5対4の薄氷決定がもたらす不透明感、日銀2審議委員が来年任期切れ

日本銀行は10月31日の金融政策決定 会合で追加緩和に踏み切ることを5対4で決めた。賛成票を投じた宮尾 龍蔵審議委員は来年3月、反対票を投じた森本宜久審議委員は6月に任 期が訪れる。今回の追加緩和をもってしても物価目標2%への道は遠 く、さらなる追加緩和は必至との見方が根強い。審議委員人事が次の一 手の不確定要因となる可能性を指摘する声もある。

日銀は長期国債の買い入れを「保有残高が年間約80兆円に相当する ペース」に増やすほか、指数連動型上場投資信託(ETF)と不動産投 資信託(J-REIT)の買い入れも「それぞれ年間約3兆円、年間 約900億円に相当するペース」に拡大。この決定に対して、木内登英、 佐藤健裕、森本宜久、石田浩二の4審議委員が反対票を投じた。

賛成5、反対4と僅差になったのは、リーマン・ショック後の2008 年10月31日、利下げ決定時の4対4になった時以来。当時は衆参ねじれ 現象のあおりを受けて審議委員が1人欠員の中、無担保コール翌日物金 利の誘導目標を0.2%引き下げる議長案に対し、4人が反対。賛否同数 となったため日銀法18条2項の規定に基づき、議長が可決と決した。

当時反対した委員のうち3人は追加緩和自体には賛成しており、反 対の主な理由は0.2%という中途半端な引き下げ幅ではなく0.25%にす べきだ、というものだった。今回は追加緩和の是非で票が割れた。

JPモルガン証券の足立正道シニアエコノミストは「来年の日銀政 策委員会に何が起きるかについては大きな不確実性がある。政治家は自 分の利益のために動く。日銀の衝撃的な政策がうまくいかない場合、審 議委員人事で黒田総裁に反対する人に投票する可能性もある」と述べ た。

宮尾委員

今回、4人の反対が出たことについて、大和証券の野口麻衣子シニ アエコノミストは10月31日のリポートで「既に異次元の域で実行してい る緩和策を、さらに拡充した場合、想定される効果を上回るコストを負 うことになりかねない」と述べ、いずれ正常化に向かう際の混乱増幅な どに関して「躊躇(ちゅうちょ)する委員が多かったのだろう」と指摘 した。

その上で、宮尾委員について「任期が来年3月下旬までであり、再 任されない限り、一段と異次元の度合いが増すことになる措置のてん末 について、責任を負うべき立場でなくなる委員の行動により、先行きの 方向性が決まったことに対して、危うさを感じざるを得ない」という。

日銀は31日公表した経済・物価情勢の展望(展望リポート)で生鮮 食品を除くコア消費者物価(CPI)前年比(委員の中央値、消費増税 の影響除く)について、2014年度を1.3%上昇を1.2%上昇に、15年度 を1.9%上昇から1.7%上昇に下方修正した。

追加緩和を受けて3日の海外市場では一時、7年ぶりに1ドル =114円台まで円安が進んだ。JPモルガン証券は4日のリポートで 「原油価格が現状並みでドル円が1ドル=120円まで上伸したとして も、15年度中のインフレ率の2%達成の可能性が大きく高まったとは考 え難い」と指摘。「引き続き日銀の次の一手が注目されることになろ う」と指摘する。

今回以上の混乱も

SMBC日興証券の牧野潤一チーフエコノミストは4日のリポート で「弊社予想ではコアCPIは15年3月に前年比0.5%程度まで低下す る見込みであり、日銀見通しは到底実現不可能である。来年4月の展望 リポート公表時に再び追加緩和に追い込まれよう」と指摘する。

三井住友アセットマネジメントの武藤弘明シニアエコノミストは 「来年度以降にもう一回物価見通しを下方修正する段になっては、さす がにメーンシナリオの変更が必要となろう。しかし今回でさえ5対4と ぎりぎりの決定であったことを考えると、次の追加アクションのときは 今回以上の混乱が広がることが懸念される」としている。

--取材協力:James Mayger.

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