東北電:石炭のデリバティブ取引導入へ-電力市場の自由化見据え

東北電力は現在最も依存する発電燃 料石炭の金融派生商品(デリバティブ)取引を今年度中にも始め る。2016年に予定される電力小売り市場の自由化を見据え、価格の変動 リスク抑制を狙う。

東北電企画部の土方薫副部長はブルームバーグ・ニュースとのイン タビューで、同社の電源構成比で最大の4割超を占める石炭のスワップ 取引の開始を検討していることを明らかにした。具体的には、石炭の電 子取引市場を運営するグローバルコールが提供する豪州産石炭の指標価 格を対象にした、差金決済型の取引。変動する指標価格の月間平均値な どを固定価格で売買することで、変動価格を固定化することができる。

土方氏は01年に破たんした米総合エネルギー取引会社エンロンや住 友商事、日立製作所、国内外の金融機関などでデリバティブの商品設計 や販売を手掛けており、今年4月に東北電に入社した。

同社の電源構成比で4分の1を占めた原子力発電が東日本大震災で 停止し、代替の火力燃料費が倍増。自由化が進めば販売価格が電力の需 給に影響を受けるようになるほか、総括原価方式が撤廃されることで電 力会社は現在のようにコストを電力料金に転嫁して安定的に収益を確保 することが難しくなるため、燃料の価格変動対策の強化は電力会社に共 通する課題だ。

土方氏は、電力会社の収益は総括原価方式に守られてきたものの、 「自由化の領域が多くなったので、総括原価主義の部分も少なくなって きている」と指摘。しかし、電力小売りの完全自由化や発送電分離など 電力システム改革の進展次第では「マーケットリスクにさらされている エクスポージャーが増えてくる」とし、リスクの管理体制を強化したい 考えを示した。

多様なヘッジ手段

土方氏は金利や為替の市場と比べ、「電力のアセットマネージメン トで一番面白いのはヘッジ手段が多様にあることだ」という。電力価格 の変動リスクを抑制するためには、電力取引市場のみならず、燃料や天 候のデリバティブ取引でも可能だとし、多様なヘッジ手段の中で「安く て効率的なものをやればいい」と話した。

すでに東北電は全電源に占める割合が8%の原油や同34%の液化天 然ガス(LNG)の調達でも、燃料費調整制度で考慮されないスポット 取引分について、財務省が発表する原油輸入価格(JCC=ジャパン・ クルード・カクテル)を対象にしたスワップ取引を行い、価格変動のリ スクをヘッジしている。

05年に電力市場が部分的に自由化された際に導入された日本卸電力 取引所での現物取引に加え、新たに東京商品取引所で上場が予定されて いるLNG先物、今後上場が検討される電力先物なども活用する考えだ という。さらに、東商取などが設立した店頭市場取引の運営会社ジャパ ンOTCエクスチェンジが開始を予定しているノンデリバラブル・フォ ワード(NDF)と呼ばれるLNGの先渡し取引への参加にも関心を示 した。

石炭のトレーディング事業

発電用石炭調達量で国内3位の東北電を上回る電源開発(Jパワ ー)と中部電力は、先行して石炭のスワップ取引を実施。価格ヘッジを 目的としたデリバティブ取引だけでなく、Jパワーは04年度、購入した 石炭を第三者に販売するトレーディング事業を開始。中部電の子会社は 仏電力会社の燃料調達部門EDFトレーディング社と共同で燃料取引会 社を設立し、デリバティブ取引やトレーディング事業を行っている。

東京電力も年度内に燃料トレーディング会社の立ち上げを目指して いるように、土方氏は「どこの会社もやるようになる」と見る。自由化 によって電力需要が変動し、すでに購入した石炭やガスの過不足が起こ る事態も想定でき、東北電でも「将来的にはトレードするというファン クションも考えなければいけない」との見解を示した。

石炭の価格は下落傾向。3日のインターコンチネンタル取引所の豪 ニューキャッスル石炭先物の価格は1トン当たり67.05ドル。年初か ら23%下落した。

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