【クレジット市場】野村、信用リスクに変化-好業績、金融緩和

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野村ホールディングスの信用リスク に変化が出始めた。第2四半期(7-9月)決算で海外事業の黒字化の 見通しが鮮明になったのに加え、日本銀行の追加金融緩和を背景とした 業績向上期待から株価は直近安値より26%上昇、ブルームバーグのモデ ルに基づくデフォルトリスクが低下している。

株価や債務残高、金利コストなどに基づくブルームバーグ・デフォ ルトリスク・モデルによると、野村HDが1年以内にデフォルト(債務 不履行)に陥る確率は0.53%と、10月16日の0.62%から低下した。一 方、利回りスプレッドやクレジット・デフォルト・スワップ(CDS) での保証コストにあまり変化はない。

海外を中心に10億ドルのコスト削減を完了した永井浩二最高経営責 任者(CEO)は、国内業務ではこれまで偏重していた株式売買などに 伴う手数料依存型から、安定収益確保のため資産管理型営業へとビジネ スモデルの改革を行っている。10月に決定した日銀の追加金融緩和によ る日本株の上昇や、9日の米ムーディーズによる格上げは野村のさらな る業績改善に追い風となる見込みだ。

ジャパン・クレジット・アドバイザリー(JCA)の大橋英敏社長 は野村について、「業績的には悪くない」と述べ、「昔のようなリスク を取っていない」と評価。CDSスプレッドについても「トリプルB格 で60bp、70bpの銘柄もある中、野村はファンダメンタルズがいいの にもかかわらず、それより高く、出遅れ感がある」と指摘した。

「歓迎したい」

野村の柏木茂介財務統括責任者(CFO)は4日ブルームバーグ・ ニュースの取材に応じ、日銀の追加金融緩和について「消費増税を後押 しするような議論で、日本が中長期的に健全な方向に行くことをグイッ と引っ張る。歓迎したい」と述べた。その上で、日本企業による資金調 達や企業の合併・買収(M&A)など「今後も企業経営者のマインドセ ットがポジティブに、それがさらに後押しされるようになっていって欲 しい」と語った。

4日の日本株相場は続伸。前週末の10月31日に、日銀は市場の予想 に反して金融緩和を強化した。

海外全地域で

野村HDの株価は先週の決算発表以降、昨日までに19%上昇した。 同社は28日、四半期決算がアナリスト予想を上回り、アジア、欧州、米 州の全地域で今期末までに黒字化を達成、さらに2016年3月期に税引前 利益500億円を計上することに自信を示した。その後日銀が追加の金融 緩和政策を発表して以降、同株価は2日連続で続伸した。

CMAのデータによれば、野村債を5年間保証するCDSのスプレ ッドは今四半期に入り2.9ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%) 上昇し、4日は85bpで終了した。3月20日には115bpに達してい た。ムーディーズは野村の格付けを投資適格の最低の「Baa3」から 2段階引き上げた。国内リテール事業の収益力などを評価した。

ブルームバーグのデータによれば、野村債(表面利率0.723%、21 年償還)のスプレッドは10月31日に37.4bp。ムーディーズが格付けを 引き上げた同月9日は36.3bpだった。

格付け見直しの条件

野村の発表資料によれば、国内営業部門の顧客資産残高は9月末時 点で99兆3000億円と3月末の91兆7000億円から8.3%増加している。永 井CEOは16年3月までに残高を100兆円に、2020年に150兆円にするこ とを目標にしている。

スタンダード・アンド・プアーズの館野千鶴主席アナリストは、 「野村はここ数年コスト削減に加えリスクの高い資産を減らしており、 収益の安定性は改善している」と分析した。

また、日銀の金融緩和の影響について、「株高、円安が続けば収益 にはプラス。顧客の投資意欲が継続すればアセット自体が増えていくこ とになり安定収益につながる」と評価。また「株高で企業のエクイティ ファイナンス意欲が高まれば投資銀行案件が増える可能性」があり、フ ィー獲得につながると述べた。

S&Pは野村の現在の格付け見通し「安定的」を中期的に維持する としている。館野主席アナリストは、今後の見直しの条件として、収益 環境が悪いときでも野村がある程度の利益を確保できるか、大幅な赤字 には陥らないことが必要なほか、予想外の損失リスクに対して十分な収 益バッファーと自己資本が求められるとしている。

サステナビリティ

シンガポールで勤務する債券調査会社クレジットサイツのデービッ ド・マーシャル氏は、「野村の収益性は間違いなく向上した」と電子メ ールで述べた。一方で「これを持続できるかどうかはアベノミクスが株 式市場の活況だけでなく、日本経済を継続的に成長させることができる か次第であり、我々はそれには懐疑的なままである」と語った。

日経平均株価は5日、前日の終値から74円85銭(0.4%)高の1 万6937円32銭で取引を終え、07年10月以来の最高値となった。一方、野 村HDの株価は2円(0.3%)安の725円で取引を終えた。同社株は決算 発表以降大幅に上昇したが、およそ7月以来の水準にとどまっている。

--取材協力:呉太淳、Katrina Nicholas.

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