政府・日銀、「円安は経済にプラス」で歩調合わせか

4月の消費増税後に景気が足踏みす る中で、政府・日銀は一段の円安が日本経済にとってプラスとの見方で 歩調を合わせつつある。

円・ドル相場が過去2年間で約26%下落したが、輸出は伸び悩んで いる中、政府・日銀からはさらなる円安容認を示唆する声が相次いでい る。内閣官房参与の浜田宏一・米エール大名誉教授は8日、ブルームバ ーグ・ニュースとの電話インタビューで「円安はさらに進みそうに見受 けられる」との見通しを示した上で 「円安は企業収益、設備投資、税 収、雇用を押し上げる」と述べた。

日銀の黒田東彦総裁は4日の記者会見で、米国経済が着実に回復を 続けているとの見方を示した上で、「ドルが強くなっていくことは何ら 不思議でない。今の水準から円安になることが非常に日本経済に好まし くないとはわたしは思っていない」と述べた。

甘利明経済再生相は5日の会見で、輸出が伸びない中で円安が必ず しも日本経済にとってプラスではないという議論をどう思うかとの記者 団からの質問に対し、「生産拠点が海外に移っており、輸出が従来のよ うにいきなり伸びていくということにはなっていない」としながらも、 円安効果もあって「企業の売上高に対する利益率は過去最高になってい る」と指摘した。

経済再生を担当する西村康稔内閣府副大臣は9日、ブルームバー グ・ニュースとのインタビューで、円安基調について「マクロでみれ ば、日本経済全体にとってみれば、プラスであることは間違いない」と 語った。

黒田総裁は8月8日の会見でも「行き過ぎた円高が是正されたこと は日本経済にとってかなりプラスになっている」とした上で、「円の為 替レートが円高になっていかなければならない理由はないと思ってい る。それがまた、日本経済にとってマイナスになるということもない」 と述べている。

円安を間違いなく歓迎

第一生命経済研究所の熊野英生首席エコノミストは、黒田総裁や甘 利再生相の発言について「さらなる円安を間違いなく歓迎している」と 分析。「景気情勢が以前のように盤石でなくなってきている。景気に対 するリスク感応度が高くなって、為替に対しても踏み込んだ言及をする ようになっているのではないか」とみている。

野村証券の木下智夫チーフエコノミストは円安について、「日銀に とって援護射撃、サポート材料になると思う」と述べた。一段の円安で 消費者物価(CPI)上昇率が戻ってくれば、「デフレ脱却に向けての 足取りを確固たるものにするという意味では、むしろ円安は好材料の面 が大きいと思う」との見方を示した。

7月の全国消費者物価指数(生鮮食 品を除いたコアCPI)は14 カ月連続で上昇したもの、消費増税分を除くと1.3%上昇にとどまり日 銀の目標である2%とは隔たりがある。輸入コスト上昇がインフレを押 し上げる力も弱まっている。

円安がマイナスになっている分野としては貿易収支が挙げられる。 福島第一原発事故後、全原発の稼働が停止する中で発電の代替燃料の輸 入が増え、貿易赤字は過去最大に達している。

急激な為替変動は好ましくない

麻生太郎財務相は9日の閣議後会見で、「為替の急激な変動は望ま しくない。特定の水準を念頭に置いて言っているわけではない。緩やか に変化していく方が望ましい」と述べた。

日経平均株価は安倍首相が12年12月に就任してから50%以上上昇し た。財務省が発表した4-6月の法人企業統計によると、売上高経常利 益率は全産業ベースで5.2%となった。これは比較可能な統計が始まっ た1954年以降で最高水準。日本最大の自動車メーカー、トヨタ自動車は 2年連続で過去最高益を達する見通し。

モルガン・スタンレーMUFG証券チーフエコノミストのロバー ト・フェルドマン氏は、4月の消費税引き上げを受けて4-6月期の国 内総生産(GDP)改定値が下方修正されたことに加え、7-9月期も ほとんど反転の動きを見せていないことから14年度をほぼゼロ成長と予 想している。

JPモルガン証券の菅野雅明チーフエコノミストは円が対ドル で10%下落すると、インフレ率が0.5%ポイント上昇すると試算。さら に「円安は日本経済にとってプラスはプラス。ただし、プラス幅は小さ くなっている」としながらも、「日銀が言うように来年とか早期に2% のインフレになるためには円安は一つの必要条件だ」と語った。

--取材協力:藤岡 徹、広川高史.

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