GPIFは日本株24%に倍増・国内債40%か-新資産構成市場予想

年金積立金管理運用独立行政法人( GPIF)は近く公表する資産構成見直しで、日本株式の目標値を倍増 させ、国内債券は40%に引き下げると、市場関係者は予想する。5月の 予想調査と比べ、日本株は4ポイント上方修正されたが国内債は同水準 だった。

ブルームバーグ・ニュースが22日-28日に運用担当者やアナリスト ら12人に聞いたところ、現在12%となっている国内株の目標値は24%( 中央値)と予想。5月の調査では20%だった。両方の調査に答えた6人 中、5人が予測値を上方修正した。クレディ・アグリコル証券やバーク レイズ証券は市場の期待が高まっている分、発表後は短期的には日本株 売りが膨らみやすいと読む。

国内債については5月調査と変わらず、現在の6割から3分の1減 らして40%に下げると回答。7人が40%と答え、45%以上は4人だった 。外国債券は11%から13.5%に、外国株式は12%から15%に増やすと予 想。短期資産は5%だった。オルタナティブ(代替)投資を新設すると の見方は4人にとどまった。

安倍晋三首相と日本銀行の黒田東彦総裁が経済活性化と2%インフ レを目指す中、GPIFは将来の金利上昇で評価損を被りかねない国内 債の削減と収益向上を求める圧力に直面。昨年6月には資産構成を2006 年の創立後、初めて変更した。政府の有識者会議は昨年11月、国内債偏 重の見直しやリスク資産の拡大を提言。安倍首相はかねてより、資産構 成の早期見直しを求めている

「うわさで買って事実で売れ」

クレディ・アグリコル証券の尾形和彦チーフエコノミストは、GP IFが新たな資産構成を発表しても「直ちに大きく動く必要はない」た め、日本株は「ひとまずは『うわさで買って事実で売れ』といった反応 になるかもしれない」と予想。中長期的には「需給のタイト化を通じ、 じわじわと株価を押し上げていくだろう」と語った。

公的年金制度は09年度以降、高齢化で膨張する年金給付を保険料や 税金などで賄い切れず、GPIFの運用益と積立金の取り崩しに依存し ている。約100年間の持続可能性を5年ごとに見直す年金財政検証の結 果が6月に公表されたのを受け、GPIFは7月から見直し作業を本格 化させた。

GPIF運用委員会の米沢康博委員長は6月、日経新聞とのインタ ビューで、保有する国内株の割合をブルームバーグ・ニュースの5月の 市場予想調査が示した20%に増やす可能性を示唆。国内株価が下落基調 を強めていた8月初旬には、ロイター通信が政府・与党関係者が国内債 40%、国内株20%超などで調整を本格化させる見通しだと伝えた。

株価支援の思惑

18日付の日経新聞はGPIFが国内株の目標値を20%台半ばへ大幅 に引き上げる方向で調整に入ったと報じた。今月下旬にも運用委員会で 決める新たな資産構成で、外債と外株も合計23%から30%程度まで高め る一方、国内債は60%から40%台に下げる方向だと伝えた。

TOPIXは週明け20日、終値ベースの上昇率が4%と昨年6月以 来の高さを記録。安倍内閣が一部閣僚の辞任騒ぎと内閣支持率の低下に 直面する中、3週間で12%に及んだ下落に歯止めがかかった。クレディ ・アグリコル証券の尾形氏は「政治的な理由、株式市場を押し上げたい という思惑もあるのではないか」と話した。同社は5月調査で22%とし た国内株の予測値を今回25%に引き上げた。

BNPパリバ証券の藤木智久チーフ債券ストラテジストは「口先介 入ではないか」としながらも、国内株の予測値を1人だけ前回から変え なかった。22%は資産配分の組み合わせによるリスクと期待収益率の関 係を示す「有効フロンティア」の理論に基づいた推計だと説明した。

有効フロンティア

厚生年金と国民年金の運用資産127.3兆円を抱えるGPIFの資産 構成の目標値は現在、国内債が60%、国内株が12%、外債が11%、外株 が12%、短期資産が5%。目標値からの乖離(かいり)許容幅は、国内 債が上下8%ずつ、国内株が同6%ずつ、外債と外株が同5%ずつとし ている。

6月末の保有実勢は国内債が53.36%、日本株が17.26%、外債が

11.06%、外株が15.98%。GPIFが目安としている短期資産を5%と 仮定した場合の構成割合は国内債が51.91%とかい離許容幅の下限を割 り込み、国内株は16.79%、外債は10.76%、外株は15.54%だった。

バークレイズ証券の福永顕人チーフ債券ストラテジストは、GPI Fの新資産構成は「安倍内閣が市場心理を好転させる手段となっている 」と言う。同社は国内株の構成比率を25%と予測。GPIFが過去のデ ータでなく、日銀が2%の物価目標を達成するなどの新たなマクロ経済 見通しに基づけば、有効フロンティアの計算上、期待収益率が変わって くると説明した。

今回の調査では、外債の予想中央値は13.5%で5月調査より0.5ポ イント低下。外株も15%と2ポイント後退した。BNPパリバ証券の藤 木氏は「国内金利が低すぎるからリスク資産を増やすのに、海外金利も 低い中で外債を増やすのは見直しの趣旨に反する」と説明した。

「干天の慈雨」

JPモルガン・アセット・マネジメントの塚谷厳治債券運用部長は 、5月調査の頃は円安につながる外貨建て資産に多く配分すると分析し ていたが「最近の流れは日本株重視に傾いている」と読む。「円安進行 に対して国内から批判が出てきたため、行き過ぎた円安は避けたいので はないか」と言う。

