不動産投資が一段と活性化、雅叙園も取引成立-「割安」と外資参入

アベノミクス効果で昨年来、動き始 めた商業用不動産取引は今年、一段と活況を呈している。収益源のオフ ィス賃料が上昇基調に転じてきたことが背景にあり、目黒雅叙園など大 型案件も動き出した。国際的には日本の不動産は依然割安感があり、外 国人投資家も活況を支えている。

ドイツ証券はリポートで、6月までの1年間の東京の収益不動産売 買高は約4兆6000億円と、前年比約3割増と分析。また、日本不動産研 究所が不動産関連企業や金融機関を対象に行った不動産投資家調査によ ると、今後1年間に「積極的に投資する」との回答は92%と、07年10月 以来の最高となった。

昨年4月の日銀の異次元金融緩和を受け、大量のマネーがJリート 市場を通じて、オフィスビルなどの投資に向かった。企業のオフィス需 要も動き出し、回復が遅れていた賃料も今年に入り7カ月連続で上昇 (三鬼商事調べ)。3大都市圏の商業地は今年、6年ぶりに上昇した が、英米など海外主要都市の不動産に比べて割安感が残っている。

ドイツ証券の不動産投資銀行部の小夫孝一郎ディレクターは、不動 産取引活性化の背景には賃料の上昇や金融機関の活発な融資、Jリート などの買い意欲の高さがあると指摘。「東京のオフィス投資は今後1- 2年は活況が続く」と述べた。

雅叙園

リーマンショック以降の不動産不況で取引が滞っていた大型案件 も、市況の回復に伴いようやく動き出しつつある。森トラストは結婚式 場とオフィスビルからなる複合施設、目黒雅叙園を米投資ファンドのロ ーンスターから取得した。関係者によると取得価格は約1300億円。過去 4回行われた入札は不調だった。

農中信託銀行シニアファンドマネジャーの新海秀之氏は、「将来の 賃料上昇が描ける市場環境下になりつつあることで、今後は大型の取引 が活発化する可能性がある」との見方を示した。

昨年9月に東京五輪開催が決まったことで、大型再開発も動き出 す。三井不動産は5月に3240億円規模の増資計画を発表し、三菱地所は 1兆円規模の投資を表明。森ビルは6月開業の虎ノ門ヒルズを中核施設 として、10年で事業規模1兆円の再開発に乗り出す。

東証REIT指数は上昇基調にあり、2日には一時、昨年4月以来 の高値(1650.19)を付けた。

外国人投資家

世界的な金融緩和で投資マネーがあふれる中、グローバルに投資機 会を探る外国人投資家も東京の不動産市場に注目している。米不動産運 用会社アンジェロ・ゴードン・インターナショナルのマネジングディレ クター、ジョン・田中氏は「ニューヨーク、ロンドンのオフィスビルの 不動産価値は07年ごろの水準に戻ったが、東京はまだ07年を30-40%下 回っている」と指摘。日本は「魅力的な市場だ」と話す。

米資産運用会社のインベスコは6月、Jリート市場でインベスコ・ オフィス・ジェイリート投資法人を上場し、運用対象として恵比寿プラ イムスクエアなどビル4件を総額約630億円で取得。米不動産投資顧問 のラサールインベストメントマネージメントのファンドは、川崎市の物 流施設3棟や大阪の15階建て単身者向け賃貸住宅を取得した。

不動産サービスのシービーアールイーの大久保寛エグゼクティブデ ィレクターが、景気回復で「オフィスの新設・拡張など前向きな動きが 増加傾向にある」と話すように、今年は三菱UFJモルガン・スタンレ ー証券移転などテナント企業の動きも活発だ。ビルの稼働率向上で価格 は押し上げられ、期待利回り(キャップレート)は低下している。

利回り低下

アイビー総研の調査によると、都心5区のオフィスビルの同レート は今年4.4%と08年と同水準まで下がっており、リサーチ担当の藤浪容 子氏は「ほぼ下限に近い」との見方を示した。

もっとも不動産の相対的な投資妙味は現在の方が大きい。国債利回 りは08年当時に最大で1.9%弱だったのに対し、現在は0.5%程度にとど まっているからだ。国際的にも東京オフィスビルのキャップレートと国 債利回りの格差は約4.2%と、ニューヨークやロンドンの2%程度(ド イツ証調べ)を上回り、利回り低下(価格上昇)余地はあるという。

三菱地所の山岸正紀・広報部長は7月31日の決算会見で、不動産投 資市況について、リーマンショック前の07年のように「過度に過熱して いるというのではなくて、堅調な買い手が順調に買っている状態」と指 摘。「今ピークアウトするというのではなくて、しばらくはこの状況が 続くだろう」との見方を示した。

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