日米同盟に影落とす沖縄戦の記憶-16日に知事選、普天間移設など争点

1945年の夏。11歳だった玉寄哲永さ んは、ありあわせの白旗を掲げながら、米軍に投降した。足元にはハエ がたかった日本兵の遺体。貧しい11歳の少年だった玉寄さんも今や白髪 頭の80歳のお年寄りになっている。

玉寄さんの一家は爆撃で家を失った。何カ月も島をさまよう日々。 ほとんど食べ物がない状況だった。第2次世界大戦の激戦地となった沖 縄はその後30年間、米軍の占領下にあった。そんな玉寄さんたちの世代 には戦争の記憶を心に刻んでいるだけに、平和への思いも強い。

沖縄県では16日に知事選挙が行われる。安倍晋三政権が進める米海 兵隊普天間飛行場(宜野湾市)の名護市辺野古への移設の是非などが争 点になっている。

玉寄さんは那覇市での取材で、日本政府は沖縄が嫌っている基地を 無理にはめ込もうとしている、と見ている。沖縄の世論を「無視してい る」と話した。知事選では普天間飛行場の県内移設に反対している翁長 雄志前那覇市長を支持しているという。

日米が普天間飛行場の返還で合意したのは1996年。日本政府は今年 に入ってようやく代替施設の建設予定地である辺野古沿岸の埋め立てに 向けた海底ボーリング調査に着手したばかり。反対派が知事となってこ れに抵抗すれば普天間移設問題は暗礁に乗り上げる可能性もある。米シ ンクタンク、スティムソン・センターの辰巳由紀主任研究員は、翁長氏 が勝利すれば日米同盟には影響があるだろうと、分析する。

沖縄県知事選にはこのほか、辺野古移設を容認した現職の仲井真弘 多氏、普天間移設に関する県民投票を訴える下地幹郎元郵政改革担当 相、歌手で元参院議員の喜納昌吉氏も出馬している。

世論

日本の国土の1%に満たない沖縄県には、約3万8000人の在日米軍 の3分の2以上が集中する。 米国にとって沖縄の基地は戦略上の重要 拠点だ。東京より上海に近く、朝鮮戦争やベトナム戦争では米軍の重要 な出撃拠点となった。尖閣諸島は沖縄県に属している。

琉球新報社のウェブサイトによると、同社と沖縄テレビ放送が8月 に県内を対象に行った世論調査では80%以上が普天間飛行場の名護市へ の移設作業は中止すべきだ、と回答した。

鳩山政権

日米同盟の維持と沖縄の人々の怒りへの対応は、歴代政権を悩ませ てきた。民主党の鳩山由紀夫政権は普天間飛行場の移設問題をめぐって 迷走し、2009年の衆院選での政権交代から、わずか約9カ月間で退陣に 追い込まれた。

民主党の野田佳彦前首相は、移設をめぐって血が流れる状態であれ ば、国は無理して進めなくなる、と指摘。移設計画は「知事を先頭にし て反対するような状況だと厳しい」と述べた。10月のブルームバーグ・ ニュースなどとのインタビューで語った。

翁長氏が勝利すれば、名護市長選挙で稲嶺進氏が再選したのに続く 関係自治体で反対派の勝利となる。

選挙

現職の仲井真知事は昨年12月、辺野古移の受け入れを表明した。安 倍政権は2021年まで毎年3000億円の沖縄振興予算を確保することを約束 した直後のことだった。翁長氏はこの点について「ウチナーンチュ(沖 縄人)の誇りが大変、傷つけられた」と批判する。日本の本土や米国に 対し、沖縄はお金をあげれば基地を受け入れるという誤ったメッセージ を日本の本土や米国に送ることになったからだという。

仲井真氏を支持している高良倉吉副知事は、日米同盟は「日本の安 全保障を確保する極めて大事な存在」と指摘。日米同盟によって日本の 安全保障は安定し、経済発展ができたというのが仲井真氏の県政の認識 と説明する。

原題:Memories of Okinawa Battle Hang Over Abe Bid to Boost U.S.

--取材協力:広川高史、上野英治郎.

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