【クレジット市場】「改造アベンジャーズ内閣」、国債不安撃退へ期待

日本の財政に対する懸念を映す国債 保証コストが約6年ぶりの水準に低下している。安倍晋三首相の内閣改 造と自民党役員人事を受け、内閣支持率が上昇。市場では経済活性化と 消費税率の追加引き上げを期待する声が出ている。

CMAによると、日本国債を5年間保証するドル建てのクレジット ・デフォルト・スワップ(CDS)の保証料率は5日、33ベーシスポイ ント(bp、1bp=0.01%)と2008年10月以来の水準に低下。第2次 安倍内閣が発足した12年12月以降の低下幅は48bp、データでさかのぼ れる04年以降の歴代政権で最も大きい。読売新聞や共同通信などの世論 調査では、内閣改造後の安倍内閣の支持率は軒並み上昇した。

TOPIXは同期間の上昇率が、少なくともバブル末期の海部俊樹 内閣以降で最も高く、円相場は先週、対ドルで約6年ぶりの安値を付け た。第2次安倍内閣は短命に終わった第1次内閣の雪辱を果たし、経済 活性化や少子高齢化対策、財政健全化などの難問に取り組む使命がある 、とSMBC日興証券は指摘。世界危機を救うヒーローらの最強チーム 「アベンジャーズ」が活躍する米映画になぞらえ「改造アベンジャーズ 内閣」と名付けている。

SMBC日興証の末沢豪謙金融財政アナリストは「日本経済はデフ レ脱却の方向にはあるが、アベノミクスの成果なのか、少子高齢化を背 景としたスタグフレーションの兆しなのか微妙だ」と分析。生産力の低 下が貿易赤字、円安、原材料高につながれば「国民生活は窮乏してしま う。日本の稼ぐ力を高める必要がある。人口問題は抜本的に異次元の政 策を打たないと打開できない」とみている。

安倍首相は「キャプテン・日本」

「アベンジャーズ」は1960年代に始まった米国の同名の漫画を基に した映画。第2次安倍内閣が発足した12年に米ウォルト・ディズニーが 映画を配給した。安倍首相が自民党総裁選で再選を目指す来年には次回 作が公開される予定だ。

安倍首相は内閣改造で閣僚18人中12人を入れ替え、麻生太郎副総理 兼財務相や甘利明経済再生担当相、菅義偉官房長官らを留任させた。末 沢氏は映画のリーダー格「キャプテン・アメリカ」に当たる人物を安倍 首相、実力者「マイティ・ソー」を麻生財務相、創業者の1人「アイア ンマン」を甘利再生相、苦労人の「超人ハルク」を菅官房長官に例え る。塩崎恭久厚生労働相は「ウィンター・ソルジャー」としている。

読売新聞は5日付の朝刊で、安倍内閣の支持率が改造後の世論調査 で64%に上昇したと報じた。第2次内閣発足後の最高は昨年4月の74% で、最低は7月の48%。前月調査からの改善幅は13ポイントと、改造直 後としては過去最大だという。日本経済新聞社とテレビ東京の調査では 、前回より11ポイント高い60%。共同通信は4日、54.9%と5.1ポイン ト上昇したと報じた。毎日新聞によると、内閣支持率は47%で横ばいだ ったが、不支持率は2ポイント減った。

塩崎厚労相、株式市場は好感

年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の運用見直しとガバ ナンス(組織統治)改革を自民党側で推進してきた塩崎元官房長官が厚 労相に就任するとの報道は先週、株式市場で好感された。

塩崎氏が厚労相に正式就任した3日には、TOPIXが1月の年初 来高値に一時迫った。円の対ドル相場は5日に08年10月以来の安値を記 録し、長期金利は0.54%と7月以来の高水準を付けた。

GPIFは将来的な金利上昇で評価損を被る恐れのある国内債を減 らす一方、日本株や外貨建て資産などを増やす、資産構成の見直しを検 討中だ。GPIF運用委員会の米沢康博委員長は7月のインタビューで 、新たな資産構成は未定だが、国内債が「30-50%という水準には違和 感はない」と発言。結果は「秋までに公表できる見通しだ」と話した。

「Plan-Do-See」

GPIFが基本ポートフォリオで定める資産構成の目標値は、国内 債60%、国内株12%、外国債券11%、外国株式12%、短期資産5%だ。 ブルームバーグ・ニュースが5月に実施した市場予想調査(中央値)に よると、国内債の目標値は40%に減少する一方、国内株は20%、外債は 14%、外株は17%にそれぞれ増加すると見込まれている。6月末の実勢 から、国内債はさらに約17兆円減り、国内株は約3.5兆円、外貨建て資 産は約5兆円増えることになる。

