【FRBウオッチ】市場圧力でバブル崩壊、超緩和出口なし(下)

市場では米連邦公開市場委員会 (FOMC)による初回利上げのタイミングが注目を集めているが、市 場金利による引き締めは既に始まっている。これはバブルが崩壊に向け て動き出していることを意味する。

前回のリポートで、FOMC副議長のダドリー・ニューヨーク連銀 総裁は、市場参加者がFOMCメンバーらの予測を過信していると注意 を喚起したことに触れた。この同総裁の発言は過信の源泉が実は金融当 局者の方にあることを示している。

米金融当局は市場の期待に働き掛けるという市場誘導策で物価安定 も最大限の雇用確保も実現できると思い込んでいるが、市場は当局より 一歩も二歩も先に動く。

FOMCがなお債券の追加購入を続け、事実上のゼロ金利政策を 「相当な期間」継続すると表明する一方で、市場金利は昨年半ばに上 昇。住宅バブルは崩壊過程を鮮明にし、株式市場でも先行株はピークア ウトしている。結果的に、市場が金融当局の過信を突いたことになる。

市場では行き過ぎに対して自浄作用が働くのである。しかし、この 自浄作用は臨界点に達すると自壊作用に転換する。このときになって初 めて、一般にバブル崩壊として認識されることになる。

バブル崩壊への道

この市場の自浄作用をうまく利用すれば経済の構造改革も軌道に乗 る可能性があるのだが、バブルの渦中にいるFOMCメンバーや多くの 市場参加者にはなかなか本質が見えない。米金融当局は大規模金融緩和 を6年も継続し、前回のバブル崩壊に伴う市場の自浄作用を封じ込めた 上で、再バブル化を促してきた。

これを主導してきたのはバーナンキ米連邦準備制度理事会 (FRB)議長(当時)である。再バブル化はシリーズ(中)で触れた 通り、2008年9月のリーマン・ショック後に実行された事実上のゼロ金 利政策と大規模資産購入による異次元緩和が原動力になった。

そして今回、バブル崩壊への道を歩み始めるきっかけを作ったのも 同議長である。13年5月22日、バーナンキ議長は上下両院経済合同委員 会の公聴会で、量的緩和(QE)に批判的な共和党のケビン・ブレイデ ィー議員の質問に答える形で、「年内にQEと呼ばれる債券購入の縮小 (テーパリング)を始め、14年半ばころに終了する」という道筋を示し た。

市場との対話、バブル崩壊

この発言をきっかけに市場金利上昇に火が付いた。13年の10年物米 国債利回りは5月2日の1.6255%を底に上昇に転じていたが、FRB議 長のテーパリング発言が伝えられた同月22日には2.0395%と、2%台に 上げてきた。

この市場金利上昇で長期金利に連動する住宅ローン金利が引き上げ られ、まず住宅市場が変調を来す。米住宅市場の90%強を占める中古住 宅販売は13年7月に前年同月比17%増加し、2000年代前半の住宅バブル 並みの伸びでピークを付けた後、徐々に伸びを縮めて同年11月に は2.6%の減少に転じた。その後、10カ月連続マイナスを記録。これ で、米経済の重要な柱の一つである住宅市場は再びバブル崩壊の憂き目 に遭ったことになる。

今回の住宅バブルはオバマ政権の2度にわたる住宅減税と、バーナ ンキFRB議長によるQEが関与した。さらに長期金利の上昇により、 今回のバブルの主役である米国株式バブルの崩壊が既に始まっている。

先行株からピークアウト

S&P500種株価指数は9月18日に最高値を更新しているが、業種 別にみると、先行してきたアマゾンなどのインターネット小売業は3月 5日に最高値を更新。ここでピークアウトした可能性が高い。

10年物米国債利回りは13年12月31日に3.0282%でピークを付けてい た。この市場金利上昇の圧力を受けて、その2カ月後にインターネット 関連株など先行株式グループが最高値を示現したわけだ。先行株グルー プとほぼ同時に小型株を中心とするラッセル2000もピークアウト。そろ そろダウ工業株30種平均やS&P500種など主要指数もピークアウトに 向かう可能性が高い。

株式市場のバブルが臨界点に達するタイミングは、自動車市場を目 安にできそうだ。前回のバブル崩壊は住宅市場と金融市場が中心だった が、今回のバブルでは自動車市場が金融市場と見事なまでのシンクロを 演じている。

チャートは小売売上高統計に含まれる自動車ディーラー販売額と S&P500種株価指数の相関。今回の景気拡大局面では過去2回の拡大 局面に比べて、株価、自動車販売とも抜きんでて伸びている。バブルは 金融が引き起こすものと見られがちだが、実際には実体経済と金融が一 体化して加速度的に膨んでいく。

ゼロ金利、自動車バブル

 自動車販売台数のチャートでみると、ことし8月は年率換算 で1745万台となり、2001年10月や05年7月など販売促進策で上振れした 時期を除く、前回景気拡大局面の上限(チャートの白線)に達してき た。01年10月に2176万台と史上最高を記録したのは9月11日に起きた同 時多発テロ直後の景気浮揚策に乗って、自動車メーカーが期間限定でゼ ロ金利ローンを導入したことが効いたもので特殊なケースである。

今回、そのゼロ金利自動車ローンはFOMCのゼロ金利政策に支援 されて長期間にわたり適用されてきた。自動車バブルの最大の要因は金 融当局によるゼロ金利政策と言えよう。もっとも今回のゼロ金利ローン の特徴は信用度の高いプライム層に適用されるもので、信用力の低いサ ブプライム層には高い金利が適用されている。

メーカーや車種によって異なるが、サブプライム層にはその信用力 に応じて概ね3%から7%の金利が適用されている。このところ、この 高金利に堪えられなくなったサブプライム層の破綻が増え始め、社会問 題に発展してきた。2000年代の巨大住宅バブルと二重写しになる。米国 経済は「いつか来た道」に再び迷い込んできたように見える。

危機は好機

バーナンキ前議長は08年に頂点に達した前回のバブル崩壊に慌て て、未曾有の資金注入で市場の自浄作用を封じ込めてしまった。その後 も前回バブルのウミをそのままにしたため、今回のバブルではこうした 名残りがさらに発酵。新たな要素と結びついて、派手な資産価格上昇の 水面下で異形のバブルへと膨張してきた。いずれ訪れるバブル崩壊によ ってその全容が明らかになろう。

次回のバブル崩壊は今世紀に入って3度目となり、安易な金融政策 頼みは逆効果になるという学習効果が生まれるはずだ。バブル崩壊は経 済に衝撃を与えずにはおかないが、それは市場発の力強い自浄作用でも ある。その点に気付けば、新しい時代へとつながる構造改革への道が開 かれるだろう。

(【FRBウオッチ】は記者個人の見解です)

ワシントン 山広 恒夫 +1-202-624-1968 tyamahiro@bloomberg.net 記事についてのエディターへの問い合わせ先: 西前明子

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