【コラム】デフォルトでも山河あり、私は見届ける-スミス

日本政府は巨額の債務を抱 えている。国内総生産(GDP)比240%という数字がよく引き合いに 出されるが、政府機関同士の貸し借りが多く、純債務は134%にすぎな い。たがそれでも多い。毎年、税収の約15.6%が債務の利払いに充てら れる。米国とほぼ同じ程度にとどまっているが、金利が急上昇すれば、 すぐに持続不可能な水準になるだろう。

債務の対GDP比率上昇にどう対処するか。基本的に3つのやり方 がある。財政再建もしくは債務のマネタイゼーション、それかデフォル ト(債務不履行)だ。日本経済の将来を占う鍵は、この3つのどれに向 かうかを解明することだ。

私は日本の政府当局者や学者、財界首脳らと話をする機会がある。 彼らは日本政府が財政再建および財政赤字削減に必要なあらゆる手段を 講じるとの見方で一致しているようだ。無駄な公共事業予算はすでに削 減され、歳出の伸びの大半は、世界で最も深刻な人口高齢化によるもの だ。つまり、財政再建は増税という形式にならざるを得ないことを意味 している。

日本の税収は今、GDPの約28%相当だ。もし消費税率が12-32ポ イント引き上げられれば、債務問題は片付くかもしれない。だが痛みを 伴うこうした措置は政治的に不可能だろう。安倍晋三首相は首尾よく消 費税率を5%から8%に引き上げたが、日本は厳しいマイナス成長に見 舞われた。消費税率を3%から5%に引き上げた1997年をほうふつとさ せる。日本経済がなぜこうも増税にもろいのかははっきりしない。米国 も最近、同じような増税をしたが痛みはずっと少ない。

ゲームオーバー

もし私の日本の友人が間違っていて、財政再建が実施されそうもな いなら、債務のマネタイゼーション、つまり中央銀行による財政赤字の 穴埋めが国債デフォルトを回避する唯一の方法となる。日本銀行は国債 の買い入れ負担をさらに高めるよう求められ、増発された紙幣が企業の 貯蓄や個人の年金資金に代わり国債購入の主役となる。そしてそれはす でに起きつつある。

マネタイゼーションで何が起こるかは、それがインフレにつながる かどうか次第だ。インフレさえなければ、金利が下がり続け、政府は一 層割安に債務を借り換えられる。つまりここ20年間の状況が続くという ことだ。だがインフレになれば、物価上昇率は経済成長、そして税収を 大きく損なうのに十分な高水準に達し得る。そうなればゲームオーバー だ。日本政府はデフォルトを余儀なくされるだろう。

本当のところ、何が高インフレのきっかけになるかは誰にも分から ない。日銀はどの国も足を踏み入れたことがない道を歩み始めている。 マネタイゼーションが債務の対GDP比率拡大を無限に支えることがで きるという仮説を検証する大胆な実験だ。政治制度の機能不全や好まざ る人口動態の中でこの実験を強いられており、そうした中での日本の行 方に私は関心を寄せている。

だが私は心配していない。国債デフォルトといっても結局のところ 一部の日本国民の持つ資産の価値が失われるという会計上の問題にすぎ ない。資産は高齢者から若年層に再分配されるだろう。デフォルトに陥 っても日本には工場や土地、そして教育を受けた国民がそのまま残る。 短期的には大きな痛みや懸念、国際金融システムの混乱が生じるだろう が、日本は依然としてそこにあり続けるのだ。(ノア・スミス)

(米ニューヨーク州立大学ストーニーブルック校で金融を教えるス ミス氏はブルーバーグ・ビューに寄稿しており、コラムの内容は同氏自 身の見解です)

原題:Japanese Debt Trap May Have Just One Way to Escape: Noah Smith(抜粋)

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