フラッシュボーイズが米国債市場に侵攻、ボラティリティ新時代

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一瞬のうちに、債券市場のたがが外 れた。いつもと同じように始まった10月15日の米国債市場で、利回りは 約25年ぶりの大変動を演じ、投資家は波乱の時代が到来したかと不安感 を抱かされた。

この日の出来事は、高頻度トレーディングの台頭とウォール街の債 券ディーラーの衰退という2つの流れの接点で起こった。運用者らは12 兆4000億ドル(約1450兆円)規模の米国債市場で流動性が低下している と指摘する。迅速かつスムーズに売買が成立しにくくなったということ だ。

マニュライフ・アセット・マネジメント(ボストン)のシニアトレ ーダー、マイケル・ロリツィオ氏は「このところの市場の状態では、10 月15日のようなことが起こる。どう対処するかを徐々に学習しなければ ならないだろう」と話した。

10月15日の朝、これまでにないほど多くの投資家が金利上昇を予想 し米国債相場の下落を見込むポジションを組んでいた。しかしエボラ出 血熱絡みと中東紛争のニュースは暗く、ワシントン時間午前8時30分に 発表された米小売売上高は減少。これで、センチメントが一瞬のうちに 変わった。米利上げ観測は急速に後退。米国債をショート(空売り)ポ ジションにしていたトレーダーは可能な限り素早くかつ大量に買い戻す ことを迫られた。午前9時38分までには10年物米国債利回りは0.34ポイ ント低下し、5年で最大の下げを記録した。

ビアンコ・リサーチ社長のジム・ビアンコ氏らアナリストは、電子 取引を行うトレーダーらの群れ心理が原因だと指摘する。「彼らの多く はスピード一筋だ。創造性がなく皆が同じプログラムを書く。ある刺激 が与えられると全員が全く同じ瞬間に同じ結論に達する」とビアンコ氏 は語った。

ニューノーマル

高頻度トレーダー(フラッシュボーイズ)の米国債市場への影響は 増している。ニューヨークの調査会社タブ・グループによれば、来年末 までには取引の約60%が電子プラットフォームで行われるようになる見 込み。2013年は40%だった。同社のラリー・タブ最高経営責任者 (CEO)は「市場が電子的になればなるほど、変動は激しくなる。ニ ューノーマルだ」と指摘した。

ニューノーマルをもたらすもう一つの要因は08年の金融危機後に採 用された新規則だ。新銀行規則のバーゼル3では、銀行がバランスシー ト上に持つ債券などの資産に対して保有を義務付ける資本の最低要件が 引き上げられた。

この規制への対応の一環として米プライマリーディーラー22社は米 国債の保有を減らした。米当局のデータによれば、10月末は463億ドル と、13年10月の1460億ドルから減少していた。

大手銀行は引き続き債券の在庫は持っているものの、マーケットメ ークのために機会を見て大量に購入することはなくなった。米銀の自己 勘定での取引を制限するボルカー・ルールの影響もあり、大手銀は米国 債やジャンク債などの一斉売りが出た時に自ら買い取って保有すること をせず、売りの注文を現金の潤沢なヘッジファンドなどに伝えている。

DDJキャピタル・マネジメントの最高投資責任者(CIO)とし て高利回り債とローンを運用するデービッド・ブレザノ氏は「昔はディ ーラーが在庫を持つことができたので、市場の衝撃を吸収するクッショ ンとして機能した」と述べ、新規制がこれまでとは別の「金融会社に隙 間を埋める機会を与えた」と指摘した。

米商品先物取引委員会(CFTC)のマサード委員長は今月5日に 記者団に対し、10月15日の価格変動について「検証してみた」が、「基 本的に流動性の途絶は見られなかった」と述べた。

アムンディ・ブリーデン・アソシエーツの運用者、ジョン・ダンシ ング氏は、一部の市場の「流動性は見せかけだ」とし、「資本の流れを スムーズにするためにそこにあると投資家が考えていた仕組みが、壊れ つつあるのかもしれない」と話した。

米財務省の借入諮問委員会(TBAC)の13年11月の議事録によれ ばメンバーらは、「電子トレーディングによって供給される流動性」は 「市場が混乱した時に持続しない公算が大きい」と指摘した。

原題:Flash Boys Invade Treasury Bond Market in New Era of Volatility(抜粋)

--取材協力:Matthew Leising、Cecile Gutscher、Ari Altstedter、Matthew Boesler、Anchalee Worrachate、Silla Brush、Dave Michaels、Alexandra Harris.

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