【コラム】日本に必要なのは行動、総選挙ではない-ペセック

タフガイの気質を存分に示している 安倍晋三首相のような指導者が、こと日本経済に関してはなぜこれほど 臆病に振る舞うのだろうか。

いまさらあえて問い掛けるようなことではないかもしれない。安倍 首相は自身の経済政策への支持を得るため解散総選挙に踏み切る構え だ。7-9月期の実質国内総生産(GDP)速報値は前期比年率1.6% 減に沈み、2四半期連続でマイナス成長となった。安倍首相は来秋に予 定していた消費税率再引き上げの時期を延期したいと考えている。

不安定な日本経済には成長を損なう追加増税を受け入れるだけの余 裕はない。4月の消費税率引き上げ後、4-6月期の実質GDPは前期 比年率で7.3%減少した。増税撤回の是非を問題にしているわけではな い。安倍首相は年内残りの時期を選挙キャンペーンに費やして官僚や政 治家を混乱させるよりも、新たな政策を公表すべきではないのか。それ こそが問題だ。

野党の足並みが乱れている上、投票率は低くなると予想されてお り、安倍総裁率いる自民党は間違いなく圧勝して再び政権を握るだろ う。しかし安倍政権の支持率は低下している。1カ月前は52%だった が、現在は44%にとどまっているため、安倍首相が2年前の総選挙より 大きな信任を得る可能性は低い。今回の選挙が構造改革の加速にどのよ うに寄与するのか予想するのは難しい。首相が打ち出した改革の大半 は、官僚機構や各種審議会の手続きで遅々として進んでいない。

「時間の無駄」

オックスフォード・エコノミクスの資産運用サービスディレクタ ー、ガブリエル・スタイン氏は17日に都内で、「考えてほしい。これま でのアベノミクスに含まれておらず、『新アベノミクス』に含まれる新 たな要素とは一体どういうものか。どうも陽動作戦のような気がしてな らない。時間の無駄、エネルギーの無駄だ」と指摘した。

日本の政治家は困難な改革に乗り出す前に、何とかしてコンセンサ スを得ようとする。欧米で好まれている創造的破壊よりも集団の調和を 大事にする。

しかしこの2年間、安倍首相は自身の都合に合わせて、こうした伝 統を無視してきた。日本人の多くが原子力発電所の再開を望んでいない ことを気に掛ける様子もなく、首相は原発を推進。特定秘密保護法に世 論は猛反発したが、動じることはなかった。大規模な抗議活動が起きる 中で平和憲法の解釈を変え、自衛隊の海外派遣に道を開いた。

民主党の海江田万里代表は安倍首相の「権威主義的」姿勢について 話す際には明らかに偏っている。代表の主張にも1つ正しいものがあ る。首相がこれまでに成し遂げてきたことのほとんどは、それが良いも のであれ悪いものであれ、デフレを終わらせて人々の生活水準を引き上 げるという公約を果たしていないということだ。

選挙の意義

なぜある分野では中国指導者のように独裁的に振る舞い、真に重要 な問題では日本的な態度を取るのか。与党は衆参両院で過半数を占め、 安倍首相は国民の負託を得ている。にもかかわらず、1人の指導者が直 接対決するには党内各派閥と既得権益層は強力過ぎると首相は考えてい る。今回の総選挙で自民党が勝利を収め、党内の影の実力者らを向こう 4年間封じることができたなら、選挙を実施する意義もあるだろう。

それでも私は懐疑的だ。コンセンサスが何もしないことの口実にな るケースは日本では枚挙にいとまがない。海外の投資家は言うまでもな く、日本の投資家は、安倍首相が決意を表明したことから彼を支持して きた。2年を経て投資家は今、首相が改革プログラムに真剣に取り組む ことを望んでいる。貿易障壁を引き下げ、労働市場の規制を緩和し、イ ノベーションを促進し、お役所仕事をゼロにする。女性の社会進出を助 ける拘束力ある措置の法制化といった改革だ。

私は安倍首相に日本的民主主義を踏みにじるよう促しているわけで はない。首相はそれを十分にしてきた。しかし今はある程度、力を示す ときだ。それが一部のコメ農家や男性上司、官僚、労働組合を怒らせる ことになるなら、そうさせればいい。有権者が安倍首相を選んだ理由は そこにある。(ウィリアム・ペセック)

(ペセック氏はブルームバーグ・ビューのコラムニストです。コラ ムの内容は同氏自身の見解です。同氏のツイッターは@williampesek

原文:What Japan Needs Is Action, Not Another Election: William Pesek(抜粋)

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