池尾慶応大教授:消費増税先送りは「世も末」

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池尾和人慶応大教授は消費増税が先 送りされるとの観測が強まっている中、「世も末だ。低金利が続き、財 政赤字を埋める資金調達が低廉で済んでいる中で、緊急的な財政再建の 必要性が政治的に認識されていない」との見解を示した。

08年に日本銀行の審議委員候補となった池尾氏は13日、ブルームバ ーグ・ニュースとのインタビューで、来年10月に予定通り税率を10%に 引き上げても、財政赤字に歯止めをかけるには不十分だとし、併せて中 長期的な財政再建プランを示すべきだとも述べた。

池尾氏は「10%に引き上げても焼け石に水。2020年代から30年代に 『団塊の世代』が後期高齢者入りする。爆発的に増大する財政需要に耐 えられる財政構造にしなければならない」と指摘。先送りに伴い、「財 政再建の中長期プランを出さないのは政治的に無責任だ」と述べた。

一方で、消費税率については付加価値税を導入している欧州では軽 減税率を含めて平均的に20%程度だとし、「どう考えても20%がいいと ころだ。20%を上限に他の税を上げるか、徹底的に歳出を切らない限り は債務が発散していく」との見方を示した。

国民に信を問う

安倍晋三首相はこれまで17日に発表される7-9月期の国内総生産 (GDP)の結果などを参考に消費増税を年内に判断すると発言してき た。しかし、今年4月の消費増税後の景気の落ち込みが予想外に大き く、デフレ脱却時期が後ずれする見込みが強まっていることから、解散 総選挙に踏み出し、国民に信を問うとの見方が強まっている。

池尾氏は「安倍政権は決める政治ということで政治的な不確実性が 随分後退し、それが経済活動にプラスだった。ここにきて必要でも傷み を伴う政策は決められないとの不確実性が高まり、それ自体が経済活動 に抑制的に作用する可能性がある」と危惧を示した。

池尾氏は「デフレの原因は需要が弱いこと。それは日本の供給力が 弱いからだ。将来、供給力が強化されても、経済成長する見通しが持て なくなれば消費を手控え、足元の需要が弱くなりがちだ」と指摘した。

その上で、「日本のデフレはスタグネーション(景気停滞)の結果 だ。インフレーションにしたらスタグフレーションになり、かえって悪 化する」と懸念するとともに、「成長戦略を地道に実行し、じっくりと 体質改善する以外、日本経済がよくなる道はない」と強調した。

追加金融緩和は奇襲作戦

物価目標達成は原油価格の下落を背景に達成困難との見方が広がっ ている。池尾氏は「原油価格が下がってきたことは基本的に日本経済に は好材料だ。それなら物価が上がらなくなると、今回の政策を発動し た。せっかくの交易条件の改善が帳消しになって良いことはない」と疑 問視。

その上で、「物価目標2%は、コストプッシュ的な形で上がっても 生活は良くならない。原油が下がって物価が上がらなくなるから困ると いうのも無理がある」と述べ、安倍政権として2年で2%の物価目標を 達成するとした政府の方針を見直す必要性があるとした。

日銀の黒田東彦総裁は先月31日の金融政策決定会合で、物価目標の 2%達成の実現に向けて予想外の追加緩和に踏み切り、急激に円安・株 高が進んだ。これに対して、池尾氏は「奇襲作戦は戦力が乏しい軍隊が やる。今や金融政策の効果は資産価格しかない」と指摘した。

一方で、「2020年-30年代にはインフレになる。国内供給力が乏し くなる中で財政需要を含めた需要が増えていくという意味でのディマン ドプル(需要による)インフレでいいインフレだとは言わない」との見 通しを示すとともに、その際に「一番考え得るリスクで怖いのは円がど んどん下がるキャピタルフライト(資本の逃避)だ」と語った。

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