扇動者よりも助言者になりたい-寡黙で辛抱強い物言う株主

ジェフリー・ユーベン氏は物言う株 主(アクティビスト)として米マイクロソフトの幹部人事に関与したほ か、同氏率いるバリューアクト・キャピタル・マネジメントはカナダの バリアント・ファーマシューティカルズ・インターナショナルを企業買 収路線へと方向転換させた。バリアントは今年、投資家のビル・アック マン氏と共同で米医薬品メーカー、アラガンに敵対的買収を仕掛けた。

バリューアクトの運用資金は140億ドル(約1兆5000億円)と、ア クティビスト・ヘッジファンドの中では有数の規模を誇る。しかし、バ リューアクトを率いるユーベン氏(53)は声を荒げるどころか口数の少 ない寡黙(かもく)な性格で、穏やかなやり方を好むという。「世界で 最も影響力のある50人」を取り上げたブルームバーグ・マーケッツ誌10 月特集号が報じている。

ユーベン氏はニューヨークのセントラルパークを見渡すレストラン で朝食を取りながら、「こちらからあれこれ口を出すのではなく、専門 的アドバイスを求められて取締役会に迎え入れられるような評価を確立 するのが私の目標だ」と語った。

バリューアクトの最高経営責任者(CEO)と最高投資責任者 (CIO)を兼任するユーベン氏はこの14年間、世界的に注目を集めた 再編や企業の合併・買収(M&A)の幾つかで目立たぬ仕掛け人を演じ てきた。米サラ・リーの紅茶・コーヒー部門のスピンオフ(分離・独 立)と再編、英ロイター・グループのカナダのトムソンへの身売り、米 ガードナー・デンバーのKKRへの売却などだ。ユーベン氏が2000年に バリューアクトを共同で創業して以来、改革を求めた企業は75社。同氏 はまた、マーサ・スチュアート氏が10年前に起訴された後、マーサ・ス チュアート・リビング・オムニメディアの会長として指揮を執った。

中傷せず

バリューアクトによれば、同社が投資家のためにこれまで生み出し た粗利益は約110億ドルに達する。この間の年率ネットリターンは平 均17%。ターゲット企業を公然と中傷することはめったになく、乗っ取 り屋だと非難されるケースはまれだ。委任状争奪戦も06年のコンピュー ターサービス企業のアクショムを最後に行っていない。

アクティビストに関する情報を収集するヘッジファンド・ソリュー ションズ(ペンシルベニア州ドイルスタウン)を率いるダミエン・パク 氏は、バリューアクトの「実績は見事で、信頼性も高い。利用できる資 金も多い」と述べ、「大半の投資家、特にアクティビスト株主の間で羨 望(せんぼう)の的だ」と語る。

ヘッジファンド・リサーチ(シカゴ)のデータによれば、アクティ ビストが運用する資金額は5年間で約3倍となった後、今年前半に94億 ドル増えて1112億ドルに達した。13年にアクティビストの標的とされた 企業は369社と、前年を12%上回った。今月5日までに狙われた企業 は297社。そしてアクティビストは成果を挙げている。昨年、ターゲッ トとされた米上場企業83社の株式に投資した13Dアクティビスト・ファ ンドのリターンは33%と、S&P500種株価指数の30%を上回った。今 年も今月9日終値時点でS&P500種の8%に対し、13Dファンド は12%となっている。

ひたすら価値を創造

13Dファンドとアクティビストの活動を追跡調査するウェブサイ ト、13Dモニターを率いるケン・スクワイアー氏は「優れたアクティビ ストが優良企業の取締役となり、何年も取締役を続けながら価値を生み 出す時にリターンは最も高くなる」と説明。「バリューアクトは功績が 誰のものになろうと気にせず、派手なプレーをする必要がない。ひたす ら価値の創造を目指している」と指摘した。

バリューアクトは標的とした企業と長く関わろうとしており、取締 役を派遣することもしばしばだ。しかしユーベン氏は、パーシング・ス クエア・キャピタル・マネジメントのアックマン氏や、乗っ取り屋から アクティビストに転身したカール・アイカーン氏とは対照的に、スポッ トライトを可能な限り避けようとしている。

バリューアクトはこのところ、今年最も論議を呼んでいる案件の1 つ、バリアントとビル・アックマン氏によるアラガンへの敵対的買収案 に関わっている。

バリアントはバリューアクトが出資した06年半ばの時点では小さな 試験薬開発会社にすぎなかった。ユーベン氏の片腕、バリューアクトの モーフィット社長は07年にバリアントの取締役に就任。両氏の助力によ りバリアントはマイク・ピアソン氏をCEOに迎え入れた。その 後、100回を超えるM&Aを通じて3人はバリアントを時価総額400億ド ルの企業へと育て上げた。現在バリアントの事業はジェネリック(後発 医薬品)やしわ取り注射剤、歯のホワイトニング剤製造など多岐にわた る。

アラガンはバリアントにとってこれまでで最大の買収案件になるは ずだった。当局への届け出によれば、ピアソン、アックマン両氏はパー シング・スクエアがひそかにアラガン株を10%まで買い増す計画を立て た。これにより、バリアントは買収に向け有利なスタートを切ることが できた。アックマン氏はアラガンの大半の取締役の更迭を目指し、12 月18日の臨時株主総会開催に十分な支持票を集めた。

アラガンは今年8月、バリアントとパーシング・スクエア、アック マン氏がインサイダー取引規則に違反したとして提訴。これに対し、バ リアントとパーシングはこの提訴には「根拠がなく」、「恥知らずだ」 とする声明を出した。パーシングはそれ以上のコメントを控えた。

インサイダー懸念

モーフィット氏は、将来バリューアクトが持ち株の一部を売却する 際、インサイダー取引規定に抵触しないよう5月にバリアント取締役を 辞任した。

ユーベン氏はバリアントの事業の正しさを信じていると発言。バリ ューアクトはどこにも行かないと述べるとともに、アラガンの買収防衛 策は絶望的な試みだと指摘した。アラガンはユーベン氏とバリューアク トは提訴していない。

バリアントはバリューアクトの支援を受け、10年にカナダの医薬品 会社バイオベールを買収。これは企業が外国業買収を通じて本社を税率 の低い国外に移転する「コーポレート・インバージョン」の先駆けとな った。ユーベン氏は「米議会はインバージョンという報いを受けて当然 だ。愚かしい法人税制の改正を怠ってきたからだ」と指摘した。

楽しみを見つける

趣味でスキーやテニスを楽しみ、50歳手前の時に4分の1マイル (約400メートル)を59秒で走ったと自慢するユーベン氏は自分のチー ムの部下に楽しい時間を過ごしてほしいと言う。「われわれの業界では それは簡単ではない。金持ちになるのは簡単だが、楽しみを見つけるの は難しい」と語った。

その一方で、ユーベン氏はデータや調査、陰で進める準備にこだわ る。同氏はバリューアクトは扇動者よりも助言者になりたいとした上 で、「われわれは辛抱強い投資家だ。本当に優良な資産を見つけたら、 むしろ長く関与し続けたいと思っている」と述べた。

原題:Ubben Returns 17% Shaking Boardrooms as He Backs Tax Inversions(抜粋)

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