まれ。大阪市立大学法学部を卒業後、住友信託銀 行に入行し、米ノースウェスタン大学ケロッグ経営大学院で経営学修士 号(MBA)を取得。2003年2月にコラー・キャピタルのパートナーと なった。ロンドン在勤だが、世耕弘成官房副長官が座長の「官民ファン ド総括アドバイザリー委員会」などで有識者委員を務めている。

水野氏がパートナーを務めるコラー社のウェブサイトによると、同 氏は日本のアドバンテッジパートナーズやインドのICICI銀行との VCなど10以上のファンドでアドバイザーを務める

水野氏は12年1月、ノーベル医学生理学賞を同年受賞した山中伸弥 教授が所長を務める京都大学iPS細胞研究所の特任教授に就任。翌年 4月には同研究所のアドバイザーとなり、大阪大学大学院医学系研究科 の招聘教授にも就いた。その前月には、内閣官房の健康・医療戦略の参 与にも選ばれた。

7月からGPIF運用委員会の運用委員と、GPIFで初となるア ドバイザーを務めている同氏は、今回のCIOと理事就任に伴い、コラ ー社を退職し、運用委員職を辞任する見通しだ。運用委員会のメンバー は米沢康博委員長を含め、7人の体制となる。

専門家の起用

GPIFは運用資産が127.3兆円と世界最大規模の年金基金だが、 役職員数は10月1日時点で82人程度。塩崎厚労相は就任前の8月、ブル ームバーグが主催したセミナーで講演し、GPIFは「7人の侍」と称 されるほど少ない運用の専門家を増やす必要があると述べた。

政府は昨年12月の閣議決定で、GPIFなどの職員数や給与水準の 弾力化し、運用委員会に複数の常勤委員を置くことなど認めた。3月に はGPIFが専門家の確保に必要となる経費は、政府が独法に課した経 費節減の対象外とした。GPIFは専門人材の採用に適した給与体系を 検討中で年末までには終える予定だ。常勤理事とCIOに就く水野氏の 報酬もこの給与体系に基いて決め、就任前には公表する方針。

水野氏がパートナーを務めるコラー社は、PE部門の運用資産が07 年時点で45億ドルと世界最大だった。全米最大の公的年金、カリフォル ニア州職員退職年金基金(カルパース)も出資者の1つだ。英・オラン ダ系ロイヤル・ダッチ・シェルと10億ドル規模の共同投資(JV)も手 掛けた。

運用資産構成の見直し

政府と日本銀行が経済活性化とインフレ上昇を目指す中、GPIF は将来の金利上昇で評価損を被りかねない国内債の削減と収益向上を求 める圧力に直面。GPIFは有識者会議の提言に沿う形で、2月末に今 後5年程度で最大約27億ドルの海外インフラ投資を始めると公表した。 4月には日本株運用の委託先を7年ぶりに見直した。PEやベンチャー キャピタル(VC)に関する運用開始の発表はない。

GPIFの運用資産の保有実勢は6月末時点で国内債が53.36%、 日本株が17.26%、外債は11.06%、外株は15.98%。GPIFが目安と していた短期資産を5%と仮定した場合の構成割合は国内債が51.91% とかい離許容幅の下限を割り込み、国内株は16.79%、外債は10.76%、 外株は15.54%だった。例年だと11月末の前後に7-9月期の運用状況 を公表している。

GPIFの運用資産額は6月末時点で。10月末に発表した資産構成 の見直しでは、国内債券の目標値を従来の60%から35%に下げる一方、 内外の株式は12%ずつから25%ずつに、外国債券も11%から15%へ引き 上げた。5%だった短期資産は廃止した。まだ実績公表のないインフラ 投資やPE、不動産などはオルタナティブ(代替)投資とし、案件の特 性に応じて該当する従来の資産に区分し、全体の5%を上限とした。

資産構成の見直しに当たりGPIFは、年金財政検証の結果を踏ま え、今後10年間の金利上昇シナリオを想定。長期デフレを背景とした国 内債中心の運用から、内外の株式と債券が半分ずつで、国内資産が6割 ・外貨建て資産が4割という分散型に変えた。

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