米同時テロから13年、マンハッタン南部の復興大詰め

絶対に高層ビルの上層階には行かな いと誓ったアンソニー・ガードナーさんだったが、ニューヨークの超高 層ビル「ワン・ワールド・トレード・センター(1WTC)」を見学に 来た際に83階への案内を告げられた時、気が変わった。13年前、テロリ ストが最初の航空機を世界貿易センターのノースタワーに突入させたと き、ガードナーさんの兄、ハービーさんはタワーの83階にいた。

「そこに行かなくてはならないというサインだった。その通りにし て良かった。感謝している」とガードナーさん(38歳)は語る。2001年 9月11日に兄を亡くして以来、ガードナーさんはPRの仕事を辞 め、3000人近い犠牲者の遺族の権利のために働くようになった。

WTC跡地の再生には追悼の思いとビジネスが融合している。今で はニュージャージー州立美術館の執行ディレクターを務めるガードナー さんは、「訪れる人に強烈な経験をさせる一方で、マンハッタン南部の 経済復興にも貢献する」と語る。「今、目の前でそれが形になろうとし ている」と述べた。

16エーカー(約6.5平方キロメートル)のWTC跡地での建設は政 治家や住民、建築士、ガードナーさんのような遺族代表らを交えた係争 などで予定より遅れはしたが、来年にはほぼ完工し、マンハッタン南部 の再生を世界に宣言することになる。

オフィススペースは順調に埋まり、もともと金融企業が多かったこ の地域にメディアやハイテク企業が進出する。住民の数も急増してい る。すでに9.11記念博物館がオープン。来年には超高層オフィスビ ル2棟と、商業施設を備えた駅ビルが完成し、10年以上も前に描かれた 新たなビジョンが現実になる。

モダン、商業的に有望

環境に配慮した持続可能な都市開発を提唱するリージョナル・プラ ン・アソシエーションのトム・ライト執行ディレクターは、マンハッタ ン南部について「モダンで商業的にも有望な地区が新たにニューヨーク で誕生するのは数十年ぶりだ」と語る。「本当に見事な街になるだろ う」と述べた。

マンハッタン南部のオフィス賃貸料は2010年の底値から30%近く跳 ね上がった。タイムやバンク・オブ・ニューヨーク・メロンなどの企業 がオフィス・商業ビル、ブルックフィールド・プレースへの移転で契約 し、空室率は低下した。

非営利団体のアライアンス・フォー・ダウンタウン・ニューヨーク によると、地域の住民の数は2013年末までの10年間で倍以上に増えた。 ラリー・シルバースタインやスティーブン・ウィトコフなどのディベロ ッパーは高級高層コンドミニアムの建設を計画しており、2017年までに 新たに2200世帯分の集合住宅が完成する見通し。

カラトラバ設計、アップルストア

5月に行われた記念博物館の開設式には遺族や消防士、警官らに加 え、オバマ大統領も参列し、犠牲者に祈りを捧げた。2つのタワーの跡 地には正方形のプールが設置され、ここで写真を撮る人も多い。

隣のブロックには地下鉄11路線を束ねる駅ビルが今年オープンす る。スペインの建築家、サンティアゴ・カラトラバが設計した駅ビルに はニュージャージー州からの電車も乗り入れる。

ショッピングモールへはアップルやデザイナーブランドのマイケ ル・コーズなどが出店契約済み、もしくは契約間近だとウォールストリ ート・ジャーナル紙が6月に報じた。

ガードナーさんは1WTCを訪れたときに、柱のひとつに亡き兄へ のメッセージを書いた。追悼とビジネスという2つの目的をようやく落 ち着いて受け入れることができるようになったと言う。

ガードナーさんの努力が報われ、地下70フィート(約21メートル) でツインタワーを支えていた箱型支柱はそのまま残された。また倒壊を 免れた「スラリー防護壁」も撤去されなかった。

ガードナーさんが住むニュージャージー州ベローナの町から、1 WTCが見えるという。「そこにあることが見て分かるのは、気持ちが 安らぐ」と語った。

原題:Lower Manhattan Revival Nears Culmination 13 Years After Attacks(抜粋)

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