ユーロキャリー拍車でドル高、新興国通貨魅力-深谷FPG証社長

欧州中央銀行(ECB)による金融 緩和を背景に、ユーロで資金調達を行い、相対的に金利が高い通貨で運 用するユーロキャリー取引の収益環境が向上している。FPG証券の深 谷幸司幸司社長は、こうした動きがドル高要因となり、新興国通貨に魅 力を与えていると指摘する。

主要中央銀行で初めて預金金利にマイナス金利を導入してからわず か3カ月。ECBはそのマイナス幅をさらに拡大する決断をした。ドラ ギ総裁は先週、資産購入を通じて、少なくとも7000億ユーロ(約95 兆3000億円)相当をユーロ圏経済に供給する方針を示唆するなど、過去 に例を見ない緩和でユーロ通貨の調達金利を下げている。

深谷氏は、資金調達通貨の下落基調がキャリー取引の収益源となる とし、「かつては円キャリー取引、ドルキャリー取引が盛んになった局 面があったが、ユーロキャリー取引が最も人気を集める下地が整った」 と指摘。「主要通貨の中ではドルが資金の行き先だろう。ユーロ圏がマ イナス金利になると、ユーロ安・ドル高のトレンドは揺るがない」と述 べた上で、高金利通貨や新興国では「ニュージーランド・ドル、豪ド ル、南アフリカ・ランドなども悪くない」と語った。

ブルームバーグのキャリートレード分析によると、過去1カ月間 で、ユーロで資金を調達して他通貨に投資した場合、44通貨のうち2通 貨を除く全てでプラスの収益率となった。

米連邦準備制度理事会(FRB)は量的緩和の縮小を進めており、 債券購入額を昨年の月850億ドルから月250億ドルまで減額。バーナンキ 前FRB議長が昨年5月、債券購入縮小に初めて言及した後、新興国の 株式・債券・為替市場は資金流出に直面した。

欧州が新興国通貨をサポート

深谷氏は、米国が量的緩和を縮小し、年初に新興国市場の通貨が荒 れたと説明。しかし、「米量的緩和縮小で新興国通貨はまずいというの が、ECBがいるから大丈夫という感じに変わっている。米国から欧州 にサポートの主役が交代している」と語った。インタビューは5日に行 った。

ECBの決定を受けて、ユーロ・ドル相場は9日に一時1ユーロ =1.2867ドルと昨年7月以来の水準までユーロ安・ドル高が進んだ。一 方、新興国通貨指数は2月に2009年4月以来の低水準を付けた後、上昇 基調となっている。

ユーロ・ドル相場について、深谷氏は「過去の欧米金利差と比べる とユーロはまだ高過ぎる。年内に1ユーロ=1.25ドル程度までユーロ 安・ドル高が進んでもおかしくない」と予想している。「欧州国債の日 本国債化が起こり得ると思う」と言い、欧州の金利低下余地や金融政策 や金利差を考慮すると、高金利・新興国通貨、ドル、円、ユーロの順に 買われやすいと言う。

すでに量的緩和的

ECBの金融緩和策に関しては、「すでに量的緩和的な感じ。少し 間を開けながら、効果がなければまだやるのかなと思う。方向は確実に 緩和方向でアクセルを踏んでいるのは間違いない」と解説した。

ドル・円相場について、深谷氏は米国が来年半ばに利上げを行うと の見方を背景に、年末に1ドル=107円程度と予想する。「米国債の方 が円債よりも金利が高く、ファンダメンタルズも良く、通貨リスクが小 さい。相対的に金利が高いドル資産に流れやすい」とみる。円は9日、 一時1ドル=106円34銭と、2008年10月以来の水準まで下落した。

ブルームバーグ予測調査(中央値)によると、年末にユーロ・ドル は1.30ドル程度、ドル・円は1ドル=105円程度が見込まれている。米 フェデラルファンド(FF)金利先物市場によると、FRBが来年6月 末までにFF金利誘導目標を引き上げる確率は約46%。景気を刺激する ため、2008年12月以降、0-0.25%程度を維持している。

主要国の長期金利は足元で米国が2.49%、日本は0.535%、ドイツ は0.95%。米国とドイツの金利差は1999年6月以来で最大に拡大してい る。ブルームバーグデータによれば、ドイツ、オーストリア、その他の 欧州数カ国で2年債利回りがマイナス金利となっている。一方、日本国 債の2年債利回りは0.07%程度だ。

日銀は年内緩和なし

日本銀行の金融政策に関しては、「年内に追加緩和はやらないと思 う」と述べた。市場で追加緩和期待を残しつつ、政府は消費税率を計画 通りに8%から10%へ引き上げるとしている。

深谷氏は1984年東京大学法学部卒業、三菱銀行(現三菱東京UFJ 銀行)入行。95年チーフ為替アナリスト、2004年チーフエコノミストに 就任。ドイツ証券、クレディ・スイス証券を経て、12年にオフィス FUKAYAを立ち上げた。13年にFPG証の代表取締役社長に就任し た。

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