伊藤元重東大教授:消費再増税を前提に今年度補正を

4月の消費増税後の景気回復が遅れ る中、経済財政諮問会議の民間議員を務める伊藤元重東大大学院教授 は、来年10月に予定されている消費税率再引き上げによる景気マインド への悪影響を避けるため、今年度補正予算で景気を下支えする必要性が あるとの見方を示した。

伊藤氏は景気の現状を定期的に点検する政府の専門調査組織「政策 コメンテーター委員会」の会長も兼務。清家篤慶応義塾長や三井住友銀 の国部毅頭取ら12人から構成され、経営者や学識経験者など49人の政策 コメンテーターの声を反映し、消費再増税の判断にも影響を与える。

伊藤氏は8日のブルームバーグ・ニュースとのインタビューで「基 本は消費税を予定通り10%に上げることを考え、経済に著しい悪影響を 及ぼさないよう景気対策をどうやって打つかが鍵になる。短期的に歳出 を増やすことはある意味当然のことだ」と語った。

その理由について「消費増税で経済が悪化するという心理効果が出 るといけない。補正を打つなら年末だ。補正をやるというメッセージが 重要だ」と指摘。一方で、「来年10月の消費増税前には駆け込みがあ る。来夏以降は何もしなくても需要が増える」と予想した。

安倍晋三首相は7-9月期の国内総生産(GDP)の結果などを踏 まえ、年末にも消費税の再増税を決断する。8日発表の4-6月期 GDP改定値は前期比1.8%減(年率7.1%減)と速報値から下方修正さ れ、リーマンショック以来の落ち込みとなった。伊藤氏は「夏の気候の 影響も含め、当初予定していたより当面の動きは思った程良くなかった ことは事実だ。それだけ年末の判断は難しいと思う」と語った。

消費税上げないなら法人税下げ困難

来年度から数年間で20%台に引き下げる方針の法人実効税率の引き 下げ幅については「かなり高度な政治決断だ。景気対策にもなるため、 消費税の引き上げと連動する。今の段階では予断はない」と述べた。そ の上で、「仮に消費税を上げないという決断になれば、当然、法人税を 下げるのは難しい」との見通しを示した。

一方で、金融政策については黒田東彦日銀総裁が「物価の2%目標 の達成が難しい時には追加の金融政策を果敢にやると言っている」とし た上で、「物価の動きは日銀が想定した方向できている。今の段階で急 いで追加金融対策をする状況にはない」と語った。

SMBC日興証券の牧野潤一チーフエコノミストはGDP統計発表 後のリポートで「4-6月期の落ち込みが大きく、7-9月期の回復が 弱ければ、日銀の物価2%目標の達成時期が遠のき、政府の消費増税判 断も危うくなる」とし、「日銀の追加金融緩和、政府の追加財政出動へ の期待が一段と高まる公算が大きい」との見方を示している。

伊藤氏は今月中に初会合を開く政策コメンテーター委員会につい て、「諮問会議の民間議員の機能強化という意味で非常に大事だ」と説 明。その上で「これが消費増税の判断のための情報収集にどうつながる かは甘利明再生相がお考えになる。まだ白紙の段階だ」と述べた。

政府が掲げる来年度の基礎的財政収支の赤字半減目標の達成は消費 再増税が前提となっている。伊藤氏は「消費税10%が実現すれば目標の 達成は多分、大丈夫だろう」との見方を示す一方で、先送りとなれば 「15年度の財政健全化目標をずらす以上に重い決断だ」と指摘した。

黒田日銀総裁は4日の定例会見で、「増税を行った場合のリスクに は対応できるが、行わなかった場合は対応しがたい」と述べ、増税を先 送りした場合のリスクは大きいとけん制。一方で、麻生太郎財務相は5 日の閣議後会見で、消費増税による景気の腰折れを前もって回避するた め「補正予算も一つの方法だ」と語った

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