パインブリッジ・インベストメンツの松川忠債券運用部長は、安倍 内閣は「少子高齢化の中で構造改革に取り組み、経済を活性化させなく てはならない」と指摘。「もはや『Plan(計画)-Do(実行)-See(評 価)』の『Do』の段階だ。『See』の国政選挙まで時間があるので、支 持率の短期的な上下に左右されず、強い経済を築く政策を着実に進めて いくべきだ」と語る。「口約束に終われば、海外投資家も飽きてしまう 恐れがある」とみている。

日本国債のCDSの保証料率が約6年ぶりの水準に低下した先週、 財政再建を重視する谷垣禎一氏は自民党幹事長に就任した。谷垣氏は自 民党総裁だった12年8月、野田佳彦内閣(当時)の与党・民主党と公明 党との3党合意をまとめ、消費税率を5%から2段階で10%に引き上げ る内容を含む社会保障・税の一体改革関連法案を成立させた。

黒田総裁も警告

国債・借入金・国庫短期証券(TB)を合わせた国の債務残高は6 月末に1039.4兆円と過去最大を記録。1年間で30.8兆円増えた。国際通 貨基金(IMF)は日本の政府債務残高が今年末に国内総生産(GDP )の243.5%と米国の105.7%を大きく上回り、16年には246.7%に達す ると予測している。しかし、長期金利は足元で0.5%台前半と、スイス に次ぎ世界2番目の低い水準となっている。

野田前首相は6月のインタビューで、来年10月の再増税を避けた場 合、市場からの信認を損なう恐れがあると指摘。国債利回りの低位安定 は財政健全化への取り組みが前提になっていると述べた。

日本銀行の黒田東彦総裁は4日の記者会見で、財政健全化は日本経 済にとって「極めて重要だ」と指摘。消費増税第2弾を見送った場合、 仮に財政健全化路線に市場が疑念を抱くと、政府・日銀が対処できない 「甚大な」悪影響が生じる恐れがあると語った。増税で景気が落ち込ん でも財政・金融政策で対応できると言う。

第一生命経済研究所の熊野英生首席エコノミストは、消費増税第2 弾は「来年10月に予定通り実施するのが基本路線だろう」とみる。4月 の第1弾実施後の経済指標はもたついているが「谷垣氏が幹事長に就き 、盛り返した感じで信任が高まっている」と指摘。パインブリッジの松 川氏も、消費増税とCDS保証料率の関係を「一部の市場関係者は非常 に気にしている。第2弾は既定路線との見方が多い」と話す。

世論調査では消費増税第2弾への反対論が優勢だ。読売新聞は5日 、賛成は25%にとどまり、反対が72%を占めたと報じた。日本経済新聞 社とテレビ東京の調査でも、賛成は29%で反対は64%だった。麻生財務 相は5日、来年10月の再増税を控え、経済対策として補正予算の編成も 一案だと発言。甘利再生相は7日のテレビ番組で、内閣としては「完全 に中立」で、先入観を持たずに経済指標を注視していくと述べた

総務省によれば、日本の総人口は8月1日現在の概算値で1億2713 万人と、1年間で21万人減った。3月1日現在の確定値では、64歳以下 の人口が前の年に比べ129万3000人減った半面、65歳以上は109万3000人 増えた。今年度一般会計予算の歳出では、年金や医療費などといった社 会保障関係費が初めて30兆円を突破し、総額の31.8%を占めた。

財務省が1月公表した試算によると、消費税率を来年10月に予定通 り10%まで引き上げ、平均3%の名目成長と歳出の効率化が実現できて も、予算総額から国債費を除いた基礎的財政収支(プライマリーバラン ス)は20年度にGDPの1.1%に相当する6.6兆円の赤字。国際公約でも ある20年度のプライマリーバランスの黒字化には、さらなる対策が必要 な情勢だ。

第一生命研の熊野氏は、安倍改造内閣は「やるしかない内閣」だと みる。「成長戦略は効果が表れるまで時間がかかるうえ、抵抗勢力も立 ちはだかるが、やらないと将来困る」と指摘。安倍首相の政治家として の目標は分からないが「経済中心にやらないと、また支持率が低下する 恐れがあるため、経済中心にせざるを得ない」と述べた。

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