【クレジット市場】増税延期を海外勢懸念、ドル社債コスト押し上げも

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日本企業が発行するドル建て社債の 信用コストに上昇の可能性があるとの見方が浮上している。安倍政権 が18日発表した消費増税延期方針を事前に織り込み、海外勢中心の CDS市場では日本国債の信用力に影響が出始めており、ドル債への連 鎖を予想する向きがある。

CMAによると、日本銀行が追加金融緩和を打ち出した10月31日以 降、日本国債のドル建てCDSは12ベーシスポイント(bp)上昇 し、18日には昨年10月以来で最高の57.7bpを付けた。これに対し、国 内投資家が取引の中心の日本企業CDSで構成するマークイットiTr axx日本指数は同じ期間に3.2bp低下し61.8bp。両数値の差は同 日、データが入手可能な2007年9月以降で最小の4.1bpに縮まった。

メリルリンチ日本証券の上田祐介チーフクレジットストラテジスト は、日銀が追加緩和で国債購入を大盤振る舞いする中で、「増税はしな いという日本政府に対する懸念」が海外投資家には根強いと指摘。政府 や日銀を信任する「国内勢とは温度差がある」とし、「ドルの世界の人 は、日本国が悪化すると日本企業も悪化すると思う人が大半」のため、 日本企業のドル建て債にも影響が出るとの見方を示した。

内閣府が17日に発表した7-9月期の実質国内総生産(GDP)速 報値は前期比年率1.6%減。事前のプラス予想に反し、2四半期連続の マイナス成長となった。安倍晋三首相は18日の記者会見で、「デフレ脱 却を危うくする」として、消費再増税の実施を当初予定の15年10月か ら17年4月に延期するとともに、信を問うため、21日に衆院解散に踏み 切る考えを表明した。

ドル債

ナティクシス日本証券のローラン・デュプス社長は、外国人投資家 にとって増税延期は「少し不安要素だ」と指摘。安倍政権については 「何もやらなかった以前の政権と比べれば、改革が動き始めているが、 十分ではない」との見方を示した。

ブルームバーグ・データによると、1月から9月25日までの日本企 業(金融機関を含む)のドル債発行額は460億ドル(約5兆円)と、デ ータでさかのぼれる99年以降最大。海外展開の積極化を背景に三菱 UFJフィナンシャル・グループやみずほフィナンシャルグループ、三 井住友フィナンシャルグループ(持ち株会社または傘下の銀行)のメガ バンク3行の合計で238億ドルと全体の51%を占めた。

事業会社では、海外企業買収に伴う資金調達としてサントリ・ホー ルディングスが10月に外債を発行。また、ソフトバンクが米スプリント 買収に伴い、昨年発行したドル債(20年4月償還)の対米国債スプレッ ドは、10月31日の253bpから14日には279bpに上昇した。

メリルリンチ日本証券の上田氏は、日本の国債CDSやドル債に投 資する海外ファンドは、休暇で流動性が下がる12月10日からはポジショ ンを減らす傾向があるので、「本格的に仕掛けてくるとすると1月頭」 からになるとの見方を示した。

財政再建

日銀は10月31日の金融政策決定会合で、長期国債の買い入れを「保 有残高が年間約80兆円に相当するペース」に増やすなどとした追加金融 緩和に踏み切った。黒田東彦総裁は同日の会見で、「消費税率の2段階 での引き上げは法律で決まっていることなので、それを前提にして見通 しを立て、あるいは金融政策を運営している」と述べた。

しかし、9日付の読売新聞は、消費税率10%への引き上げを安倍首 相が先送りする場合、今国会で衆院解散・総選挙に踏み切る方向で検討 していると報道。市場も「増税延期・解散」を織り込み始め、株高・長 期金利上昇に反応していた。安倍首相は18日の会見で、「財政再建の旗 は降ろさない」として、増税の再延期はしない考えを強調した。

BNPパリバ証券の中空麻奈チーフクレジットアナリストは、消費 増税の先送りについて「財政再建に対してはネガティブ」と指摘。黒田 総裁が増税を前提に緩和した旨の発言をしているとして、選挙後にアベ ノミクスの「第2幕が開くのか、金融政策もそろってやってくれるかま だ分からない」と述べた。

格付投資情報センター(R&I)は19日のニュースリリースで、日 本のソブリン格付け(現在はAA+)を今回の増税延期判断だけをもっ て変更はしないものの、先行きの信用力を占う上で「懸念が増大してい る」と指摘した。

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