BNP仕留めたロースキー局長に妥協なし-NY当局の力示す

交渉は行き詰まった。対立している のはフランスの銀行最大手BNPパリバとベンジャミン・ロースキー局 長率いる米ニューヨーク州金融サービス局だ。司法省や連邦準備制度理 事会(FRB)など他の米当局とBNPとの交渉は数カ月に及び、 BNPはイランとスーダンに対する米制裁に故意に違反した件で有罪を 認め、数十億ドル規模の罰金を支払うことに合意していた。

しかしロースキー局長は満足しなかった。BNP幹部の更迭やドル 決済業務の禁止を求める同局長の強硬姿勢は、最高権力者の目に留まっ た。フランス政府はBNPへの処罰を厳しくし過ぎないようにと、オバ マ政権に働き掛けた。フランス銀行(中央銀行)のノワイエ総裁はロー スキー局長に会うため、ニューヨークにやってきた。「ブルームバー グ・マーケッツ」誌10月特別号が報じている。

最終的にはBNPがドル決済の一時的な禁止を受け入れることで合 意に至った。誕生間もないニューヨーク州金融サービス局の力と合意の 条件で妥協しない姿勢を、ロースキー局長はあらためて世界に見せつけ た。

ロースキー局長の力は、世界の大手金融機関が米国で事業を営む必 要性と、その多くがニューヨーク州の免許の下で営業しているという事 実に起因する。2011年に州法の下で設立された同州金融サービス局が権 限を持つ金融機関は1900社を超える。

元連邦検事のロースキー局長(44)はニューヨーク州のクオモ知事 が同州司法長官だった時にともに働いた。ニューヨーク州金融サービス 局長として現在は民事訴訟を起こすことはできるが、訴追権限はない。 しかし司法省などの大きな組織に比べ小粒で小回りが利くところが利点 だと、同局長は話した。

ローワーマンハッタンの簡素なオフィスでインタビューに応じた同 局長は、「既成概念にとらわれない行動が可能だ」と話した。他の当局 の勧告に従わないことで気がとがめることはないという。「流れに従う ことだけを目的にそうすることはしない。小規模な州規制当局だが、そ ういうやり方では動かない」と語った。

2007-09年にニューヨーク州の保険局長を務めたエリック・ディナ ロ氏は、ロースキー氏が一連の大きな問題での合意に関与したことで、 ニューヨーク州当局は異例の高い地位を得たと話す。

「法順守と消費者保護の重視および金融商品への幅広い知識によっ て、ロースキー局長が短期間にニューヨーク州金融サービス局を全米お よび世界に知らしめたことは異論の余地がないと思う」とディナロ氏は 語った。

ロースキー局長が対戦した金融界の巨人のリストは長い。クレデ ィ・スイス・グループ、デロイト・ファイナンシャル・アドバイザリ ー・サービシズ、メットライフ、ロイヤル・バンク・オブ・スコットラ ンド・グループ(RBS)、三菱東京UFJ銀行などだ。

ロースキー局長はメディアを利用して調査を進展させるという批判 もある。BBC放送のビジネスエディター、カマル・アーメド氏は6 月30日のコラムでロースキー局長の手法をこのように形容した。「証拠 を公表し、詳細な描写で誘導する」。同月16日の米紙ウォールストリー ト・ジャーナル(WSJ)の社説はロースキー局長のBNPパリバに対 する成果は評価したものの、同局長を「名声ハンター」と評した。

同局長のスポークスマン、マット・アンダーソン氏は「規制・法順 守当局の多くがそうだが、不正行為の抑止効果をねらって一部の調査結 果を公表している」と説明した。

ロースキー局長が2012年、初めて米国外に名を馳せたのもメディア を活用してだった。米司法省と財務省、FRB、ニューヨークの地区検 察がイランに対する制裁破りをめぐり英銀スタンダードチャータードと 和解に近づいていた時、ロースキー局長は発言権を得るのが難しかった と、事情に詳しい関係者が述べている。

進展状況を協議するため法順守・規制当局との会合に、ロースキー 局長は副官を送り込んだ。この副官が他の当局に対して最後通告を突き 付けたと、関係者は述べている。スタンダードチャータードについて他 の当局が迅速に動かないならば、ロースキー長官は単独で行動すると伝 えたという。

関係者によれば、この警告は無視された。そこでロースキー局長 は2012年8月6日にスタンダードチャータードに宛てた書簡で、同行が 行ったとされるイラン顧客への違法送金を列挙、ニューヨーク州での営 業免許を取り消されて文句があるかと詰問。この書簡をメディアに公表 した。

ロースキー局長が落とした爆弾はスタンダードチャータード経営陣 の不意を襲い、株価は同日に16%下落した。検察当局や財務省、FRB の規制当局者にとっても不意打ちで、他の当局が知らされたのは書簡公 表のわずか数時間前だったと、事情に詳しい関係者が述べた。この奇襲 攻撃でロースキー長官と司法省、FRB,バンス・マンハッタン地区検 事との関係は険悪になったという。

最終的にスタンダードチャータードは3億4000万ドル(約360億 円)の支払いでニューヨーク州金融サービス局と和解。監視要員を起用 することにも同意した。同行は、他の当局とも同じ問題について3 億2700万ドルの支払いで合意した。

BNPとの交渉中、ロースキー長官はメディアへの発表を控えた。 BNPは結局、有罪答弁と過去最大規模となる89億ドルの罰金で合意し た。そのうち30億ドル余りがニューヨーク州に支払われる。マンハッタ ン連邦地検のプリート・バラーラ検事正はBNPとの合意について、ス タンダードチャータードの時の奪い合いとは異なり、複数当局間の協力 のモデルケースになったと自賛。

「BNP問題の解決における最良の点は、多数の検察当局と監督当 局が共通の目標に向けて協力し、賢明に行動した結果、過去においては 不可能だったような結果を出せたことだ」と語った。

ロースキー局長は、将来にまた当局間の争いが起こらないという約 束はしない。「面と向かって『それは間違った考えだ。われわれはそう はしない』とは言いにくいものだ」と述べた上で、「しかしそれを言え ば、当局が口先だけではなく本気で行動するつもりだということを知ら しめることができ、結局は良い反応が得られるようになる」とロースキ ー局長は語った。

原題:Regulator Lawsky Who Helped Snag BNP Settles Cases on His Terms(抜粋)

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