「超空の覇者」さえ会社転々、失われる債券トレーダー活躍の場

小説「虚栄のかがり火」の主人公、 シャーマン・マッコイはウォール街のエリートトレーダーだった。何百 人もが電話にかじりついて取引する1980年代のトレーディングルームは まるでスポーツの試合さながらの興奮のるつぼだったと、ロイズ・セキ ュリティーズのクレジットトレーディング責任者ケリー・スタイン氏は 振り返る。

時代は変わった。「私が知っている時代に比べると、あまりに静か なのでびっくりする」と、マイケル・ミルケン氏が「ジャンク債の帝 王」として君臨したドレクセル・バーナム・ランベールで1985年にトレ ーダーとしてのキャリアを開始したスタイン氏は述べた。

債券トレーディングの取引高が減少するのに伴い、トレーダーの人 数も減った。高い報酬と花形職業としての名声からかつては若者を引き 付けた業界だが、今は最も経験豊富なトレーダーやセールスマンすら、 場合によっては会社から会社へ渡り歩くのを避けられない。債券関連の 人材紹介会社、マイケル・P・マロニーのマイケル・マロニー社長が指 摘する。

同社長はインタビューで、「ビジネスモデルが崩壊した。トレーデ ィングに関わる人の半分が今、行き詰まっている」と話した。「生き残 るのは10人中3人か4人だろう」とも述べた。

スタイン氏(56)は、トレーダーという職業が新参者に対する魅力 を失ったことをひしひしと感じるという。自身がドレクセルに入っ た1985年にはウォール街は「ハリウッド以外で最もあこがれの的の職場 だった」と同氏は振り返る。作家のトム・ウルフがウォール街を描いた 「虚栄のかがり火」の中で債券トレーダーらを「マスターズ・オブ・ ザ・ユニバース(超空の覇者)」と呼んだのは2年後の1987年だった。

この小説を書くインスピレーションをウルフに与えた名門証券会 社、ソロモン・ブラザーズで会長も務めたジョン・グッドフレンド氏の すぐ近くに座っていたというベテラントレーダーのジョン・バス氏 (52)ですら、2009年にスイスのUBSを去った後、会社を転々とし、 みずほセキュリティーズUSAやBNPパリバなどを経て今は5年で5 社目のジェフリーズに在籍している。

--取材協力:Lisa Abramowicz.

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