GPIF法案で塩崎厚労相が譲歩、資産構成見直しに弾みとの見方

塩崎恭久厚生労働相が年金積立金管 理運用独立行政法人(GPIF)のガバナンス(統治体制)改革に関連 して、今秋の法改正にこだわらない考えを示したことを受けて、市場で は国内株保有比率の引き上げといった資産構成の見直しに弾みがつくと の見方が出ている。

塩崎氏は厚労相就任まで、ガバナンス改革と運用改革を同時に進め る考えを示していた。しかし、19日の閣議後会見では、ガバナンス改革 の法案について、臨時国会には中身が納得いくものができない限り、「 出すわけにはいかない」と語った。

ガバナンスについての法案作成と国会審議に時間のかかる法改正と 歩調を合わると、新たな資産構成の発表が市場予想より大幅に遅れると の懸念が一部で出ていた。臨時国会への法案提出を提唱してきた塩崎氏 の姿勢の変化で、こうした懸念が払拭されたと市場参加者は受け止めて いる。

クレディ・アグリコル証券の尾形和彦チーフエコノミストは「これ で新たな資産構成の発表が大幅に遅れる懸念は払拭(しょく)された」 と指摘。GPIFが本格的なリスク資産投資に踏み切るには「ガバナン ス改革だけでなく運用体制や専門人材の採用など、課題が山積している 」と言い、「それらを進めながら、資産構成も見直すのが安倍晋三首相 の意向でもあるのだろう」と語った。

三井住友アセットマネジメントの浜崎優シニアストラテジストは塩 崎氏について、「主張が弱まったのではなく、責任ある立場になった以 上、現場の状況を考慮した上で着実にこなしていく。目指すべきところ は同じだ」と分析。「市場の関心は法的措置より、資産構成の見直しだ 。日本株を買うのか否かだ」と語った。

2012年12月に発足した第2次安倍内閣の下で塩崎氏は、GPIFな どの運用見直しとガバナンス改革を訴えた政府の有識者会議(座長:伊 藤隆敏教授)を自民党側で支え、今春には議員立法にも動いた改革推進 派で知られる。先月にはブルームバーグ主催のセミナーで講演し、GP IFによるリスク資産への投資拡大には法改正を伴う抜本的なガバナン ス改革が不可欠だと発言した。

法改正には時間

政府は6月24日に閣議決定した日本再興戦略の改定版で、GPIF の資産構成について、年金財政検証の結果を踏まえ、長期的な健全性を 確保するために適切な見直しをできるだけ速やかに実施すると明記。ガ バナンス体制強化に関しても、運用委員会の体制整備や専門家の確保な どに加え、法改正の必要性も含めた検討を行うとした。

GPIFは政府の有識者会議による提言を踏まえ、将来的な金利上 昇で評価損を被る恐れのある国内債を減らし、日本株や外貨建て資産の 増加で収益向上を図る資産構成の見直しをすでに検討中だ。米沢康博運 用委員長は7月、見直し結果は「秋までに公表できる見通しだ」と述べ た。法案作成と国会審議に時間のかかる法改正と歩調を合わると、新資 産構成の発表が市場予想より大幅に遅れる可能性があった。

SMBC日興証券株式調査部の圷正嗣ストラテジストは、GPIF のガバナンス改革は「時間をかけた制度設計が必要だ」と指摘。塩崎氏 については、厚労相就任から日が浅く「臨時国会の召集までに準備する 時間が足りない。所管大臣になったので腰を据えて取り組んでいく」と みている。資産構成の見直し内容に関する市場の期待は変わっておらず 「特段ネガティブな話ではない」と話す。

目標は変わらず

GPIFが基本ポートフォリオで定める現在の資産構成の目標値は 国内債が60%、国内株が12%、外国債券が11%、外国株式が12%、短期 資産が5%だ。ブルームバーグ・ ニュースが5月に実施した市場調査 の中央値では、GPIFが国内債の目標値を40%に下げる一方、国内株 は20%、外債は14%、外株は17%に上げると予想していた。

一方、自民党の木原誠二衆院議員は先月のインタビューで、政府は GPIF改革で法改正なしでもできる分野から変えていき、その成果を 見極めてから法改正を判断しても遅くないと考えていると発言。法改正 の有無は資産構成見直しには「何の影響も及ぼさない」と語った。

厚労省は、年金制度改革やGPIFのガバナンス見直しについて年 内に一定の取りまとめをする方針。森浩太郎参事官は、理事長の独任制 を実質的な合議制に改編するのは現行法の下でも可能だと発言。香取照 幸年金局長も、GPIF改革などは法改正ありきではなく、必要なら実 施するということだと説明した。

    最新の情報は、ブルームバーグ端末にて提供中
    LEARN MORE