GPIF改革の旗手、塩崎氏が厚労相-市場に安心感との声

年金積立金管理運用独立行政法人( GPIF)改革を自民党で提唱してきた塩崎恭久元官房長官が、安倍晋 三内閣の厚生労働相に就任した。市場関係者からは、GPIF改革に弾 みがつくとの見方から、安心感が出ているとの声が聞かれた。

安倍首相は3日、2012年12月の第2次内閣発足以来、初となる改造 人事を断行。党政調会長代理と日本経済再生本部の本部長代行を務めて きたGPIF改革推進派の塩崎氏(63)を田村憲久厚労相の後任に起用 した。厚労相はGPIFの所管大臣だ。塩崎氏は日本銀行出身。経済・ 金融問題に強いとされ、06年9月から07年8月の第1次安倍内閣では官 房長官を務めた。

塩崎氏は同日夜、厚生労働省内での記者会見で、「GPIF改革は 安全で効率的な運用をどこまで、やるのかだ。リスク低減には分散投資 が必要だ」と指摘。また、「しっかりした運用には強固なガバナンス( 組織統治)が必要だ」と述べた上で、ガバナンス改革と運用改革を同時 に進める考えを示した。「実際には原則を踏まえ、これまでに積み上げ てきたことを田村前大臣から聞いて、どうするか考えたい。株価を見な がらやっているわけではない」と話した。

第2次安倍内閣で塩崎氏は、GPIFなどの運用見直しとガバナン ス改革を訴えた政府の有識者会議(座長:伊藤隆敏教授)を党側で支え た。組織改革に向けた議員立法にも動き、企業の収益率を重視した新株 価指数JPX日経400の開発にも貢献。先月にはブルームバーグ主催の セミナーで講演し、GPIFによるリスク資産への投資拡大には法改正 を伴う抜本的なガバナンス改革が不可欠だと主張した。

野村証券の田村浩道チーフストラテジストは、塩崎氏について「G PIF改革の急先鋒だ。投資家は改革を引っ張っていくイメージを持っ ている」と指摘。GPIFが検討中の新たな資産構成が国内債4割・日 本株2割という市場予想から大きく外れる懸念が後退するため「市場に は安心感が生まれ、株価の下支え要因になる」と語った。

株高・円安・債券安

「塩崎厚労相」の可能性を共同通信が報じた2日以降、東京市場は 株高・円安・債券安(金利は上昇)に振れている。3日にはTOPIX が1月の年初来高値に迫る場面があった。円の対ドル相場も一時1ドル =105円31銭と1月以来の水準に下落した。長期金利は一時0.535%に上 昇した。

GPIFは将来的な金利上昇で評価損を被る恐れのある国内債を減 らし、日本株式や外貨建て資産などを増やす方向で資産構成の見直しを 検討中だ。米沢康博運用委員長は7月のインタビューで、新たな資産構 成は未定だが、国内債が「30-50%という水準には違和感はない」と発 言。見直し結果は「秋までに公表できる見通しだ」と話した。

現在の基本ポートフォリオで定める資産構成の目標値は国内債が60 %、国内株が12%、外国債券が11%、外国株式が12%、短期資産が5% だ。ブルームバーグ・ニュースが5月に実施した市場関係者の予想(中 央値)では、GPIFが国内債の目標値を40%に下げる一方、国内株は 20%、外債は14%、外株は17%に増やすとみられていた。これらは、6 月末の実勢から国内債をさらに約17兆円減らし、日本株は約3.5兆円増 やした水準に当たる。

改革推進のメッセージ

GPIFの4-6月期の運用状況によると、国内債の運用額は6月 末に67.9兆円と12年末以来の水準に減少した。運用資産に占める構成比 は53.36%と比較可能な01年末以降で最低。最も高かった08年12月末の

75.90%から22ポイント超も下げた。短期資産を5%と仮定した場合の 国内債の構成比は51.91%。四半期末では初めて許容幅の下限を下回っ た。

塩崎氏は先月のセミナーで講演した際に、GPIFの「運用を大転 換するなら、そのリスクを管理してできる限り安全にリターンを上げて いく強固なガバナンスの仕組みを法律に書き込む」のが筋だと指摘。秋 の臨時国会では必要な法改正に取り組まなくてはならないと語った。

長期的で専門的な判断が求められるGPIFの投資判断には、理事 長の独任制ではなく、専門知識が豊富な複数の常勤理事による合議制が 必要だ、と塩崎氏は述べ、法改正では「透明性や説明責任、独立性、自 主性」などを確保すべきだとした。GPIFのガバナンス改革には「厚 生労働省からの独立」の意味合いもあるため、社会保障審議会に任せ切 りにせず、「内閣官房が音頭を取るべきだ」とも話した。

塩崎氏は、安倍内閣がGPIFの資産構成見直しを株価支援策に利 用しているとの見方を否定し、ガバナンス改革を実現した後なら、株式 の直接投資や有望なベンチャー企業への投資もあり得るとの考えを示し た。

政府は6月24日、日本再興戦略の改定版を閣議決定。GPIFの資 産構成については、年金財政検証の結果を踏まえ、長期的な健全性を確 保するために適切な見直しをできるだけ速やかに実施すると明記した。 ガバナンス体制強化に関しても、運用委員会の体制整備や専門家の確保 などに加え、法改正の必要性も含めた検討を行うとした。

塩崎氏は3日午後、記者団に対して、GPIFの改革に関しては、 「分散投資することが大事で、ガバナンス改革にも努めていきたい」と 述べ、「できるだけ早くきちんとしたものを示めせるように努める」と 語った。

大阪大学の八田逹夫名誉教授は、塩崎氏について「改革マインドを 持っていて、とても期待できる。大局観もある」と評価。厚労相への起 用は「改革を推進していくという安倍首相の強いメッセージだ」との見 方を示した。

--取材協力:高橋舞子、北中杏奈

--取材協力:高橋舞子、北中杏奈.

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