イエレン議長、グリーンスパン式厳選踏襲へ-バブルの轍踏まぬ

2015年からの金融政策を運営するに あたって、イエレン米連邦準備制度理事会(FRB)議長は「アラン・ グリーンスパン式指南書」の1ページを参考にしするのかもしれない。 ただ、「慎重なペースで」の章は破り捨てるだろう。

イエレン議長ほか連邦公開市場委員会(FOMC)のメンバーらは 今月、いわゆる「自然失業率」より低い失業率を実現させる意欲を見せ た。インフレ加速を伴わない失業率(NAIRU)は、1990年代にグリ ーンスパン氏が残した功績だ。一方で同氏が2000年台半ばに展開した 「慎重なペースで」という利上げへのアプローチには、イエレン議長は 渋い顔を見せている。同議長はこのやり方が市場の楽観を促し、その後 起きる金融危機に小さいながらも寄与したとまで指摘しているのだか ら。

バークレイズの米国担当シニアエコノミスト、マイケル・ゲーペン 氏(ニューヨーク在勤)は1990年代後半を振り返り、「米経済にとって 非常に良い時代だった。グリーンスパン議長(当時)も正しい金融政策 を導入できた」と語る。かつてはアトランタ連銀のエコノミストだった ゲーペン氏は一方で、2007年から09年のリセッションにつながる住宅バ ブル破裂に先立つ金融政策について、「そのやり方に問題があったとい うのが、大方の一致した見方だ」と批判した。

イエレン議長は17日の記者会見で、FOMCがどう行動するかは経 済の展開次第だとし、政策実行に対して「事前に決まった機械的なアプ ローチ」は存在しないと述べた。その上で、そういうアプローチは2000 年代半ばにFOMCが頼り過ぎたものだと「考えている人は多い」とい う。

機械的、「悪夢」のシナリオ

セントルイス連銀のブラード総裁もその一人だ。「04年から06年の 引き締めサイクルは、あまりにも機械的だった」と同総裁は今月23日に 記者団に語った。「先行きをあまりにも予測可能にしたため、住宅バブ ルという形での資産価格バブルを醸成したのだと思う」と説明した。

イエレン議長とその同僚らが追求する戦略にはリスクが伴う。失業 率押し下げを目的とした金融緩和を長期化させると、賃金と価格への予 想外に強い圧力を招きかねない。ローレンス・マイヤー元FRB理事の 言う、インフレ期待上昇という「悪夢」のシナリオだ。グリーンスパン 氏に倣って一歩一歩決まったペースでの利上げをしないとしても、バブ ル醸成などのゆがみを金融市場に引き起こす恐れがある。一部の米金融 当局者らはこうした動きについて、警告を促すリポートを今月発表して いる。

9月のFOMCは声明で、おそらくは10月に資産購入プログラムを 終了した後、「相当な期間」において事実上のゼロ金利を維持するとあ らためて宣言した。また金融引き締めを開始した後の利上げペースにつ いても、拙速なものにはならないことを示唆した。

自然失業率、過熱気味の経済

FOMCメンバーらは17日に公表した経済・金利予測で、どこまで 失業率を押し下げられるのか試す意向を明確にした。中央傾向によれ ば、失業率は17年第4四半期に4.9-5.3%と予測。NAIRUとされて いる5.2-5.5%を下回っている。今年8月の失業率は6.1%だった。

ニューヨーク連銀のダドリー総裁は22日のインタビューで、 FOMCの目指すものについて話した。自然失業率より低い水準に失業 率を押し下げれば物価圧力をもたらす危険性があると懸念を示すのでは なく、ダドリー総裁はインフレ率を目標の2%に戻す必要があると発言 した。個人消費支出(PCE)価格指数でいうインフレ率は7月 に1.6%。2%の目標を2年以上も下回っている。

ダドリー総裁はブルームバーグのインタビューに対し、インフレ率 を目標の2%に戻すには「経済が少なくとも一定期間、やや過熱気味に 推移する必要がある」と述べた。

グリーンスパン氏の時代はテクノロジー主導の生産性向上に助けら れ、急速なインフレを喚起することなく2000年4月には失業率を30年ぶ りの低水準である3.8%まで落とすことが可能だった。

針の穴に糸を通す

イエレン議長の場合はそういかなさそうだ。米労働省のデータに基 づくと、非農業部門の生産性は09年6月のリセッション終了後、年 率1.3%のペースで上昇。伸び率は1996年から2000年までの3%ペース の半分未満に落ちているからだ。

グリーンスパン式「慎重なペース」による25ベーシスポイント(b p、1bp=0.01%)ずつの利上げについて、イエレン議長はかつて、 「金融危機の原因であるとは断じて考えないが、ボラティリティを抑え た可能性はあり、金融危機の小さい要因となったと考えられる」と述べ たことがある。

パシフィック・インベストメント・マネジメント(PIMCO)の リチャード・クラリダ執行副社長はしかし、失業率の下限に挑戦しつ つ、同時に金利の上昇ペースは緩慢だと投資家を説得するためには、 「慎重なペース」のような文言を避けて通るのは難しいだろうと指摘す る。

「針の穴に糸を通すような作業だ」とクラリダ氏は、「ゆっくりと したペースで利上げを進めたいが、一方で慎重なペースでの文言が使わ れた時のように市場がリラックスし過ぎるのは良くない。成功を祈るし かない」と述べた。

原題:Yellen Aims to Mimic Greenspan on Jobs, Avoid Bubble Misfire (1)(抜粋)

--取材協力:Steve Matthews.

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