円が対ドルで6年ぶり安値、安倍首相演説受け109円台後半

東京外国為替市場では、円が対ドル で約6年ぶり安値を更新。ドル高の流れが続く中、安倍晋三首相が所信 表明演説で経済を最優先させる方針をあらためて示したことをきっかけ に円売りが加速した。

ドル・円相場は1ドル=109円台前半でもみ合っていたが、午後に 安倍首相の演説が始まると前週末に付けた円安値を突破。一時109円75 銭と2008年8月以来の水準までドル高・円安が進み、午後3時半現在 は109円61銭前後となっている。

あおぞら銀行市場商品部の諸我晃為替マーケットメイク課長は、安 倍首相の演説について「あまりサプライズはないが、デフレ脱却を目指 す方針を確認した感じではある」と解説。「米雇用統計を控えて、ド ル・円は110円を大きく抜けていく感じではないが、米金利が安定して 下がらない状態になってきて、株がしっかりしているので、為替的には ドル買いが進みやすい環境だ」と語った。

ユーロ・ドル相場は一時1ユーロ=1.2664ドルと、12年11月以来の ドル高値を更新した。週内に雇用統計など市場が注目する米経済指標の 発表や、欧州中央銀行(ECB)の定例理事会を控えて、欧米の景況感 格差や金融政策の方向性の違いが意識された。

ニュージーランド(NZ)ドルは対米ドルで急落。NZ準備銀行 (中央銀行)が8月に行った自国通貨の売却額が7年ぶり高水準になっ たことが明らかとなり、介入警戒感が強まった。NZドルは1NZドル =0.78米ドルを割り込み、昨年8月以来の安値を付けた。

ドル高の流れ

主要10通貨に対するドルの動きを示すブルームバーグ・ドル・スポ ット指数は先週、6週連続上昇し、10年6月以来の高値を更新して終 了。米国の景気回復が続き、米連邦準備制度理事会(FRB)が来年に も利上げを開始するとの観測が背景にあり、週明けのアジア市場でも一 段高となっている。

こうした中、米国ではこの日、8月の個人消費支出が発表される。 そのほかにも今週は米供給管理協会(ISM)製造業景況指数やADP 雇用統計、週末の雇用統計など注目の経済指標の発表が相次ぐ。

シティバンク銀行個人金融部門の尾河眞樹シニアFXマーケットア ナリストは、「今週発表される米指標も基本的には悪くない内容となり そうだ」と言い、「米国の金融緩和の出口を意識した動きということ で、良い指標が出ると安心感でドル高が続く」と予想した。

一方、欧州では29日にドイツの消費者物価指数やユーロ圏の景況感 指数が発表され、週後半にはECB定例理事会が開かれる。また、日本 では10月1日に日本銀行が企業短期経済観測調査(短観)を公表する。

110円トライの可能性

尾河氏は、「今の流れは円安地合いという側面もあり、短観などが 弱いと追加緩和期待という話にはなりやすいが、全体としてはドル高と いう流れだと思う」と指摘。「ECB会合で量的緩和も辞さないという ようなメッセージが出てくると、もう一段ドル高という可能性は十分あ る」とし、米国と日欧の景況格差が「現実のものになってくると、金融 政策の方に跳ね返ってくるという見方になるので、通貨の力関係が際立 ってくる」と語った。

安倍首相は29日午後、衆院本会議で所信表明演説で、デフレ脱却を 目指し、引き続き経済最優先で政権運営に当たる決意を表明した。経済 情勢を注視し、経済再生と財政再建を両立させながら、「経済の好循環 を確かなものとする」考えも示した。

外為どっとコム総合研究所の石川久美子研究員は、安倍首相が経済 最優先の方針を示した上に、「円安けん制に類するような発言」がなか ったことが円売りにつながったのではないかと分析。「109円台後半は オプション絡みのドル売りがあるとも聞いているが、勢いがついてしま えば一気に110円トライの可能性も否定できない」と話した。

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