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16歳の社長、クラウドファンドで学生の起業支援-投資で社会還元

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三上洋一郎さんは15歳の時に、イン ターネットで事業資金を募る学生向けクラウドファンディング会社 GNEXを起業した。尊敬するソフトバンクの孫正義社長と同様に高校 1年の終了と同時に自主退学。現在16歳で社長業を務めている。

今は投資資金がないため、投資家と起業家をつなぐ仕事をしている が、将来の夢はプロの投資家。海外で買収を続ける孫氏を「会社、従業 員、社会に価値を還元し、会社を育てている」と尊敬し、投資の魅力は 「専門外の領域でも間接的に関わって、会社を大きくして社会にインパ クトを与えられること」と話す。

父親の書棚に並んだ株式投資の本を読んだことをきっかけに、小学 3年生の時に数万円で株を買い、数千円の利益を得た。それを元手に世 界最大のクラウドファンディングサイト「キックスターター」を通じて 出資。ほかの学生達にも社会に触れる機会を提供したいと、学生向けク ラウドファンディングに行きついた。

グローバル・アントレプレナーシップ・モニター(GEM)による と、2013年の起業の活発度を示す起業活動率(TEA)は、主要7カ国 (G7)の間で、米国やカナダが10%を超えているのに対し、日本 は3.7%と、イタリアの3.4%に次いで低い。起業家に対する評価や社会 的な地位に対する評価も日本はG7のうち最低となっている。

その背景について、青山学院大学大学院の国際マネジメント研究科 非常勤講師、熊平美香氏は「日本では親の多くは良い大学に行き、大企 業に就職することが幸せな道と信じているため」と分析する。しかし、 マクドナルドのようにネット環境の整った場所とパソコンさえあれば仕 事ができる時代となり、「若者は自分の人生を生き始めている」と述 べ、日本でも10代の起業家は増えていくとの見方を示した。

チノパンにシャツ

同氏は午前9時までに朝食を済ませ、投資先の株価チャートをチェ ックしてから一日の仕事を始める。自社が運営するクラウドファンディ ング用サイト「ブリッジキャンプ」のスポンサーなどと商談の日は、ボ タンダウンの半袖シャツにチノパンツ、肩掛けかばんといった出で立ち で電車を乗り継ぎ、企業に向かう。パソコンを持ち歩き、外出先でも仕 事をする。

同サイトでは、中・高・大学生がアプリ開発など自分のやりたいプ ロジェクトを掲載し、その資金数十万円を投資家から募集。現在は、学 生同士が交流できるソーシャル・ネットワーク・サービスの開発などが 掲載されている。資金のほかに、人材やモノ、活動スペースも募集可能 だ。投資家は配当として完成品やグッズなどを受け取る。

事業提案者からの手数料は3%と少額で、リクルートホールディン グスなどの企業から受け取る1社当たり月10万-30万円のスポンサー料 が主な収入源。スポンサーになった理由について、リクルートHDでベ ンチャー企業投資の専門組織を統括する岡本彰彦氏は、「日本から世界 に通用する起業家を輩出するため、中高生が開発プロジェクトに取り組 む同社の仕組みを支援したいと考えた」と説明した。

三上氏は大学などとの連携で学生への起業家教育も計画しており、 学生からの立案を呼び込む。社員はツイッターなどで知り合った15-20 歳の12人。全国に散らばっており、スカイプなどで連絡を取り合う。

親の反対

三上氏は10年に受験して中高一貫の進学校に入学。1年経たたない うちに学校を辞めたいと思い始めた。全員が疑問を持つことなくトップ 大学を目指す中、「自分の夢について考え、選択肢を増やす行動を取り たい」と考えるようになった。中2の4月には「自分たちのやりたいこ とを」と8人で学生団体を立ち上げ、同年夏に学生の起業支援イベント でサムライインキュベートから500万円の出資確約を得た。

「今やるべきことではない」と反対する会社員の父親と専業主婦の 母親を説得し、自らの投資収益とインキュベーターからの出資を元手に GNEXを立ち上げた。父親の三上純市さん(44)は「様々なリスクを 考え、当初は私の中でも賛成と反対の意見を持っていた」と振り返る。 最初は一蹴したが、「毎日懇願してくるので、その度に課題を与え、全 てクリアしてきた根性に根負けした」という。

サイトのブリッジキャンプでも、学生がやりたいと思っても、その 保護者が待ったをかける場合が多く、取り扱ったプロジェクト件数は7 件にとどまっている。三上氏には想定外の事態だったという。

アントレプレナー

安倍政権は成長戦略で、産業構造の新陳代謝を図るためベンチャー 企業支援を打ち出している。しかし、三上氏の場合、設立登記に必要な 印鑑証明書が15歳にならないと取得できず、起業まで1年半待たなけれ ばならなかった。「年齢に関係なくチャレンジ可能な社会を作りた い。15歳まで起業できないという制限は邪魔にしかならない」という。

青学大の熊平氏は、日本も大企業が経済をけん引する時代から「ア ントレプレナーの数が国力を決める時代」に変わっていくとし、前例踏 襲型ではなく、主体性と創造力に富んだ若者の起業家を増やすことは 「日本にとって不可欠」と主張する。

父親の純市さんも、「これからは多様性の世の中になってくると思 うので、息子の様な人生を歩んできた者も、世の中の役に立つのではな いかと信じている」とエールを送る。

ソフトバンクの孫氏が大学に入ったように、三上氏は今後、経営学 を学ぶため高校卒業認定試験を受けて15年度に大学受験を目指す。「ど ういうことが学べるのか行ってみて、必要性がなければ辞めればいい」 と割り切っている。「一度しかない人生、死ぬ時に悔いのない人生だっ たと思いたい」。

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