日銀が2%の物価目標を達成するため、巨額の国債購入でマネタリ ーベースを年60兆-70兆円増やす「量的・質的金融緩和」を導入した昨 年4月以降。金融市場では、株高・円安が進む一方、長期金利は24日に

0.46%と昨年4月以来の水準に低下した。国庫短期証券(TB)の一部 利回りは先月からマイナス金利状態にある。

GPIFの国債保有をめぐっては、今回の調査も5月調査と同様に 中央値でみて40%と、現在の目標値に比べ20ポイント引き下げが見込ま れている。6月末の実勢と比べても一段の保有減少となる見通しだが、 市場関係者は金利急騰(価格は急落)を懸念していない。バークレイズ 証券の福永氏は「日銀の巨額購入で国債の品薄感が強まっているため、 GPIFが売却に動いても需給が崩れるとは考えられない」と指摘。む しろ「債券市場には『干天の慈雨』になる」と述べた。

日本株に8.6兆円

市場関係者の予想通りにGPIFが国内債の目標値を40%に下げた 場合、満期償還分の再投資抑制や市場での売却が6月末の保有実勢から 約17兆円必要になる。日本株を24%に引き上げるには約8.6兆円、外債 の13.5%には約3.1兆円の積み増し需要が起きる見込みだ。半面、外株 はすでに15%を超えているため、約1.2兆円減らす計算になる。

SMBC日興証券株式調査部の圷正嗣ストラテジストは、GPIF の資産構成見直しは発表後も日本株の支えになると読む。「発表内容を 見極めてから動き出したい投資家も大勢いる。共済年金などにも影響を もたらす」と言う。外貨建て資産の購入による円安も追い風となり、T OPIXは年末に1400に上昇すると予想する。今回の調査の中央値でも 1350と出ており、昨日の終値より6%以上高くなるとみられている。

公務員や大学関係者らが加入する約51兆円規模の共済年金は来年10 月にGPIFと運用を一元化し、利回り目標やリスク許容度などを共有 する。国内債の割合が高い主要3共済の運用資産は3月末時点で合計約

30.4兆円。地方自治体の各種年金が合計約21兆円だ。

公的・準公的資金の運用・リスク管理を見直す政府の有識者会議で 座長を務めた伊藤隆敏政策研究大学院大学教授は6月のインタビューで 、GPIFが資産構成の見直しを今秋に前倒しするため、3共済と共同 で策定する「モデルポートフォリオ」は有名無実化すると予想。3共済 はGPIFの新資産構成を「見習うしかない」と語った。

GPIF運用委員会の米沢委員長は7月のインタビューで、発表前 に売買に動くのが最善だが、GPIFは「公的な存在なので、市場を不 必要に荒らすことだけは避けなくてはならない」とし、資産構成の見直 しが大規模になる場合は「最初に公表してから動く方法もあり得る」と 語った

伊藤教授は14日のインタビューで、望ましい資産構成は国内債が35 %、日本株と外株は25%ずつ、外債は横ばいの11%程度だと話した。現 在は外債に含まれる代替投資を5%程度で新設する可能性もあると指摘 した。国債売却や日本株買い増しを進める前の発表は「ばかげた話」だ と述べ、GPIFは資産入れ替えをすぐ始めるべきだと述べた。

日本証券業協会の統計によると、GPIFなど年金基金の売買動向 を映す「信託銀行」は8月に中・長期・超長期国債を8374億円売り越し た。9月は8381億円買い越した。東京証券取引所のデータでは「信託銀 行」は13日から17日の週に日本株を1894億円買い越した。直近12週間の 資金流入額は累計で7000億円近くに上った。

GPIFは4月に公表した「平成26年度計画」で、資産構成の見直 しに伴う資産入れ替えを視野に、乖離許容幅を「弾力的に適用する」方 針を表明した。

バンテージ・キャピタル・マーケットのエクイティ・デリバティブ ・ヘッド、スチュアート・ビーヴィス氏(香港在勤)は、市場関係者は GPIFの発表を待たずに国内株を買い始めていると指摘。投資家が今 後どうするかはGPIFが資産入れ替えのタイミングや購入対象などの 「詳細をどれだけ公表するかによる」が、GPIFが「すべて市場に公 表するのはあり得ない」とみている。

         国内債 国内株 外債 外株 短期 オルタナ
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中央値       40   24   13.5 15   5   0

アリアンツ     45   23   11  12   5   4
AMPキャピタル  45   22   13  15   5
バークレイズ証券  40   25   15  15   5
ベアリング投信   45   22   11  12   5   5
BNPパリバ証券  40   22   11  22   5
C・アグリコル証券 40   25   15  15   5
ドイツ証券     40   25   14  16   5
JPモルガンAM  40   25   14  16   5
セゾン投信     50   20   11  14   5
SMBC日興証券  40   25   15  15   5
三井住友AM    40   20   14  16   5   5
バンテージCM   37.5  25   10  22.5      5

年末予測値    10年債利回り TOPIX ドル/円
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中央値       0.5      1,350    109.5

アリアンツ     0.5      1,350    108
AMPキャピタル  0.51     1,360    112
バークレイズ証券  0.55
ベアリング投信   0.5      1,235    104
BNPパリバ証券  0.6            112
C・アグリコル証券 0.55     1,380    111
ドイツ証券     0.55     1,350    112
JPモルガンAM  0.5            108
セゾン投信     0.5      1,200    105
SMBC日興証券         1,400
三井住友AM    0.5      1,325    108
バンテージCM   0.45     1,350    112
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